2019/03/11
ブルーノート流アフリカン・ビート!エディ・ゲイルのゲットー・ミュージックを聴こう♪
ジャズ・トランぺッターのエディ・ゲイルが1968年にブルーノート・レコードに残した『Eddie Gale’s Ghetto Music』をご紹介します。
コーラスやアフリカン・ビートを大胆に取り入れた異色作!
ハード・バップ時代に大活躍したジャズ・トランぺッターのケニー・ドーハムに師事した異色のトランぺッターが、今回ご紹介するエディ・ゲイルです。
このブログでよく登場しているStuffのギタリストであったエリック・ゲイルではありませんよ。エディ・ゲイルです。(笑)
エディ・ゲイルは、本作を吹き込む前にもフリー・ジャズ・ピアニストとのセシル・テイラーや「オルガンのコルトレーン」の異名を持つラリー・ヤングの作品に参加していました。
そんなエディ・ゲイルが満を持して初リーダー作を吹き込んだのが1968年のこの『Eddie Gale’s Ghetto Music』です。
本作はブルーノート・レコードにて制作されています。
コーラスやアフリカン・ビートを大胆に取り入れた異色作に仕上がっていて、当時のジョン・コルトレーンを中心とするファラオ・サンダースやアーチー・シェップなんかの『スピリチュアル・ジャズ』の感触を持ち合わせた作品でもあります。
また60年代初めにサン・ラと出会ったことで、音楽的にだけでなく自身の生き方にも大きな影響を受けています。
ちょうどこの1968年という年は、キング牧師が4月4日に暗殺された時期でした。
U2の名曲”Pride (In the Name of Love)”の一節にありますように、“Early morning April 4th, shot rings out in the Memphis sky”キング牧師は1968年の「4月4日の朝、メンフィスで銃殺された」のでした。
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キング牧師の暗殺事件によって、一時的に公民権運動はマルコムXの思想のような過激なものへと変化していきます。
それを受け手かどうかはわかりませんが、1969年のジェームス・ブラウンの”Say It Loud (I’m Black and I’m Proud)”や、同じ年に発表されたスライ&ザ・ファミリーストーンの”Don’t Call Me Nigger, Whitey”のような黒人意識を高めるようなパワフルな楽曲が多く生み出されました!
そんなブラック・パワーが盛り上がる時期にエディ・ゲイルも自身のアフリカンなルーツを表現するような作品としてこの『Eddie Gale’s Ghetto Music』を制作しています。
ちなみに『Eddie Gale’s Ghetto Music』をは、1968年9月20日に制作されているので、キング牧師が亡くなってから半年も経たないうちに吹き込まれています。
それでは、今回は『Eddie Gale’s Ghetto Music』をご紹介したいと思います。
Eddie Gale -『Eddie Gale’s Ghetto Music』
01.The Rain
02.Fulton Street
03.A Understanding
04.A Walk With Thee
05.The Coming Of Gwilu
Personnel:
Eddie Gale – Trumpet, Steel Drums, Piano
Russell Lyle – Tenor Saxophone, Flute
James “Tokio” Reid, Judah Samuel – Bass
Richard Hackett, Thomas Holman – Drums
Elaine Beener – Lead Vocals
Joann Gale – Lead Vocals & Acoustic Guitar on Tracks: 01
Art Jenkins, Barbara Dove, Edward Walrond, Evelyn Goodwin, Fulumi Prince, Mildred Weston, Norman Right, Sondra Walston, Sylvia Bibbs – Additional Vocals
Released:1968.
Recorded:September 20, 1968.
BN:4294
アルバムの内容
1曲目”The Rain”は、ジョアン・ゲイルのボーカルとアコースティック・ギターが中心となった楽曲です。
逆KKKのような(?)装束姿の人物が集まったアルバム・ジャケットにも、トランペットを持つエディ・ゲイルの横に犬を挟んで並んでいる女性がジョアン・ゲイルです。
この写真でも手にアコースティック・ギターを持っていますね。
“The Rain”の曲を書いたのはエディ・ゲイルのようですが、作詞をしたのはジョアン・ゲイルのようです。
まずはジョアン・ゲイルが静かに歌い始め、サビ部分になるとコーラス隊が参加して曲を盛り上げます。
そのサビ後に次の歌パートに移る間にエディ・ゲイルのトランペットソロが入る曲です。
ヴォイシズ・オブ・イースト・ハーレムほどファンキーではありませんが、ゴスペルをルーツとしたようなコーラスを持つ曲調です。
他の2曲目”Fulton Street”から最後の曲”The Coming Of Gwilu”まで全てエディ・ゲイルが作曲しています。
1曲目以外の曲は、基本的に具体的な歌詞を持たず、エディ・ゲイルの吹く少しフリーキーなトランペットを中心にしたインスト曲です。
ところどころでコーラス隊の歌声や語りの様なものも聴こえてきます。
主役のエディ・ゲイルのトランペットもさることながら、本作の聴きどころはリチャード・ハケットとトーマス・ホルマンのドラムが叩き出すアフリカン・ポリリズムにあると思います。
これこそが、アメリカの黒人達のルーツでもあるアフリカのビートですね。
13分以上ある最後の曲”The Coming Of Gwilu”なんかが特に聴きどころです!
カリンバのような軽い打楽器の音の後に美しいフルートの音色が始まります。
その後、ドラムの叩き出すアフリカン・ビートが6分近く続きます!
コーラス隊やスティールパンのような打楽器も参加して、盛り上がってきた頃に6分15秒になってからやっと主役のエディ・ゲイルのトランペットが登場します!
まるでトランペットでジョン・コルトレーンを演じるかのような静謐な演奏は必聴です!
以上、【ブルーノート流アフリカン・ビート!エディ・ゲイルのゲットー・ミュージックを聴こう♪】でした。
アルバム全体の感触としては、ジョン・コルトレーンの1967年の名作『Kulu Se Mama』を彷彿させる作品です。
同じブルーノート・レコードの作品でしたら、ドナルド・バードの1964年の作品『A New Perspective』なんかとも感触が似ています!
他にも2007年にトランぺッターのアヴィシャイ・コーエンが制作した作品『After The Big Rain』にも、どこか影響を与えているような……気がしなくもないです⁉
ストレート・アヘッドなジャズ作品求めている方には、あまりおすすめ出来ませんが……革新的なジャズを聴きたい!という方におすすめの作品です♪
もちろんサン・ラやファラオ・サンダースなどが好きな方には特におすすめの作品です!
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