2021/03/03
90年代以降のドクター・ロニー・スミスのジャズファンクおすすめ盤まとめ
近年のオルガン奏者ドクター・ロニー・スミスがジャズファンクおすすめ盤
実は90年代以降に名作が多いロニー・スミス!
前回のブログ記事では、オルガン奏者のロニー・スミスが1985年に録音したレアなセッション作品をご紹介していました。
実はメルヴィン・スパークスを聴くべき作品!?ロニー・スミスの隠れた名セッション・アルバム『Lenox And Seventh』
このブログでも何度かご紹介しているロニー・スミスは、60年代のデビュー以降、ソウルジャズ/ジャズファンクの名作を70年代半ばまでに数多く残しています。
しかし75年を過ぎた頃から、当時の時代の波に乗ったディスコ・ファンク作品を作るようになっていきました。
ジャズファンクにも様々な種類があって、フュージョンぽいものからスピリチュアル・ジャズっぽいものまで、他ジャンルの垣根を超えたような作品が多くあります。
そういった点では、このディスコ・ファンク時代の作品も、ジャズファンクの一部ではあるのですが…いかんせん僕自身がこの時代の軽いファンク・サウンドをどうしても好きになれないでいます。
やはりせっかくオルガン奏者なのだから、コテコテのオルガンを弾いて欲しいんですよね。
ディスコ・ファンクの作品となってくると、オルガン奏者の必要性があまり感じられず、それだったらロニー・スミスが作る必要もないんじゃなかったのかな?って。
どうしてもこの時代のロニー・スミスの作品を好きになれないでいる僕なのですが、しかしロニー・スミスは90年代以降、原点回帰をしたソウルジャズ/ジャズファンクの名作を作ってくれるようになりました。
当時はちょうど英国から始まった【アシッド・ジャズ・ムーヴメント】によって、60年代後半から70年代半ばまでのジャズファンクが見直されていた時期でもありました。
日本でもそういったブームに乗って、バーナード・パーディ率いるジャズファンク・バンドが来日公演を行い『Coolin”N Groovin’』という名作DVDを残してくれています。(デビTやチャック・レイニーも参加!必見です!)
そういった流行もあってか、ロニー・スミスも90年代以降に原点回帰をしたのかもしれません!?
理由はどうあれ、70年代半ばのディスコ・ファンクは聴くに堪えない作品だったりするのですが、復活後の作品は過去の名作と並べても引けを取らないようなアルバムが多くあります。
そういったわけで、今回は90年代以降のロニー・スミスの名作をまとめてご紹介したいと思います。
ちなみにロニー・スミスは、90年頃からドクター・ロニー・スミスを名乗るようになっています。
これは同じ鍵盤奏者のロニー・リストン・スミスとの違いを示すためなのかもしれませんが、しかし急にドクターが付くようになって、作品を探す際に逆にややこしくなっているような…!?
