
2022/06/14
メルヴィン・スパークスも参加したアイドリス・ムハマッドのジャズファンクな傑作『Black Rhythm Revolution!』を聴こう♪
ジャズファンク系の名ドラム奏者アイドリス・ムハマッドの傑作『Black Rhythm Revolution!』をご紹介します。
アイドリス・ムハマッドというジャズファンクが得意なドラマー
ジャズ・ギタリストのグラント・グリーンがジャズファンクをやっていた後期の頃や同時期のジョージ・ベンソンやルー・ドナルドソンのリーダー作にドラムで参加していたアイドリス・ムハマッドは、60年代後半から70年代初頭までに数多くのジャズファンク系の作品に名を連ねています。
そのためジャズファンク作品を中心にご紹介している僕のこのブログでも過去に何度も登場した名前です。
アイドリス・ムハマッドは、本名をレオ・モリスといいイスラム教徒となってから改名しています。
どうしてもドラム奏者という点からサイドマンとしての参加作品の数も多く、名サイドマンとしての活躍が目立つため名脇役のように感じられなくもないですが、70年代前半頃はジャズファンク系の名作をいくつか自身がリーダーとして制作しています。
特に1970年に満を持して制作した初リーダー作となった『Black Rhythm Revolution! 』が一番「ザ・ジャズファンク」していて素晴らしいです!
その後は1974年の3作目『Power of Soul』辺りから徐々に時代の流れに合わせてクロスオーバー/フュージョン系の音楽に変化していき、1978年の6作目『Boogie to the Top』ではディスコ・ファンク作品まで作ってしまいます。
もちろんそういった音楽性も悪くはないのですが、それなら他にも素晴らしいドラム奏者はたくさんいます。
僕が思うにアイドリス・ムハマッドが一番輝く演奏は「ジャズファンクを叩いている時」です。
そのジャズファンク期がまさに60年代後半から70年代初頭までで、アイドリス・ムハマッドがサイドマンとして数多くの作品に参加していた時期です。
もちろんサイドマンとしての仕事も素晴らしいのですが、せっかく良いリーダー作もリリースしているので今回はそのアルバム『Black Rhythm Revolution! 』をご紹介したいと思います。
Idris Muhammad – 『Black Rhythm Revolution! 』
01.Express Yourself
02.Soulful Drums
03.Super Bad
04.Wander
05.By The Red Sea
名手メルヴィン・スパークスも参加!ジャズファンク系の名手ばかりが参加したアルバム
本作にはリーダーのアイドリス・ムハマッド以外のサイドマンにも要注目で、当時のジャズファンク系の名手ばかりが参加しています。
まず一番注目したいのは、グラント・グリーン直系のジャズ・ギタリストのメルヴィン・スパークスが参加していることでしょう。
メルヴィン・スパークスとアイドリス・ムハマッドは、本作以外にもオルガン奏者のロニー・スミスやレオン・スペンサーのアルバム等で共演しています。
他にもこの2人との共演が多いメンバーがサイドマンとして参加しています。
それがトランぺッターのヴァージナル・ジョーンズやコンガ担当のバディ・コールドウェルです。
そして2006年になってから発掘されたグラント・グリーンのジャズファンク期のライヴ・アルバム『Live At Club Mozambique』にも参加していたサックス奏者のクラレンス・トーマスも本作に参加しています。
その他にはピアニストのハロルド・メイバーンとベーシストのジミー・ルイスが参加しています。
この7人編成で本作はレコーディングされています。
アルバムの内容
1曲目”Express Yourself”は、チャールズ・ライト & ワッツ・103rd・ストリート・リズム・バンドの曲をインストでカバーしたバージョンです。
1970年のアルバム『Express Yourself』に収録されていました。
本作では2本のホーンを中心にテーマメロディーを演奏しています。
そこにこの時期上り調子にあったメルヴィン・スパークスがグラント・グリーンの代わりだと言わんばかりにファンキーなギターソロを提供しています。
このソロ演奏が素晴らしく、まるでメルヴィン・スパークスが本作のリーダーかのように感じさせる名演です。
ドラム奏者の初リーダー作ではありますが、アイドリス・ムハマッドは変拍子を多用して聞き手を驚かせるようなことはせず、あくまで楽曲の良さを引き出すことを第一に演奏しているところが好感持てます。
2曲目”Soulful Drums”は、曲名に反して(?)オルガン奏者のブラザー・ジャック・マクダフが書いた曲です。
オリジナルは1963年のアルバム『Screamin’』に収録されていた曲です。
原曲ではジョー・デュークスがドラムを叩いていたのですが、もちろん本作ではアイドリス・ムハマッドがよりファンキーなドラミングを披露しています。
この辺はやはり「ドラム奏者のリーダー作用の楽曲」といったチョイスですね。
そしてお次の3曲目”Super Bad”が本作のベスト・トラックです!
