
2019/05/29
ジミー・スミスのヴァーヴ時代一作目『Bashin’』を聴こう♪
ジミー・スミス1962年のヴァーヴ・レコード第一作目『Bashin’』をご紹介します。
ジミー・スミスが初めてオーケストラと共演した大ヒット作!
少し久しぶりになりましたが、”MUSIC”のカテゴリー記事の更新になります。
このブログでもこれまでに10作品以上ご紹介しているジャズ・オルガン奏者のパイオニアであるジミー・スミスです。
僕自身が『オルガンの音色』が大好きなのと、オルガン・ジャズ作品には高い確率でジャズ・ギターの名手が参加しているという理由もあって、僕がオルガン・ジャズ作品をブログで取り上げることが比較的多くなっております。
そんなジミー・スミスが、1960年代に入りブルーノート・レコードを離れてから移籍したヴァーヴ・レコードでリリースしたアルバムは大ヒット作品が数多く存在しています。
これまでにもこのブログで1964年の作品『The Cat』や1965年の作品『Organ Grinder Swing』などの大ヒット作品をご紹介していました。
今回は逆順で時代を遡って……1962年にヴァーヴ・レコードの第一作目としてリリースした『Bashin’』をご紹介したいと思います。
Jimmy Smith – 『Bashin’』
01.Walk on the Wild Side
02.Ol’ Man River
03.In a Mellow Tone
04.Step Right Up
05.Beggar for the Blues
06.Bashin’
07.I’m an Old Cowhand (From the Rio Grande)
Personnel:
Tracks 01-04
Jimmy Smith – Organ
Phil Woods, Jerry Dodgion – Alto saxophone
Bob Ashton, Babe Clarke – Tenor saxophone
George Barrow – Baritone saxophone
Joe Newman, Ernie Royal, Doc Severinsen, Joe Wilder – Trumpet
Jimmy Cleveland, Urbie Green, Britt Woodman – Trombone
Tom Mitchell – Bass Trombone
Barry Galbraith – Guitar
George Duvivier – Bass
Ed Shaughnessy – Drums
Tracks 05-07
Jimmy Smith – Organ
Quentin Warren – Guitar
Donald Bailey – Drums
Recorded : Recorded March 26 & 28, 1962.
アルバムの内容
1962年にリリースされた本作は、ジミー・スミスがそれまでの古巣だったブルーノート・レコードを離れてヴァーヴ・レコードにて初めて制作したアルバムです。
長年所属していたブルーノート・レコードから離れる際に、同レーベルの創始者のアルフレッド・ライオンに「ヴァーヴから声をかけられている」とジミー・スミスが伝えたところ…ライオンは「いいね!これでオーケストラと共演できるじゃないか!」と後押しをしたとか⁉
そこはお互いビジネス・パートナーとして後腐れなく済んだようです。
さて、そんなライオンの言葉も満更ではなく、実際にヴァーヴ・レコード第一作目の本作の1曲目から派手なホーン隊を擁するオーケストラが参加しています。
オリヴァー・ネルソンが指揮するオーケストラを従えてジミー・スミスがエルマー・バーンスタイン作の”Walk on the Wild Side”を演奏します。
この曲はフランス映画の『危険がいっぱい』の挿入歌です。
といってもテーマ・メロディーは派手なホーン隊が奏でているので、ジミー・スミスの存在は希薄です。
2分39秒が経ってようやくオルガン・ソロが始まります。
ここまでは「誰がリーダーなのかわからない楽曲」でもあります。
一応、本曲はビルボード・ホット100にて21位を記録したヒット・シングルではありますが、ソロ演奏以外でジミー・スミスが目立つことはありません。