まぁオルガン・プレイを聴けば、すぐに60年代と同じオルガン奏者のロニー・スミスだとわかるんですがね。
エレピが主体のリストン・スミスとは、演奏を聴けば全くの別人とわかりますからね。
それでは90年代以降のドクター・ロニー・スミスの名作をまとめてご紹介したいと思います。
Dr. Lonnie Smith – 『The Art of Organizing』
1993年10月15日に録音された8曲をまとめた『The Art of Organizing』は、ストレートなオルガン・ジャズの名作です。
録音こそ93年に行われていますが、本作がリリースされたのは、それから16年後の2009年になってからです。
しかし名演というものは時間の流れに耐えうるもので、年月が経っても変わらず輝き続けています。
チャーリー・パーカーの”My Little Suede Shoes”や”Polka Dots and Moonbeams”に”Softly as in a Morning Sunrise”の3曲のお馴染みスタンダード曲以外は、全てロニー・スミスのオリジナル曲になります。
いきなりバラード演奏の”When We Kissed at Night”から始まるアルバムではありますが、この曲がまた心地良い楽曲なので退屈にはなりません。
本作は、ロニー・スミス以外のメンバーは、ギターにピーター・バーンシュタイン、ドラムにビリー・ドラモンドを加えたシンプルなオルガン・トリオの編成で録音されています。
それだけにどの曲もじっくりとロニー・スミスのオルガンを堪能することが出来ます。
また1曲目のソロイストの1番手として弾き始めるピーター・バーンシュタインの演奏も絶品です。
この後、ジョナサン・クライスバーグと交代するまで長い間ロニー・スミス・バンドのギターを務めていました。
グラント・グリーンからの影響を強く感じさせるピーター・バーンシュタインなのですが、太く甘いギターのトーンはまさにグラント・グリーン直系のスタイルです。
1曲目の2分55秒で聴くことが出来るフレージングなんかは、グラント・グリーンの手癖フレーズをそのまま拝借していますからね。
といったわけで、グラント・グリーンのファンの人にもおすすめできます。
もちろんピーター・バーンシュタインのリーダー作がお好きな方も、実はロニー・スミスのこういった作品も聴いて欲しいなって思います。
ちなみに6曲目”Turning Point”は、ロニー・スミスが1969年にブルーノート・レコードからリリースした同名アルバムにも収録されていたアグレッシヴな楽曲のセルフ・カヴァーになります。
あの頃のような熱さこそ消えかかってはいますが、しかし名手ピーター・バーンシュタインを含む洗練された本作の演奏は、「大人になったオルガン・ジャズ」といったところでしょうか。
本作の最後に収録されているロニー・スミスのオリジナル曲”Too Damn Hot”は、この後も何度か再演される名曲です。
90年代以降のロニー・スミスを代表する楽曲と言っていいでしょう。
そんな名曲が収録されている点も本作の魅力です。
アルバム・ジャケットがあまりにも地味なため、存在感が薄いアルバムではありますが…しかし原点回帰した素晴らしいオルガン・ジャズの演奏に、名手ピーター・バーンシュタインを活かしたシンプルなトリオ演奏に、代表曲”Too Damn Hot”を含んだ内容は、聞き逃せません!
Dr. Lonnie Smith – 『Boogaloo To Beck – A Tribute』
とても変わったアルバムです。
2003年にリリースされた本作『Boogaloo To Beck – A Tribute』は、なんとあの”Loser”で一躍有名になったベックの楽曲をカヴァーしたアルバムです。
この時期はジャズ・オルガン奏者に他ジャンルのミュージシャンの楽曲をカヴァーさせる企画押しだったのか?本作をリリースしているスカッフリン・レコードは、リューベン・ウィルソンにも『Boogaloo to the Beastie Boys』という作品名でビースティー・ボーイズのカヴァー・アルバムを録音させたりもしています。
試みとしては面白いのですが、しかしフタを開けてみると…中身は普通のオルガン・ジャズ演奏だったりします。
本作もベックの楽曲を取り上げてはいますが、テーマやコード進行を拝借しているのみで、演奏自体は60~70年代のソウルジャズ路線と変わらないものとなります。
カヴァーしている題材が真新しいだけで、中身は普通のソウルジャズです。
なので、逆に言うと僕と同じようにコテコテのソウルジャズ好きの人におすすめ出来るアルバムでもあります。
「え~ベックの曲とか知らないよ~」といった人も、特に問題なく聴くことが出来ます。
曲のテーマこそベックの歌メロをなぞってはいますが、ソロが始まるといつものジャズマンの如くバリバリとアドリヴソロが始まりますからね。
ベックが好きかどうかは気にせずに、むしろオルガン系ソウルジャズが好きかどうか?の方が本作を聴く際には大きなポイントとなります。
ちなみにサックスに名手デイヴィッド・”ファットヘッド”・ニューマンが参加しています。
もうこれだけでソウルフルな香りが漂ってきますよね!?