オリジナルはザ・ゴッド・ファーザー・オブ・ファンクことジェームス・ブラウンの曲です。
そもそもが数多く存在するファンク曲の中にあっても随一のかっこよさを誇る楽曲なのですが、本作ではホーン隊中心のインストでカバーしています。
しかし何よりも凄いのがサックスソロの後に登場するメルヴィン・スパークスのギターソロです。
3分23秒辺りから約1分近くギターソロを弾きまくっています!
ギターソロの出だしのフレーズはメルヴィンが後年にリリースした曲”Cranberry Sunshine”のテーマメロディーと似ていますが、おそらくお得意の手癖フレーズなのでしょう。
その他は同時期のグラント・グリーンを意識したプレイをしています。
4分4秒辺りから登場する同じフレーズを繰り返したシーケンス・フレーズはモロにグラント・グリーンの影響ですね!
「このアルバムのリーダーってメルヴィン・スパークスだったっけ?」と勘違いしてしまいそうなぐらい素晴らしいギターソロです!
まさに「ジャズファンク系ギターソロはこう弾くべき!」といったお手本のようなフレージングです。
ここまで前半はカバー曲ばかりが続いたのですが、後半になりようやくアイドリス・ムハマッドのオリジナル曲が登場します。
4曲目の”Wander”と5曲目の”By The Red Sea”は、共にアイドリス・ムハマッドが作曲しています。
11分にも及ぶ長尺曲”Wander”は、これから到来するクロスオーバー時代を見据えたかのようなジャズ・ロック曲です。
ハロルド・メイバーンのエレピの音が良い味を出しています。
メルヴィンもいつになくジャジーなギターソロを弾いていますが、この曲では終盤に登場するドラムソロが強烈で全てはそちらに持って行かれてしまいます!
「本作のリーダーはドラムを叩いている俺なんだ!」と言わんばかりにおの自作曲ではドラムソロを勢いよく叩いています。
“By The Red Sea”もクロスオーバー期のジャズ・ロックといった曲調で、同時期のマイルス・デイヴィスやハービー・ハンコックをも彷彿させます。
こちらではクラレンス・トーマスがサックスを吹きまくって存在感を示しています。
僕はどちらかというと本作の前半のソウル/ファンク曲が好きでよく聴いているのですが、しかしそれらの楽曲は全てカバー曲になります。
当時はR&B調の歌メロがはっきりした曲をジャズマン達がアルバムの売り上げアップのためにレコード会社の重役に演奏するように言われていたこともあったのだとか…。
同時期のルー・ドナルドソンの作品群には数多くのR&Bヒット曲のカバーが収録されていましたが、本人はあまり好きで演奏していたわけではなかったようです。
もしかしたら本作におけるアイドリス・ムハマッドも、彼自身が一番やりたかったことはレコードのB面に当たる自作の2曲だったのかもしれませんね。
時代の先を見据えたクロスオーバー・ジャズをやりたかったけれども、レーベルの売る上げを考えて冒頭3曲(レコードのA面)は売れ線狙いのカバー曲になったのかもしれません。
何にしても僕はどちらのジャンルも好きなので同じ流れで一つの作品として聴いています。
以上、【メルヴィン・スパークスも参加したアイドリス・ムハマッドのジャズファンクな傑作『Black Rhythm Revolution!』を聴こう♪】でした。
メルヴィン・スパークスの弾くギターソロがお好きな方にもおすすめのアルバムです♪
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