2019/02/03
トリニダード・トバゴ出身のトランペッター エティエンヌ・チャールスの『Creole Soul』を聴こう♪
トリニダード・トバゴ出身のトランぺッター、エティエンヌ・チャールスの『Creole Soul』をご紹介します。
南国の国から登場した期待の若手トランぺッター!
今回ご紹介するトランぺッターのエティエンヌ・チャールスは、1983年生まれで今年36歳になるまだ若手のジャズ・トランぺッターです。
出身地はアメリカではなく、南米の小さな島国トリニダード・トバゴ出身です。
トリニダード・トバゴは、ベネズエラの北東の辺りカリブ海小アンティル諸島南部に位置する島国です。
ラテン音楽好きには、打楽器の「スチールパン」で有名な国ですね。
またリオやベネチアと並ぶ世界3大カーニバルの1つでもある「トリニダード・トバゴのカーニバル」でも有名な地です。
こういったお国柄を知るだけでも、とても陽気な音楽をイメージしますね♪
さて、そんな陽気な南米の国出身のエティエンヌ・チャールスは、ロイ・ハーグローヴのようなオシャレなジャズを演奏します。
曲のアレンジこそ南米の陽気なサウンドがミックスされていますが、トランペットのソロはわりとオーソドックスなジャズ・スタイルです。
でも、だからこそ僕のようなジャズ好きの耳にも聴きやすい作品となっています♪
これが、あまりにもラテン音楽寄りになってくると、それはもはや「ジャズ」ではなくなってきますからね。
あくまでも「ジャズ」の作品として聴きたいものです。
今回ご紹介するエティエンヌ・チャールスの作品『Creole Soul』は、2013年にリリースされた3作目のリーダー作になります。
収録されている楽曲も多少のラテン風味は感じるものの、ロイ・ハーグローヴの作品のような「現代風のジャズ」作品です。
なので、ラテン音楽好きというより「ちょっとラテン風味の現代風ジャズ」がお好きな方におすすめです。
「ジャズ」作品として聴いてください♪
Etienne Charles – 『Creole Soul』
01.Creole (Intro)
02.Creole
03.The Folks
04.You Don’t Love Me
05.Roots
06.Memories
07.Green Chimneys
08.Turn Your Lights Down Low
09.Midnight
10.Close Your Eyes
11.Doin’ The Thing
Personnel:
Etienne Charles – Trumpet, Flugelhorn, Percussion
Brian Hogans – Alto Saxophone
Jacques Schwarz-Bart – Tenor Saxophone
Kris Bowers – Piano, Electric Piano
Ben Williams – Bass
Obed Calvaire – Drums
Erol Josué – Vocals – on Tracks: 01, 02
Alex Wintz – Guitar on Tracks: 02, 05, 06
D’Achee – Percussion, Vocals on Tracks: 02, 03, 05, 07,11
Daniel Sadownick – Percussion, Vocals on Ttracks: 05
Released: 23 July 2013.
アルバムの内容
1曲目の”Creole (Intro)”は、祈りを捧げるようなエロール・ジョスエのボーカルのみで始まる19秒程度のイントロです。
そのまま2曲目”Creole”に繋がります。
2曲目に移るとアレックス・ウィンツのパームミュートを活かしたグルーヴィーなギターのリフが始まります。
まるでジェームス・ブラウンの曲のようなギターリフですが、エロール・ジョスエのボーカルが少し重なりピアノやドラムのリズムが加わると、ファンクではなくラテン・ミュージック風になります。
徐々にエティエンヌのトランペットが入ってきて、ソロを吹き始めます。
どことなく出だしのフレーズが、クリスチャン・スコットぽかったりもします。
テクニックは申し分ないです!
ちなみに本作に参加しているベーシストのベン・ウィリアムスは、当時のクリスチャン・スコットのバンドでもベースを担当していました。
ある程度トランペットのソロが終わると、テナーとアルトの2管サックスが参加してオブリガードを吹きます。
その後、アルトサックス→ピアノ→ギターのソロ回しが始まります。
ギターソロは、まるでカート・ローゼンウィンケルのような歪み系エフェクターに空間系エフェクターを混ぜ合わせたスペーシーなサウンドで、アウトフレーズ混じりで弾いています。
その後、まるでジョン・コルトレーンの”Kulu Sé Mama”のように再びエロール・ジョスエのボーカルが入ってきます。
最後はテーマに戻って曲が終わります。
冒頭の曲からさっそく熱い演奏が聴けます♪
ちなみにここでいう”creole(クレオール)“とは、「(西インド諸島およびスペイン語圏アメリカ生まれのヨーロッパ人の子孫で中南米の)クレオール人」の意味です。
また冒頭でエロール・ジョスエが歌っている言語は”kweyol”=”Haitian Creole”というハイチ語のことです。
エティエンヌ・チャールスが自身のルーツを曲に込めたのでしょう。
次の3曲目”The Folks”は、ゆったりとしたテンポの楽曲です。
トランペットとテナーサックスがユニゾンで吹くテーマの後は、エレピ→テナーサックス→トランペットの順番でソロ回しがあります。
エティエンヌは、細かいスタッカートのフレーズを紡ぎ合わせてアドリヴソロを構築しています。
4曲目”You Don’t Love Me (No No No)”は、レゲェ・ミュージシャンのドーン・ペンのラブ・ソングのカヴァーです。
原曲のレゲェ・バージョンとは違ったジャズ・アレンジで演奏しています。
歌メロの部分は、リーダーのエティエンヌがトランペットで演奏します。
ソロの順番も、トランペット→ウッドベース→アルトサックスと続き、最後は歌メロ部分をホーン隊が吹く中、ピアノがバックでジャムっている感じで終わります。
5曲目”Roots”は、エティエンヌのルーツであるカリブ海の島「マルティニーク島」のエキゾチックなリズムとジャズを混ぜた楽曲です。
アレックス・ウィンツの気まぐれなギターがアクセントになった楽曲です。
曲の終盤には民族的なチャントも登場します。
テーマの後は、アルトサックス→トランペット→打楽器とチャントのブレイク→ギターの順番にソロ回しが行われます。
6曲目”Memories”は、美しいピアノのイントロで始まるバラード曲です。
まるでマイルス・デイヴィスになったかのような優しい音色でエティエンヌ・チャールスがトランペットを奏でます。
トランペット以外は、ピアノとギターとベースとドラムという編成で他の管楽器が入っていない分、エティエンヌのトランペットの音に集中して聴くことが出来ます。
ギターも派手にリフを奏でるのではなく、バックのピアノよりも小さいぐらいの音で静かに弾いているのみです。
本作でも屈指の美しいメロディーを持つ曲です!