Dr. Lonnie Smith – 『Too Damn Hot』
今回ご紹介するアルバムの中で、本作が一番のおすすめとなります。
サイケデリックなアルバム・ジャケットのデザインも気合いが入っている『Too Damn Hot』は、2004年1月5日と6日に録音されています。
本作の面白い点は、ギタリストにピーター・バーンシュタインだけでなくロドニー・ジョーンズも参加していることです。
この2人の絡み合いは、ニューオーリンズ・ファンク的な1曲目”Norleans”でさっそく聴くことが出来ます。
2人の聞き分けかたなのですが、右チャンネルがピーター・バーンシュタインで左チャンネルがロドニー・ジョーンズになります。
ピーター・バーンシュタインはギターソロだけでなくバッキングに於いても、中指でルートを押さえるジャズ・コードを主体に弾いています。
それに対して、メイシオ・パーカー版の”The Chicken”でも素晴らしいカッティング演奏を聞かせてくれていたロドニー・ジョーンズは、高音弦を主体としたスモール・コードをファンキーにカッティングしています。
弾き手によってジャジーなギターのバッキングに、ファンキーなギターのバッキング…どちらも楽しむことができるのがジャズファンクというジャンルの良さでもありますね。
ちなみにアルバム・タイトルにもなっている”Too Damn Hot”は、先ほどご紹介していた『The Art of Organizing』にも登場したこの時代のロニー・スミスの代表曲です。
3曲目の”Back Track”もロニー・スミスのオリジナル曲で、この後のライヴなどでもよく取り上げられることになる代表曲のひとつです。
5曲目”Silver Serenade”は、ジャズ・ピアニストのホレス・シルヴァーの曲です。
アバンギャルドな6曲目”Track 9″では、ロドニー・ジョーンズの弾くワウギターも登場します。
7曲目”One Cylinder”は、ルー・ドナルドソンの1967年の名作『Alligator Bogaloo』に収録されていた楽曲です。
ルー・ドナルドソンのバージョンではジョージ・ベンソンが味のあるギターソロを弾いていましたが、本作のピーター・バーンシュタインも負けていません!
まるでベンソンの師匠にもあたるグラント・グリーンを飛び越して影響を受けたようなタメを効かせたギターソロを披露しています。
9曲目”Your Mama’s Got A Complex”では、ロニー・スミスの歌が登場します。
1969年の名盤『Move Your Hand』以来、こういったファンキーな歌物も取り上げるのがロニー・スミスの面白いところですね。
またこの曲では、マイク・スターンのようなコーラス・エフェクターを使ったピーター・バーンシュタインが、まるでマイルス・デイヴィスがよく吹いていた”Jean Pierre”のテーマのようなフレーズをギターソロで弾いていたりもします。
ギタリストも弾きやすいあのフレーズは、定番でもありますからね。
アルバム・ジャケットのデザインも良い本作『Too Damn Hot』は、全ジャズファンク・ファン必聴の名作でもあります!
古い時代のジャズファンクも良いですが、2000年代以降に録音された物の中にも、本作のような名作はありますよ♪
Dr. Lonnie Smith – 『Jungle Soul』
2005年11月28~29日に録音されて、翌年2006年にリリースされた『Jungle Soul』は、少し大人しいアルバムです。
引き続きピーター・バーンシュタインが参加している作品ではありますが、今回の相方ギタリストはロドニー・ジョーンズではなくマット・バリサリスになります。
マット・バリサリスは、ワウを使ったファンキーなバッキングやアコースティック・ギター等、主にバッキングに徹しています。
ギターソロを弾いているのは、ピーター・バーンシュタインになります。
1曲目はマーヴィン・ゲイの”Trouble Man”から始まります。
アルバム・ジャケットの雰囲気と同様に渋い選曲から始まり、2曲目のフランク・フォスターの曲”Simone”でも渋い演奏は続きます。
3曲目の”Jungle Soul”にして、ようやくロニー・スミスのオリジナル曲が登場します。
しかし騒々しそうな曲名と違って、大人しめの曲調です。
その後もオリジナル曲に混ざって、ジャズ・スタンダードの”Willow Weep for Me”や”Freedom Jazz Dance”に”Bemsha Swing”も含んだ内容が進んでいきますが、どうも地味な演奏が続く作品でもあります。
前作の熱かった『Too Damn Hot』と比べると、あまりに大人しい演奏に感じられますが、もしかしたら『Too Damn Hot』とこの『Jungle Soul』は対になる作品なのかも知れませんね?
