
2019/11/07
エディー・ロバーツ初のソロライヴ盤『Roughneck – Live in Paris』を聴こう♪
ザ・ニュー・マスターサウンズのギタリストのエディー・ロバーツの初のソロライヴ盤『Roughneck – Live in Paris』をご紹介します。
ギタリスト、エディー・ロバーツの魅力を余すことなく味わえるライヴ盤!
以前このブログでもご紹介していたザ・ニュー・マスターサウンズ(以降:ニューマスター)のリーダーでギタリストのエディー・ロバーツが2004年にリリースした初のソロアルバム『Roughneck』の続きになります。
エディー・ロバーツ初のソロアルバム『Roughneck』を聴こう♪
今回はそのソロアルバムを引っ提げて2005年の10月11日にフランスのパリ18区にあるモンマルトルの”Le Triptyque”というジャズ・クラブで行われたライヴを収録したアルバム『Roughneck – Live in Paris』をご紹介します。
いつものニューマスターでのジャズファンク・サウンドではなく、エディー・ロバーツのもうひとつの側面でもあるクラブ・ジャズ系のサウンドがオシャレなライヴ盤です♪
Eddie Roberts – 『Roughneck – Live in Paris』
01.Eazin’ Down
02.The House in Alajor
03.Costa del Soul
04.Mr E
05.New Life
06.Szabo
07.Lose Yourself
08.Every Goodbye
Personnel:
Eddie Roberts – Guitar
Malcolm Strachan – Trumpet, Flugelhorn
Bill Laurance – Piano
Neil Innes – Bass
Gordon Kilroy – Drums
アルバムの内容
本作のライヴは、エディー・ロバーツをリーダーとしたワンホーン・クィンテットで行われています。
ギター+ピアノ+ベース+ドラムの編成にトランペットが参加した形になります。
理想的なジャズ・クィンテット編成ですね♪
そのため余計な装飾がなく純粋なジャズ演奏を聴くことが出来ます。
と言っても、エディー・ロバーツの演奏するジャズは、従来のストレート・アヘッドなものではなく、よりリズムが洗練されたクラブ向けのダンサンブルなジャズになります。
また本作の収録曲は、2曲目の”The House in Alajor”以外は全て『Roughneck』に収録されていた曲が選ばれています。
アルバムはさっそくエディーのギターのイントロから曲が始まります。
1曲目”Eazin’ Down”は、その『Roughneck』に収録されていた曲のひとつなのですが、この曲のみニューマスターのメンバー全員で作曲されています。
そのため今でも時々ニューマスターのライヴで演奏されたりする曲です。
でも曲調は、ニューマスター風のジャズファンクではなくアシッド・ジャズ系のクラブ向けの楽曲です。
テーマメロディーを弾き終わるとエディーのギターソロがトップバッターで始まるのですが……
ソロの始まりの40秒でエディーが弾いているフレーズは、グラント・グリーンが1970年のジャズファンク期の名盤『Green Is Beautiful』で演奏していたジェームス・ブラウンの曲”Ain’t It Funky Now”のソロの出だしと同じフレーズだったりします。
こういったところにグラント・グリーンへのリスペクトが感じられますね。
しかし通常のジャズマンと違って、エディーのギターはクリーントーンではなく、少し歪んでいます。
音作りに関しては「今風の歪みサウンド」といった点も、これまでのジャズ・ギタリストとは違っています。
エディーのジャズファンク・マナーに従ったギターソロで会場が盛り上がった後は、ファンキーなピアノソロ→オルガンソロ→ウッドベースソロ→トランペットソロと続きます。
明らかにスタジオ盤よりも熱い演奏です!
1曲目の熱い演奏そのままに2曲目”The House in Alajor”も熱気ムンムンで始まります!
テーマはギターとトランペットがユニゾンで演奏するハード・バップ系の楽曲です。
どことなく”Roughneck”と似たような一風変わったウッドベースのリズムがオシャレですね♪
テーマが終わると、ギターのソロが始まるのですが、この曲では矢継ぎ早にフレーズを弾きまくるのではなく、全体のアンサンブルを楽しみながらあえて抑えた演奏をしています。
盛り上がりそうで盛り上がらない!このもどかしさを楽しむ曲ですね。
3曲目”Costa del Soul”は、『Roughneck』にも収録されていたラテン風のジャズ曲です。
『Roughneck』ではサックスが参加していましたが、本作は代わってトランペットが参加しています。
そのためかトランペットの金管楽器による独特の高音がラテンのリズムにあっていて、よりこの楽曲の魅力を感じられます。
大学時代にジャズを専攻していただけあって、エディーのギターソロはビバップ・スケールも取り入れたジャジーな音選びをしています。
歪んだギターの音色も相まって、フレーズが綺麗なだけでなく、聴くものを夢中にさせるようなパワーも満ち溢れています!