7曲目”Green Chimneys”は、ジャズ・ピアニストの奇才セロニアス・モンクが書いた曲です。
1968年の『Underground』の6曲目に収録されていたスタッカート気味のテーマが印象的なかっこいい曲です。
原曲ではサックス奏者のチャーリー・ラウズがテーマを吹いていましたが、本作ではトランペットとテナーサックスがユニゾンでテーマを吹いています。
ソロの順番は、トランペット→テナーサックス→ピアノの順番です。
ピアノの後にウッドベースのソロも入れてみたら良かったのでは?…と少し思ってしまいます。
最近のジャズ・アルバムは、あまりウッド・ベースソロがないような気がしますよね⁉
って、でもポール・チェンバースみたいに「ギコギコギコギコ」とアルコ奏法で毎回同じようなソロを長々と弾かれても困るんですけどもね…。
でも、ちゃんとピチカート奏法でメロディアスなソロならぜひウッドベースにも弾いて欲しいところです。
8曲目”Turn Your Lights Down Low”は、ボブ・マーリーの有名曲のカヴァーです。
もちろん僕もボブ・マーリーは大好きなので、本作を購入する際にまずはこの”Turn Your Lights Down Low”が気になりました!
“You Don’t Love Me (No No No)”といい、やはりトリニダード・トバゴ出身のエティエンヌ・チャールスはレゲェの曲を取り上げています。
レゲエの地ジャマイカとトリニダード・トバゴが地理的にも近いですからね。
ただアレンジの方は、完全なるレゲエではなくって「レゲェ風味のジャズ・アレンジ」で演奏しています。
曲のテーマだけを使っている感じですね。
ボブ・マーリーの歌メロ部分をトランペットで吹いています。
9曲目”Midnight”は、まるでロイ・ハーグローヴが演奏しそうなオシャレな「現代風ジャズ」の楽曲です。
僕もビ・バップ時代やハード・バップ時代の1950年代のジャズを好んで聴くのですが、テーマメロディーのクールさで比べるなら「現代風ジャズ」の方がオシャレにはなっています。
ただ、あの時代のジャズのテーマ程、強烈に印象に残る曲調は少なくなっているのかな?…という気がします。
すごくクールなのですが、印象は薄いのが「現代風ジャズ」だとも思います。
「オシャレだなぁ~」と思いつつも普段は忘れてしまいます。
逆に古き良き時代のジャズなんかは、正直「ダッサいなぁ~…」と思うようなテーマメロディーも多くありますが、普段何気ない時にパッと頭の中で思い浮かぶような印象的なメロディーでもあります。
そういった意味でもこの”Midnight”のオシャレなテーマよりも、セロニアス・モンクのカヴァーだった”Green Chimneys”の方がより耳に残ります。
……いや、”Green Chimneys”は「ダサ」いって意味ではないですよ!
セロニアス・モンクの書く曲は、強烈に印象に残る名曲が多いってことです。
10曲目”Close Your Eyes”は、ピアノのコンピングだけをバックにトランペットがメロディーを奏でるバラード演奏です。
しっとりと美しい曲の次は最後の収録曲11曲目の”Doin’ the Thing”です。
本作のフィナーレを飾るに相応しい、小粋なジャズ作品です。
楽し気なテーマの後は、テナーサックス→トランペット→アルトサックス→ピアノ→ウッドベースとソロが続きます。
短いながらもついにウッドベースのソロが聴けました!
最後は全楽器が揃って小粋なテーマを演奏して終わります。
以上、【トリニダード・トバゴ出身のトランペッター エティエンヌ・チャールスの『Creole Soul』】のご紹介でした。
収録曲のクォリティーの高さだけでなく、手元に置いておきたくなるオシャレなデザインのジャケットも最高です♪
ロイ・ハーグローヴがお好きな方にもおすすめです♪
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