動の『Too Damn Hot』に対して、静の『Jungle Soul』といったところでしょうか。
ただ派手さこそありませんが、本作に収録されているロニー・スミスのオリジナル曲の出来は悪くありません。
Dr. Lonnie Smith – 『Rise Up!』
2008年5月5~6日に録音されて、翌年の2009年にリリースされた『Rise Up!』は、文字入れがおしゃれなアルバム・ジャケット同様にかっこいい楽曲が収録されているアルバムです。
グルーヴィーな1曲目”A Matterapat”から始まり、ビートルズの名曲”Come Together”を全く別の曲のようにアレンジした2曲目、ニューオーオーリンズの名物サックス奏者ドナルド・ハリソンの名演が光る3曲目のバラード”Pilgimage”の冒頭3曲があまりにも素晴らしすぎます!
本作をリアルタイムで聴いた時に僕はこの3曲で既に虜になっていました。
もはやボーカルとは言えない低音のつぶやきが入った”Come Together”も、あのリフをそのままありきたりに演奏するのではなく、敢えてリフを弾かないアレンジが素晴らしいです。
“Pilgimage”は曲終盤のドナルド・ハリソンの高音を狙った美しいメロディーラインが涙を誘います…。
もちろんこの3曲以外にも素晴らしい曲が続きます。
世界平和を祈るかのような曲名の5曲目”And The World Weeps”も、5分を過ぎた辺りからコーラス隊が加わり盛り上がっていきます。
まるでドナルド・バードの1964年の名作『A New Perspective』を思わせるようなゴスペル・フィーリングが堪りません。
ここでもドナルド・ハリソンのアルト・サックスが大活躍します。
世界平和を願う人々の哀しみの悲鳴を感じさせるような叫びを演出しています。
7曲目”Tyrone”は、「オルガンのコルトレーン」の異名を持つラリー・ヤングが書いた曲です。
オリジナルではグラント・グリーンがギターを弾いているのですが、こちらではそのフォロワーにあたるピーター・バーンシュタインがギターを弾いています。
収録曲の出来の良さもありますが、本作はなんといってもドナルド・ハリソンの名演が聴き所です。
アルト・サックスが加わるだけで、こうも華やかになるとは…。
文句なしに名作です!
