
2019/11/06
ソウライヴ異色のボーカル作品『No Place Like Soul』もやはりインスト曲が一番の出来⁉
ソウライヴが2007年にリリースした異色のボーカル作品『No Place Like Soul』をご紹介します。
このブログでは、僕の好きなバンドのソウライヴとザ・ニュー・マスターサウンズのアルバムを1つずつご紹介しています。
前回のソウライヴの作品ご紹介は、ソウライヴ初の映像作品『Soulive 1999 – 2003』のDVDでした。
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今回は、ソウライヴが2007年にリードボーカリストのトゥサンを正式メンバーに迎えて制作した異色のボーカル作品『No Place Like Soul』をご紹介します。
ソウライヴ初のボーカル・アルバム『No Place Like Soul』は、ネオソウル系の名作⁉
本作から初参加しているボーカリストのトゥサン以外は、いつものソウライヴの3人、ドラムでリーダーのアラン・エヴァンスとその弟でキーボード奏者のニール・エヴァンス、そしてギタリストのエリック・クラズノーです。
本作では2曲のインスト・ナンバー以外は、基本はこの4人で演奏しています。(トランペットのゲスト入りの曲もあります。)
オルガン入りベースレスのボーカル入り4人バンドと言えば、伝説のロックバンドのドアーズを思い起こしますが、しかし音楽性は全く違っています。
やはりソウライヴの魅力と言えば、そのバンド名通りの「ソウルフル」な演奏にあります。
本作はボーカル入りということもあって、これまでのジャズファンク系の音楽性ではなく、ボーカルが主役のネオソウル系の音楽性に変化しています。
そもそもソウライヴ自体も、ネオソウル組とちょっとした繋がりがあったように思えます。
ディアンジェロの名盤『Voodoo』に参加していた変則8弦ギタリストのチャーリー・ハンターとソウライヴは、ライヴで何度も共演しています。
またソウライヴがライヴで”Feel Like Makin’ Love”を取り上げる際は、ディンジェロの『Voodoo』に収録されていたネオソウル系のアレンジで演奏していました。
更にはディアンジェロがザ・ルーツのクエストラヴやJディラらと音楽的実験を行っていたソウルクエリアンズのメンバーでもあったラッパーのモスデフとソウライヴは何度も共演しています。
この辺の繋がりは色々とあって面白いのですが、やはりソウライヴもネオソウルの影響を多少は受けていることでしょう。
さて今現在、再ブーム中のネオソウルというジャンルなのですが、本作はソウライヴによるネオソウル・アルバムとして聴くことも出来ます。
しかし個人的にはソウライヴのバンドとしての魅力は、インストでアドリヴをバリバリ演奏するようなジャムバンド的な要素だと思っています。
それはジャズファンク系のインスト曲に於いて、長尺のギターソロやオルガンソロを弾きまくるというものです。
そういった観点から見ると本作は歌モノ曲が中心の楽曲が多く収録されているので、ライヴでアドリヴソロを演奏するのには向いていない曲が多いのが事実です。
そういった面から見ると、「ソウライヴらしくない」アルバムなのですが、たまには歌モノ・アルバムでも…といった感じで別物として聴いた方が良いように感じんす。
結局本作のみでトゥサンは脱退して、元の3人組のソウライヴに戻ってしまうのですが、やはりインスト系ジャムバンドがこのバンドの魅力なので仕方のなかったことなのでしょう。
僕個人としても「ほらやっぱり、ボーカルはいらなかったかな⁉」と当時は思いました。
ボーカル入り企画盤としてソウライヴ名義でリリースすべきではなかった作品だと当時は思うのですが、ただ本作にはインストの名曲が2曲収録されています。
その2曲とは、”Outrage”と”Bubble”のことで、本作リリース後の来日公演でも演奏された名曲です。
しかもこの2曲は、2019年現在のライヴでも演奏されています。
皮肉なことに、ソウライヴ初のボーカル・アルバム『No Place Like Soul』には、ソウライヴを代表するインスト・ナンバーが収録されています。
そう考えると、やはりソウライヴ名義でリリースしていて良かったのでしょうね。
それでは異色作『No Place Like Soul』をご紹介します。
Soulive – 『No Place Like Soul』
01.Waterfall
02.Don’t Tell Me
03.Mary
04.Comfort
05.Callin’
06.Outrage
07.Morning Light
08.Never Know
09.Yeah Yeah
10.If This World Was A Song
11.One Of Those Day
12.Bubble
13.Kim
Personnel:
Toussaint – Vocals
Eric Krasno – Guitar
Neal Evans – Keybord
Alan Evans – Drums
アルバムの内容
『No Place Like Soul』の基本はトゥサンのボーカルをメインにした歌モノ曲で締められています。
1曲目”Warterfall”は、ソウルフルなロック調の曲でトゥサンのR&Bを基調とした疑い映える楽曲です。
作曲クレジットにエリック・クラズノーとポール・バレットの名前が記載されているのですが、ポール・バレットとはトゥサンの本名です。
おそらくエリックが作曲してトゥサンが歌詞を書いたのでしょう。
ちなみにこのボーカリストのトゥサンの名前の”Toussaint”には、「諸聖人の日」の意味でカトリック教会の祝日の一つです。
歌の合間にはエリックのギターソロもあります。
この時期からエリックはオクターバーを使うようになりました。
オクターバーというのはギターの元音にオクターヴ下の音を付け加えてサウンドに厚みを作るエフェクターです。
HR/HM系のギタリストが派手なソロを弾く際によく使うエフェクターなのですが最近のジャズファンク/ジャムバンド系のギタリストにも人気のエフェクターでもあります。
コリー・ウォンや、ネオソウル系ギタリストのケリー・2・スムースのようなファンキーなカッティングを得意とするギタリストもこのオクターバーを好んで使っていたりします。
例えば鍵盤奏者がいないバンドでギタリストがこのオクターバーを使って、オルガンのような役目を務めることも出来る便利なエフェクターでもあります。
2曲目”Don’t Tell Me”もエリック・クラズノー作曲の同じ路線の楽曲です。
最近ではエリックは自身のソロ活動で歌モノ・ロックをやっていたりするのですが、その布石を感じられます。
この曲はもともとエリックの初ソロアルバム用に書かれた曲でした。
アラン・エヴァンスの書いた3曲目”Mary”は、アコースティック・ギターの音色が美しいバラード曲です。
このアコギはアラン・エヴァンス自身が弾いています。
アランはこういったキャッチーな歌モノ曲をソロ活動でも書いていたりします。
4曲目”Comfort”は、ニール・エヴァンスが書いた「いかにもニールが好きそうなファンク曲」といったところです。
僕は初期のソウライヴ時代からニールの書くこういった明るいトーンのファンキーな楽曲が大好きです♪
この曲ではエリックがオクターバーとワウを使った面白いサウンドでギターソロを弾いていますね。
エリックのワウギターのバッキングがファンキーな5曲目”Callin’”は少しレゲェ調のゆったりとした曲です。
ここまでの5曲は歌モノ中心の楽興ばかりだったのですが、ここで「ソウライヴらしい」インストの名曲が登場します!