次の2曲目”Ol’ Man River”は、ジェローム・カーンが書いたミュージカル及び映画『ショウ・ボート』の挿入歌として有名な楽曲です。
1950年代を思い起こさせる派手なホーン隊によるオーケストラは、もはやジャズというよりもミュージカルの曲を聴いている気分です。
この時代のジミー・スミスの作品が一般受けしたのも、こういった映画やミュージカルの「わかりやすい曲」を極力アドリヴ演奏を控えてテーマ・メロディーを中心の楽曲が多かったからというのもありそうですね。
ブルーノート・レコード時代のように、「各楽器人が火花を散らすかのようにアドリヴ演奏を繰り広げる」ような熱いジャズ作品を求めている方には、もしかしたら退屈な作品かも知れません。
しかし良い意味での『聴きやすさ』がこの時期のジミー・スミスの作品の魅力の一つだといえるでしょう。
次の3曲目のデューク・エリントンの楽曲”In a Mellow Tone” と4曲目のオリヴァー・ネルソン作の”Step Right Up”の2曲も同じ路線のキャッチーな楽曲が続きます。
しかし後半の3曲は、ジミー・スミスがお馴染みのトリオ・メンバーを従えてシンプルに演奏した渋めのジャズ・ブルース曲が続きます。
ちなみにギターを弾くのは、長年ジミー・スミスのバンドに在籍していたクウェンティン・ウォーレンで、ドラムを叩くのはオルガン・トリオ作品の名手ドナルド・ベイリーです。
5曲目の”Beggar for the Blues”は、ピアニストのレイ・ラッシュが書いた渋めのジャズ・ブルース曲です。
前半の4曲では聴くことができなかったブルージーなオルガン・ソロやギター・ソロを聴くことができます。
本作のタイトルにもなった6曲目”Bashin'”は、ジミー・スミス作の軽快なリズムのジャズ・ブルース曲です。
大手ヴァーヴ・レコードに移籍したためか、ヒットするようなキャッチーな楽曲がアルバム前半に多く収録されてはいましたが、やはりジミー・スミスの中にはこういった渋い「ジャズ・ブルース」が根付いているのでしょうね!
しかしどの曲もブルーノート時代のようにバリバリと激しくアドリヴ・ソロを弾きまくるのではなく、メロディー・ラインを基調にゆるく弾いている感じはありますね。
敢えてヒットしなさそうなこの渋いジャズ・ブルース曲をアルバム・タイトルに付けたのも好感が持てます。
そして最後の”I’m an Old Cowhand (From the Rio Grande)”は、ソニー・ロリンズやグラント・グリーンも取り上げたジョニー・マーサー作の名曲です。
『おいらは老カウボーイ』という邦題で有名な楽曲です。
ちなみにCD化の際に”Ol’ Man River”と”Bashin'”のシングル・エディット版2曲もボーナス・トラックとして収録されてはいますが、特に貴重な未発表曲といったわけでもないのでいまいちありがたみはありません。
以上、【ジミー・スミスのヴァーヴ時代一作目『Bashin’』を聴こう♪】でした。
僕個人としては、後半のシンプルなオルガン・トリオによるジャズ・ブルース3曲が好きだったりはするのですが、しかしやはり本作の目玉曲は前半のオーケストラをバックに演奏したキャッチーな4曲だとも感じます。
手に汗握るような白熱のアドリヴ・ソロ合戦こそありませんが、しかし『聴きやすさ』を重視したようなキャッチーな4曲も魅力的ではあります♪
どちらかというと、「これからジャズを聴いてみたいな~。でもいきなり難しそうな内容の作品はちょっと。」といった『ジャズ初心者』の方にもおすすめの作品だと思います。
熱すぎるアドリヴ演奏を聴きたい方にはあまり向いていないアルバムかもしれません。
そういった方はぜひともブルーノート時代のライヴ作品を!!!!
ジミー・スミスがブルーノート時代の盟友と再会したライヴ盤『Fourmost』2種類を聴こう♪
ジミー・スミスの代表曲のひとつとなった“The Cat”を含む1964年の大ヒット・アルバム!
ジミー・スミスの代表曲のひとつ”Organ Grinder Swing”を含む1965年の大ヒット・アルバムを聴こう♪
※このブログに掲載しているイラストや写真、テキスト等の無断引用・無断借用・無断転載・無断使用は固くお断りしております。ご利用はご遠慮ください。