2022/06/20
様々な音楽的要素がモザイクのようにちりばめられたフォニー・ピープルの『mo’za-ik.』を聴こう♪
ボーダレスな音楽性が”今時”なバンド『フォニー・ピープル』
今回ご紹介するのは、近年僕が特に気に入っているバンド『フォニー・ピープル』をご紹介したいと思います。
『フォニー・ピープル』とは?
NY州ブルックリン出身のこのグループは、元は9人組という大所帯で2009年頃より音楽活動を始めています。
初期の頃は人数こそ多かったのですが、その中心はボーカリスト兼ラッパーのエルビー・スリーと鍵盤奏者のエイジャ・グラントの2人が始めたバンドです。
そもそもはエルビー以外にもダイム・ア・ダズンとシェリフ・PJという2人のラッパーも参加していたバンドなのですが、その後この2人は自身の音楽活動のために脱退しています。
現在は、エルビー・スリーとエイジャ・グラントの2人に加え、エイジの兄であるベーシストのバリ・ベースとドラムのマフューとギタリストのイライジャ・ロークを合わせた5人組で『フォニー・ピープル』として活動を行っています。
ちなみに英語名の”phony ppl”の”ppl”と表記されている箇所は、”people”の母音を抜いた形です。
“phony”には「偽物」や「いんちき」といった意味合いがあるので、”phony people”というバンド名は「ペテン師の人たち」ということになります。
しかしこの『フォニー・ピープル』というバンド名自体はエルビー・スリーが高校生の頃にエイジャ・グラントと一緒にダイム・ア・ダズンのライヴに参加した際に、「ダイム・ア・ダズン&フォニー・ピープル」といった具合に適当に付けた名前のようです。
特に意味のないバンド名や初期から大幅に減ったメンバーについては色々とごちゃごちゃしておりますが、現在のこの5人が作り出す音楽に関しては「本物」です!
影響を受けたミュージシャンはJ・ディラにジャミロクワイにマイケル・ジャクソン!?
フォニー・ピープルのインタビュー動画でとても興味深いものがYouTubeにアップされています。
この動画内のインタビューにて「尊敬するアーティスト」としてエルビーが真っ先にJ・ディラを挙げているのがこのバンドの特徴を表しているといえます。
近年頭角を現したトム・ミッシュやFKJといった新世代のネオ・ソウル・ミュージシャンと同じようにフォニー・ピープルもJ・ディラの作り出したビートから大いに影響を受けているようです。
その他にはジャミロクワイやマイケル・ジャクソンにスティーヴィー・ワンダー等、一般にも人気のミュージシャンの名前が挙げられています。
ジャミロクワイやマイケル・ジャクソンと比べると、どうしてもJ・ディラは「知る人ぞ知る」存在でしかありませんが…
しかしJ・ディラこそが、近年流行りのチルホップ(ローファイ・ヒップホップ)や次世代のネオ・ソウルの元となるビートを作り出した始祖だと言えます。
そのアンダーグラウンドなJ・ディラからの影響に、ポップで聴きやすいジャミロクワイやマイケル・ジャクソンの影響が合わさっているため、フォニー・ピープルは「聴きやすいのにビートが革新的!」といったまさに”今時”なバンドだと言えます。
今回のこのブログ記事のタグ付けに”R&B”以外にも”Neo Soul”や”Pop”を加えているのですが、”noGENRE.”(ノー・ジャンル)をモットーにヒップホップやロックにAORまでも飲み込んだ独自の音楽性は狭い枠内にカテゴライズ出来るようなものではありません。
まさにフォニー・ピープルの音楽性は「唯一無二」なのですが、今回は僕が感じた”R&B”、”Neo Soul”、”Pop”の3つのタグをこのブログ独自で付けています。
まぁ細かい音楽ジャンルは気にせず、フォニー・ピープルの素晴らしい作品を聴きましょう♪
それでは今回は2018年にリリースされた現時点での最新作『mō’zā-ik.』をご紹介します。
Phony Ppl – 『mō’zā-ik.』
01.Way Too Far
02.Once You Say Hello
03.Something About Your Love
04.Cookie Crumble
05.The Colours
06.One Man Band
07.Think You’re Mine
08.Move Her Mind
09.Before You Get A Boyfriend
10.Either Way
11.On Everything Iii Love
初めてフィジカル・リリースされたフル・アルバム『mō’zā-ik.』
フォニー・ピープルの活動歴は実は長く、一番最初は2009年に『WTF is Phonyland?』という作品でデビューしています。