それが6曲目の”Outrage”です!
エリック・クラズノーが書いた「ギター主体」のジャズファンク…というよりもファンク・ロッです!
いわゆるジミヘン・コードと呼ばれる「E7#9」の連打で始まる疾走感溢れる楽曲です。
おそらく誰が聴いても「かっこいい!」と思えるような曲でしょう。
モロにジミヘンから影響を受けた曲なのですが、「ソウライヴらしい」楽曲です。
今でもソウライヴの代表曲のひとつとしてライヴでも頻繁に演奏されています。
はっきり言ってこの曲を聴くためだけに本作を購入してもいいんじゃないかな?と言えるそうな名曲です!
始めて本作を聴いた当時は、「ソウライヴっぽくないアルバムだな~…今後もずっとこの路線で行くのかな⁉」と心配していた僕は、この”Outrage”を聴いて安心しました。
ちなみにこの曲ももともとはエリックの初ソロアルバムに収録される予定だった楽曲でした。
今ではすっかりソウライヴの代表曲のひとつにまでなったのですがね。
しかし7曲目”Morning Light”からまた歌モノ曲に戻ります。
ただしこの”Morning Light”はなかなかオシャレなネオソウル系の曲なので悪くはないです!
ロイ・ハーグローヴがディアンジェロの『Voodoo』で吹いていたようなトランペットの音色が聞こえますが、これはトランペット奏者のラショーン・ロスがゲストで参加して吹いています。
8曲目”Never Know”は、エリックのアコギをバックにトゥサンが歌い始めます。
静かに始まった楽曲が途中からバンドが参加して盛り上がっていきます。
この曲もエリックの初ソロアルバム用に書かれていた楽曲です。
9曲目”Yeah Yeah”は、ワウギターのカッティングがファンキーな曲です。
10曲目”If This World Was A Song”は、レゲェのリズムを取り入れた歌モノ曲です。
11曲目”One Of Those Day”は、アラン・エヴァンスの書いた歌モノ・ファンク曲です。
と、ここまでまたしてもソウライヴらしくない楽曲が続いたところで、12曲目にインストの名曲が待ち構えています!
ニール・エヴァンスの書いたこの”Bubble”も、今でもライヴでちょくちょく演奏されている名曲です。
速いテンポの”Outrage”とは違ってこちらはギターやキーボードのロングトーンを多用した伸びやかな楽曲です。
壮大な景色が目の前に広がっていきそうな雰囲気漂う名曲です!
そしてアルバム最後の13曲目”Kim”というバラード曲で本作は締めくくられています。
最後のこの曲のみアラン・エヴァンスが自ら歌っています。
ファルセットで歌うアランのこの楽曲は、どことなくジミヘンの”Have You Ever Been (To Electric Ladyland)”を彷彿させます。
以上、【ソウライヴ異色のボーカル作品『No Place Like Soul』もやはりインスト曲が一番の出来⁉】でした。
上記でも書きましたようにこの後トゥサンはすぐにソウライヴから脱退してしまいます。
結局ソウライヴは元の3人に戻ってインスト主体のバンドに戻ります。
正直僕としてはソウライヴにボーカルはいらないと思っていたので、本作だけで終わってホッとしました。
しかし本作に収録されている歌モノ曲のレベルは決して低くはありません。
「ソウライヴらいくない」というだけで楽曲の質はかなり高いです!
2000年代以降のコンテンポラリーR&Bやネオソウル系がお好きな人にもおすすめできるアルバムです♪
またソウライヴ・ファンにとっても今でもライヴで演奏されることが多い”Outrage”と”Bubble”の2曲が含まれている点でも見逃せません!
初のボーカル・アルバムなのに、そこに収録された2曲のインストが代表曲になってしまうというのは、んと皮肉ですよね。
でもこの2曲はソウライヴというバンドを語る上でも絶対に外せない名曲ですので必聴ですよ!
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