
2019/11/08
V.S.O.P.クィンテット誕生のきっかけとなったハービー・ハンコックの『ニューポートの追想』を聴こう♪
V.S.O.P.クィンテット誕生のきっかけとなったハービー・ハンコックの『ニューポートの追想』をご紹介します。
1976年6月29日にハービー・ハンコックが”ニューポート・ジャズ・フェスティバル”に出演した際のライヴを記録した2枚組アルバム!
1976年6月29日に開催されたが”ニューポート・ジャズ・フェスティバル”には、「ハービー・ハンコックの追想」というプログラムが組まれていました。
このプログラムは、それまでのハービー・ハンコックが歩んできた音楽の歴史を辿るようなコンサートでした。
ハービーが60年代にデビューした当時のブルーノート時代の「新主流派」と呼ばれるモードジャズ期
60年代後半から6人編成の「セクステット」で新たな音楽を追求したワーナー時代のクロスオーバー期
そしてヘッドハンターズが生まれるきっかけとなった70年代CBS時代のジャズファンク期……
この3つの時期を、その当時に参加していたミュージシャンを集めてこの日の「ハービー・ハンコックの追想」というプログラムが行われました。
その際に一番最初のモードジャズ期のバンドが、後のV.S.O.P.クィンテット誕生のきっかけとなりました。
V.S.O.P.クィンテットは、ハービー・ハンコックを中心に、サックス奏者のウェイン・ショーターとトランペット奏者のフレディ・ハバード、ベース奏者のロン・カーターとドラム奏者のトニー・ウィリアムスという5人組です。
フレディ・ハバード以外はマイルス・デイヴィスの「黄金のクィンテット」で活躍した盟友になります。
本来であればこの「ハービー・ハンコックの追想」でハービーはマイルスに出演して欲しかったよなのですが、この時期のマイルスは引退状態でした。
1975年からおよそ5年間、マイルスは音楽業界から遠ざかっています。
ちょうどその時期にこの”ニューポート・ジャズ・フェスティバル”が行われていたこともあって、マイルスの代わりにフレディ・ハバードが起用されました。
フレディ・ハバードとハービーはブルーノート時代から何度も共演しています。
例えばハービーのリーダー作でスタンダード曲にまで上り詰めた”Cantaloupe Island”が収録された名盤『Empyrean Isles』にもフレディ・ハバードは参加していました。
また演奏技術の高さも申し分なく、マイルスに「フレディ・ハバード?あいつはダメだ!」と陰口を叩かれているぐらいです。
あまり相手を褒めることがなかったマイルスに、ここまでこっぴどく文句を言われるぐらい「同じトランぺッターとして気になる存在」だったのでしょう。
そうでなければ気にもしないはずですからね。
むしろ単純なテクニックだけでいえば、マイルスよりもフレディの方が高いぐらいです。
しかし音楽の良し悪しは、演奏技術の高さだけで決まるような単純なものではありません。
フレディにはフレディの良さがあり、マイルスにはマイルスの良さがあります。
そんな2人の個性の違いは別として、この5人によるパフォーマンスが予想以上に良い反響を呼んだことで、その後V.S.O.P.クィンテットとして数枚のアルバムを制作するに至りました。
ちなみに本作のアルバム・タイトルにもある『V.S.O.P.』とは、”Very Special Onetime Performance”の意味です。
「一回きりのスペシャルなコンサート」だったようですが、あまりの評判の良さにその後もこのバンドは続いていきました。
さて、本作『V.S.O.P.(邦題:ニューポートの追想)』は、そのV.S.O.P.クィンテットによる3曲の他にも、エディ・ヘンダーソンやジュリアン・プリースターを含むセクステットで2曲、ワー・ワー・ワトソンやレイ・パーカーJr.をふくむジャズファンク・バンドで2曲…と、3バンドで合計7曲が収録されています。
今回はその2枚組ライヴ盤をご紹介したいと思います。
Herbie Hancock – 『V.S.O.P.』
[Disc 1]
01.Piano Introduction
02.Maiden Voyage
03.Nefertiti
04.Introduction Of Players / Eye Of The Hurricane
[Disc 2]
01.Toys
02.Introductions
03.You’ll Know When You Get There
04.Hang Up Your Hang Ups
05.Spider
アルバムの内容
アルバムはオーディエンスの大きな拍手から始まります。
ヤマハ・エレクトリック・グランド・ピアノを弾くハービーの独奏でコンサートが始まります。
その後、クィンテットのメンバーが参加して”Maiden Voyage”へと突入します。
2管によるテーマが終わると、先陣を切ってソロを吹くのはウェイン・ショーターのサックスになります。
その後フレディ・ハバードのトランペットが続き、ハービーのピアノソロが続き後テーマに戻ります。
まずはハービーを代表する楽曲でコンサートが始まりました。
その勢いのままマイルスのアルバムに提供されたウェイン・ショーターの”Nefertiti”に突入します!