Dr. Lonnie Smith – 『Spiral』
本作からピーター・バーンシュタインの代わり、ギタリストにジョナサン・クライスバーグが参加するようになっています。
ピーター・バーンシュタインの方が、ジョナサン・クライスバーグよりも5歳年上ではありますが、実はリーダー作を出した年代は1年しか変わらないので、そこまで大きなキャリアの違いはないといえます。
本作はそんなジョナサン・クライスバーグを含むオルガン・トリオ編成で制作されたアルバムです。
ジミー・スミスが書いた1曲目”Mellow Mood”は、ジミーとウェス・モンゴメリーの共演で知られたマイナー調の楽曲です。
ロニー・スミスは、この曲が気に入っているのか?ライヴでも良く演奏しているようです。
さっそく登場するジョナサン・クライスバーグの卓越したギターソロは、味わい深いピーター・バーンシュタインとは全く違った演奏です。
どちらかというとシンプルなフレーズを用いてソロを構築していたピーター・バーンシュタインに対して、ジョナサン・クライスバーグのソロはかなりのテクニカルで息つく暇もないほど流麗です。
続く2曲目のバラード”I’ve Never Been In Love Before”は、フランク・レッサーの曲です。
チェット・ベイカーが歌ったことで知られる美しい楽曲です。
本作では少し速いテンポで軽快に演奏しています。
なんといってもロニー・スミスと交代でテーマを弾くジョナサン・クライスバーグの演奏が素晴らしいです。
3曲目”Frame For The Blues”は、スライド・ハンプトンが書いた曲で、メイナード・ファーガソンが1967年にオーケストラを率いた演奏が有名な楽曲です。
メイナード・ファーガソンの派手なバージョンとは打って変わって、ここではしっとりと演奏されています。
4曲目”I Didn’t Know What Time It Was”は、作曲家のリチャード・ロジャースが手がけた1939年のミュージカル『Too Many Girls』の楽曲です。
この曲で聴くことが出来るジョナサン・クライスバーグのファンキーな16ビートのカッティングは、ジャズ・ギタリストにしては珍しい演奏ですね。
ピーター・バーンシュタインのようにジャズ・ギタリストは、こういったファンク・ギター的なカッティングを通常弾かないものなのですが、ジョナサン・クライスバーグは時にワウペダルも使ってファンクを弾いていたりします。
それもジョー・パスと同じフルアコのES-175を使って弾くのですから、なかなか珍しいタイプのジャズ・ギタリストです。
それでいてギターソロを弾かせれば、パット・メセニーばりテクニカルだったりするので、そのテクニックとアイデアの豊富さに驚くばかりです!
5曲目”Sweet and Lovely”も古い時代の曲で、1931年に書かれた曲です。
アルバム・タイトルにもなった6曲目”Spiral”は、ようやく登場したロニー・スミスのオリジナル曲です。
本作の特徴としては、古き良き時代の楽曲をジョナサン・クライスバーグという新しいギタリストを起用して演奏したことが一番になりますが、1曲しかないロニー・スミスのオリジナル曲も捨てたもんじゃありません!
7曲目にハロルド・メイバーンの曲”Beehive”を挟み、アルバムの最後には、なんと坂本九の名曲「上を向いて歩こう」こと”Sukiyaki”が収録されています。
日本の楽曲としては、今のところ唯一アメリカで1位を獲得したのがこの「上を向いて歩こう」という曲です。
「上を向いて歩こう」という日本語が難しかったのか、なぜか海外でリリースされる際に”Sukiyaki”という曲名に変えられてしまったという逸話は有名なところです。
“Sukiyaki”か”Sayonara”のどちらかで迷い、「サヨナラ」ではあまりにも暗すぎるタイトルなので「すき焼き」になったのだとか…。
それにしても歌詞には全く「すき焼き」の要素はないのですがね…。
ロニー・スミスのオリジナル曲がたった1曲なのが残念なアルバムですが、日本人としては”Sukiyaki”の収録は嬉しいところですね。
ジョナサン・クライスバーグのアコースティック演奏も聴くことが出来る名演です♪
Dr. Lonnie Smith – 『The Healer』
2011年から2012年に行われたライヴ音源で構成されたアルバム『The Healer』は、近年のロニー・スミス・バンドがいかに好調かを伝えてくれる良い指標となるアルバムです。
ジョナサン・クライスバーグの幻想的なボリューム奏法から始まる”Backtrack”は、『Too Damn Hot』にも収録されていた近年のロニー・スミスの代表曲のひとつです。
ここではテンポを落としてじっくりと演奏されています。
シンプルなピーター・バーンシュタインのギターソロとは打って変わって、エフェクターも用いたジョナサン・クライスバーグのギターソロは、テクニカルで場内のオーディエンスを一気に沸かせています。
13分17秒と長尺演奏が行われているのですが、曲の終盤にはロニー・スミスのオルガンソロの盛り上がりに合わせて、ジョナサン・クライスバーグが歪ませたワウギターまでも披露しています。
この辺が通常のジャズ・ギタリストとジョナサン・クライスバーグとの大きな違いですね。
ロック・ギター的なワウ奏法も問題なく楽曲に取り入れていたりします。
2曲目”Mellow Mood”は、前作『Spiral』にも収録されていたジミー・スミスの楽曲です。
明らかに本作のライヴ演奏の方が熱がこもっています!