こういったジャズギターのフレージングは、必ずしもクリーントーンだけが正解ではないという好例ですね。
そのあとに続くトランペットの高音を中心としたディジー・ガレスピーやリー・モーガンのような攻撃的なソロも素晴らしいので必聴です♪
4曲目”Mr E”も『Roughneck』に収録されていた、まるでブルー・ノート4000番台を感じさせるハード・バップ系の楽曲です。
本作はリーダーのエディー・ロバーツ以外にも、トランペッターのマルコム・ストラカンの名演も見逃せない作品です。
この曲の最初のソロイストを務めるのは、そのマルコム・ストラカンです。
これがなかなか素晴らしくって、この楽曲をまるでリー・モーガンのリーダー作に収録されているような名曲に仕上げてくれています。
次に続くビル・ローレンンスのピアノソロもファンキーに燃え上がります!
その後、ドラムソロとウッドベースのソロがあり、なんとギターソロはないまま曲は終わります。
「これってトランペットとピアノが主役のアルバムだったっけ?」と忘れそうなってしまいます。
メンバー全員に見せ場を設けた後は、5曲目”New Life”でエディー・ロバーツがようやくソロを弾き始めます。
ゆったりとしたミドルテンポの楽曲で、どことなくカルヴィン・キーズを思わせるようなジャジーなソロを弾いています。
ピアノソロやトランペットソロも挟み、静かに5曲目は終わっていきます。
6曲目”Szabo”は、ハンガリーのジャズ・ギタリスト、ガボール・ザボに捧げられたラテン・ソウル調の曲です。
ダンサンブルなリズムに何度も登場する和音のキメ部分、トレモロ・ピッキングを効果的に使ったテーマメロディー等、魅力あふれる楽曲です。
最後にはドラムとギターの創造的なジャム演奏もあったりと、聴きごたえのある楽曲です。
7曲目”Lose Yourself”は、2002年に流行ったエミネム主演の映画『8 Mile』の主題歌のカヴァーです。
『Roughneck』収録バージョンと同様に、ジャズ・アレンジを施して演奏しています。
エディー・ロバーツの自作曲と言っても違和感ないぐらいに「ハマって」います。
最後の8曲目”Every Goodbye”は、『Roughneck』では4曲目に収録されていたエレピの音色が美しいバラード曲です。
グラント・グリーンの1969年の作品『Carryin’ On』に収録されていたニール・クリーキーの曲”’Cease The Bombing”を彷彿させますね。
本作最後の演奏なのですが、エディーのソロはなく、ピアノとトランペットが中心となって演奏しています。
なんとなくイタリアのDJ兼コンポーザーでギタリストでもあるニコラ・コンテのようですね。
もしエディーがニューマスターのようなメインバンドをやっていなかったとしたら、ニコラ・コンテのようなコンポーザーよりのクラブ・ジャズ音楽家になっていたのかもしれません⁉
そんな気がする”Every Goodbye”でした。
以上、【エディー・ロバーツ初のソロライヴ盤『Roughneck – Live in Paris』を聴こう♪】でした。
トランペットやピアノの活躍も魅力のライヴ盤ですが、でもやはりリーダーのエディー・ロバーツの熱いギターソロをメインに聴きたいアルバムです。
グラント・グリーンやアイヴァン・”ブーガルー”・ジョー・ジョーンズの影響を受けつつも、そのまま真似して弾くのではなく、現代風に昇華して新たなサウンドに仕上げたギターソロは必聴です!
よりリズムを強調したこういったダンサンブルなジャズ曲では、クリーントーンの綺麗なギター・サウンドよりも、歪ませたパワフルなギター・サウンドの方が合っていることも本作を聴くと感じられます。
ニューマスターのファンだけでなく、クラブ・ジャズ/アシッド・ジャズ系の楽曲が好きな人にもおすすめのアルバムです。
もちろんニコラ・コンテがお好きな方にも♪
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