それから2018年の本作『mō’zā-ik.』に至るまでに合計で5作品をデジタル音源のみでリリースしていました。
そして本作『mō’zā-ik.』が彼らにとって初めてCDというフィジカルな媒体でリリースされたアルバムになります。
本作から『300 Entertainment』というレーベルとレコード契約を結びメジャー・デビューしています。
2人のラッパーが抜けボーカルはエルビーのみになり、より「歌」にスポットライトを当てた歌物アルバムに仕上がっています。
ジャミロクワイやマイケル・ジャクソンからの影響だけでなくプリンスの影響も感じられる聴きやすいアルバムです。
それでは1曲ずつアルバムの収録曲をご紹介します。
アルバムの内容
1曲目”Way Too Far”は、幻想的なエレピの音色から始まります。
まるでジャミロクワイやアース・ウインド & ファイアーみたいなスペース・ファンク・アルバムの序章のような雰囲気ですが、エルビーの独特の歌声はジェイ・ケイやモーリス・ホワイトとは違ってかなりクセがあります。
これから始まるアルバムの期待感を高めてくれるような幕開けを告げる1曲目です。
続く2曲目の”Once You Say Hello”は、アース・ウインド & ファイアー風のキレのあるギター・カッティングに少しもっちゃりしたエルビーのボーカルが乗っかるファンク曲です。
ジャミロクワイほどハジけてはいないけれども、独特のグルーヴを持ったファンキーな楽曲です。
そして序盤の重要曲がここで登場します。
それが3曲目”Something About Your Love”です。
この曲はポップなMVも印象的で、シングル・ヒットも狙えそうな親しみやすい楽曲です。
サビの歌メロがキャッチーなのであまり好き嫌いなく万人に受け入れられそうな曲ですね♪
終盤でイライジャが弾いているギターソロは、なんとなくポップな曲でプリンスが弾きそうなフレージングです。
アルバムの序盤にこういった誰しもが聴きやすいポップな曲が入っているのは良いことですね♪
ポップな曲のお次はしっとりとした4曲目”Cookie Crumble”が続きます。
ワルツのリズムがどことなく何かの演劇の舞台で流れていそうな曲調です。
ここでジャズからの影響も見せつつ、次の5曲目”The Colours”でヒップホップに近づきます。
先のインタビュー動画でエルビーが語っていた影響を受けたミュージシャンの1人、J・ディラに最接近したヒップな楽曲です。
まさにJ・ディラの楽曲のようなビートをバックにエルビーがラップを披露します。
この曲がなければ「ちょっとポップなR&Bバンド」で終わりそうなのですが、この曲があるお陰でこのフォニー・ピープルが様々な音楽性を吸収した真にノー・ジャンルなバンドだということを示しているのだと感じます。
“somethinG About Your Love.”のようなウケ狙いなポップ・ソングだけじゃなくって、こういったメインストリームから外れたような革新的な楽曲も同じアルバムに収録しちゃうのが”今時”な感性を持ち合わせた音楽集団フォニー・ピープルなのです。
6曲目”One Man Band”は、少しアンビエントなバックの演奏にエルビーのボーカルを前面に出した曲です。
7曲目”Think You’re Mine”は、ギター1本をバックにエルビーがファルセット気味に喉を押さえて歌った小唄です。
8曲目”Move Her Mind”と9曲目” Before You Get A Boyfriend”そして10曲目”Either Way””は、どこか70~80年代AORの影響を感じさせつつラップも交えた歌物曲です。
近年流行りのシティ・ソウルの曲として聞くのもありかもしれません。
アルバム最後の11曲目”On Everything Iii Love”は、イライジャのギターとストリングスをバックにファルセット混じりでエルビーがアンニュイに歌うバラード曲です。
以上、全11曲…ポップにR&Bにヒップホップ、それに加えてワルツ&ジャズ風味にアンビエントなAOR等様々な音楽ジャンルからの影響を感じさせつつもフォニー・ピープルのオリジナルにまで昇華したノー・ジャンルなアルバムに仕上がっています。
ヒット・チャートの上位を狙えそうなポップな曲があるかと思えが、J・ディラからの影響濃い革新的な”The Colours.”が上手い具合に混在した名作です。
僕がここ4,5年で聴いたバンドの中ではトップ・クラスのお気に入りがこのフォニー・ピープルです♪
ぜひこのブログ記事を読んでフォニー・ピープルに興味を持たれたという方は、まずはこの『mō’zā-ik.』を聴いてみて下さい!
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