どこかクールで大人しい印象だったスタジオ版の『Spiral』とは熱量が大きく違っています。
やはりロニー・スミスもライヴで輝くジャズ・ミュージシャンなのですね。
3曲目”Dapper Dan”は、名作『Rise Up!』に収録されていたロニー・スミスのオリジナル曲です。
4曲目”Chelsea Bridge”は、ジャズ・ピアニストのビリー・ストレイホーンが1941年に書いたバラード曲です。
5曲目”Beehive”は、前作『Spiral』に収録されていたハロルド・メイバーンの楽曲です。
ここでジョナサン・クライスバーグは、ギターを歪ませワーミーペダルまでも駆使して、まるでマハヴィシュヌ・オーケストラに於けるジョン・マクラフリンかのようなアグレッシヴな演奏を披露しています。
アルバム最後には、名作『Rise Up!』収録の穏やかなバラード曲”Pilgrimage”が収録されてはいるのですが…オリジナルの静けさや一体どこに?と言った具合にジョナサン・クライスバーグが暴れ回ります。
凄まじい演奏ではありますが、スタジオ版のあの静けさがよかったのになぁ…とも感じてしまうはっちゃけっぷりです。
ジョナサン・クライスバーグという新しいギタリストが加入してからの記録をここに示したかのようなライヴ盤です。
Dr. Lonnie Smith – 『In The Beginning 1 & 2』
2012年に録音されたCD2枚組アルバム『In The Beginning』は、過去に録音された曲も含む全編ロニー・スミスのオリジナル曲で構成されたアルバムです。
華やかなホーン隊を加えて新たに録音された”Move Your Hand”や”Turning Point”に”Mama Wailer”、”Psychedelic Pi”や”Call Of The Wild”に”Slouchin'”等の名曲が魅力のアルバムです。
他にも曲が収録されてはいますが、やはりジャズファンク・ファンとしては、先に挙げた6曲が聴き所です。
こうやって聴いてみると、ロニー・スミスはジャズファンクの名曲を数多く書いているのですね。
ロニー・スミスのオリジナル曲を一気に聴いてみたいといった方におすすめアルバムです。
Dr. Lonnie Smith – 『Evolution』
2016年に名門ブルーノート・レコードに復帰してからリリースされたアルバム『Evolution』です。
“Evolution”=「進化」のアルバム・タイトル通りに、新世代のジャズマンをゲストで起用しています。
ロニー・スミスのオリジナル曲の1曲目”Play It Back”でピアノを弾いているのは、今を時めくミュージシャンのひとり、ロバート・グラスパーです。
新時代のハービー・ハンコックといった感触のピアノソロを弾いています。
2曲目”Afrodesia”は、過去のロニー・スミスのオリジナル曲の再演になります。
こちらの曲と次の3曲目”For Heaven’s Sake”にはサックス奏者のジョー・ラバーノが参加しています。
4曲目”Straight No Chaser”は、ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクが書いた有名なジャズ・ブルース曲です。
あのシンプルなテーマ・メロディーも、ジョナサン・クライスバーグがテクニカルに弾くと、なんだかとっても難しい楽曲のように聞こえてくるから不思議です。
5曲目”Talk About This”は、ロニー・スミスのオリジナル曲で新世代のトランペット奏者モーリス・ブラウンが参加した実験色が強い楽曲です。
ここでもジョナサン・クライスバーグがワウペダルを使って、アバンギャルドな演奏を行っています。
6曲目”My Favorite Things”は、ジョン・コルトレーンの代名詞ともなった映画『サウンド・オブ・ミュージック』からの楽曲です。
もはやジャズ・スタンダードだと言っても過言ではありませんね。
ロニー・スミスのオルガンが弾くあのテーマのかっこよさが堪りません!