原曲通りに2管がテーマメロディーを吹く中、ハービーのピアノが自由に暴れまわります。
“Nefertiti”が終わると、ハービーによるメンバー紹介が始まります。
まずはドラムのトニー・ウィリアムスに始まり、次にロン・カーターの順番で名前を呼びあげます。
それに呼応してトニーがドラムを叩き、ロンがウォーキングベースを弾き始めます。
フレディ・ハバードとウェイン・ショーターの名前を呼び上げ、4人のジャム演奏が終わったところでハービーも加わり”Eye Of The Hurricane”が始まります。
後のV.S.O.P.クィンテットでも目玉となったこの名曲を、この日最高ともいえる勢いで演奏しています。
ここでディスク1が終わり、ディスク2はベニー・モウピンにエディ・ヘンダーソン、ジュリアン・プリース、バスター・ウィリアムス、ビリー・ハートを合わせたワーナー時代のセクステット編成へと交代します。
曲はブルーノート時代のアルバム『Speak Like A Child』収録の”Toys”とワーナー時代の『Mwandishi』から”You’ll Know When You Get There”が選ばれています。
先ほどのV.S.O.P.クィンテットと比べると、メンバーの知名度こそ劣りますが演奏能力はそこまで劣っていません!
むしろベースに至っては、ロン・カーターよりもバスター・ウィリアムスの方が良いぐらいでしょう。
“Toys”に関しても、ハービーのソロの際にドラムを激しく叩いて煽るビリー・ハートの熱さも聞き逃せません!
セクステットの2曲が終わると、ワー・ワー・ワトソンの弾く”Hang Up Your Hang Ups”のギターのイントロが聴こえてきます。
ハービーのMCでワー・ワー・ワトソンが紹介されると、次にベースも加わってポール・ジャクソンが紹介されます。
その勢いのまま、1弦12フレットに2弦15フレットをチョーキングしたユニゾンチョーキングのフレーズを含むファンキーなカッティングを弾くもう1本のギターが登場します。
これはレイ・パーカーJr.が弾くギターで、その後ドラムのジェームス・レヴィとパーカッションのケネス・ナッシュも加わります。
ベニー・モウピンのみセクステットから引き続き参加しています。
ギターのカッティングが中心のジャズファンク・バンドへと一気に変化して、ハービーもフェンダー・ローズやアープ・オデッセイ等のエレピやシンセサイザーを弾き始めます。
その勢いのまま『Secrets』に収録されていた”Spider”に流れ込みます。
フェイザーを利用したレイ・パーカーJr.のシュワシュワ音によるファンキーなギター・カッティングがあまりにもかっこいい楽曲です♪
その後のハービーの音楽性が、こういったファンキーなギターを必要としないダンサンブルなエレクトリック・ポップス路線に向かったのは個人的には残念ではありますが、ここで最高の演奏を披露してくれたことは喜ばしいことです♪
以上、【V.S.O.P.クィンテット誕生のきっかけとなったハービー・ハンコックの『ニューポートの追想』を聴こう♪】でした。
V.S.O.P.クィンテット誕生のきっかけとなっただけでなく、ハービーの1976年までのモード・ジャズ時代~クロスオーバー時代~ジャズファンク時代を網羅するようなライヴ盤です。
全てに於いてレベルの高い演奏ばかりが収録されています。
ぜひディスク1以外のV.S.O.P.クィンテットの演奏以外も聴いてみてください♪
他に関連するお勧め記事
ハービー・ハンコックがブルーノート・レコードに残した名作アルバム7枚のおすすめ♪
ハービー・ハンコックがワーナー・ブラザース・レコードに残した3枚の名作アルバムを聴こう♪
ジャズファンク期のハービー・ハンコックのおすすめアルバム6選‼
※このブログに掲載しているイラストや写真、テキスト等の無断引用・無断借用・無断転載・無断使用は固くお断りしております。ご利用はご遠慮ください。