ここでもジョナサン・クライスバーグがあのテーマを弾くと、何やら難しげな雰囲気が漂ってきます。
定番曲過ぎる選曲なのですが、しかし本作の目玉のひとつとも言える名演です!
最後の7曲目”African Suite”は、ロニー・スミスのオリジナル曲で、ジョー・ダイソンとジョナサン・ブレイクのツイン・ドラム方式でアフリカンなリズムを作り上げています。
そこにジョン・エリスの吹くフルートの音色が、民族音楽風の雰囲気を提供しています。
2010年代を迎えてもロニー・スミスは衰え知らずだと言うことが窺える名作です!
Dr. Lonnie Smith – 『All In My Mind』
宇宙を感じさせるジャケット・デザインが目を引く『All In My Mind』は、NYにあるジャズ・クラブの『ジャズ・スタンダード』で収録されたライヴ・アルバムです。
ウェイン・ショーターの名曲”JuJu”からアルバムは始まります。
ディレイの掛かった奥行きのあるサウンドでギターソロを弾くジョナサン・クライスバーグの演奏が目立ちます。
ドラムを務めるのはジョナサン・ブレイクです。
この2人、ファースト・ネームが同じジョナサンなのですが、ジョナサン・クライスバーグの方は”Jonathan”で、ジョナサン・ブレイクの方は”Johnathan”と間に”h“が入っています。
まぁその違いは英語圏でない僕たち日本人にとっては、ほぼ変わりのないものではありますが…。
美しいバラード曲の2曲目”Devika”は、サックス奏者デイヴ・ハバードの楽曲です。
ここでドラムがジョー・ダイソンに代わって「恋人と別れる50の方法」の邦題で知られるポール・サイモンの1975年作品”50 Ways To Leave Your Lover”のカヴァーが披露されています。
テーマ演奏やオクターバーを使った派手なギターソロなど、ジョナサン・クライスバーグが大活躍しています。
4曲目”On A Misty Night”は、ピアノ奏者タッド・ダメロン作の穏やかなバラード曲です。
ここでようやくロニー・スミスのオリジナル曲”Alhambra”が登場します。
スペインのアルハンブラ宮殿をイメージしたかのようなエキゾチックな楽曲です。
次もロニー・スミスのオリジナル曲”All In My Mind”が続きます。
女性シンガーのアリシア・オラトゥヤを起用してロニー・スミスがデュエットのように一緒に歌っています。
この曲をアルバムのタイトルに付けたのも、やはりロニー・スミスがこの曲を一番聴かせたかったからなのでしょうね。
アルバム最後は、フレディ・ハバードの曲”Up Jumped Spring”で軽快に締められています。
年を重ねても衰え知らずのロニー・スミスのライヴ演奏を聞くことが出来る好盤ですね。
しかしライヴ盤で先に聴くべきは、やはり『The Healer』の方だと言えます。
勢いのある『The Healer』を聴いた後に、落ち着いた本作を聴いてみるといいかもしれません。
以上、【90年代以降のドクター・ロニー・スミスのジャズファンクおすすめ盤まとめ】でした。
オマケ?
実は2000年に、同じくオルガン奏者のジミー・マクグリフと共演した『McGriff’s House Party』というアルバムもあります。
2008年に亡くなったジミー・マクグリフと今も現役のロニー・スミスがこういった共演作を残してくれていたのは、喜ばしいことですね。
ちなみに若き頃のサックス奏者エリック・アレキサンダーも参加しています。
ギターにはロドニー・ジョーンズ、ドラムにはバーナード・パーディといった豪華な面子での楽しいセッションアルバムなので、オルガン・ジャズ好きは要チェックです!
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