
2019/03/12
エアロスミス初のブルース・アルバム『Honkin’ On Bobo』を聴こう♪
エアロスミス初のブルース・アルバム『Honkin’ On Bobo』をご紹介します。
ブリティッシュ・ロックからの影響濃いエアロ流ブルース・アルバム♪
エアロスミスがブルース・アルバムをリリースするという噂が流れたのは、確か2003年の『ブルース生誕100周年』の頃だったと記憶しています。(正確にはブルースが録音されてから100年)
当時の音楽シーンは、『ブルース生誕100周年』にあやかってブルース系の曲を作ったりカヴァーしたりするバンドが多かった気がします⁉
このブログでも以前取り上げていたエリック・クラプトンの方は、それよりも10年近く前に本格的ブルース・アルバムの『From the Cradle』を制作していました。
エリック・クラプトンが本格的にブルースに挑んだ!初のブルース・アルバム『From the Cradle』を聴こう♪
さすがにクラプトンはブルース・アルバムを制作する時期が他のミュージシャンよりも早かったですね。
『ブルース生誕100周年』の次の年の2004年には、ロバート・ジョンソンのトリビュート作品なんかもリリースしていました。
さて、エアロスミスも本来なら『Get A Grip』をリリースした後に一度ブルース・アルバムを制作する予定だったようですが(?)結局『ブルース生誕100周年』が盛り上がっていた2003年になってから本格的に制作を開始したようです。
英国ブルース・ロックのフィルターを通したブルース・アルバム
しかし、子供の頃からブルースを聴いて育ったエリック・クラプトンと違い、あくまでもエアロスミスのブルースは、「白人ミュージシャンが演奏したブルース・ロック」を通してのブルースでした。
おかしな話なんですが、そもそもブルースが生まれたのはアメリカです。
アメリカ大陸に黒人奴隷として強制的に連れてこられた黒人達の子孫が作った音楽です。
そのアメリカの黒人音楽である「ブルース」は、本土のアメリカよりも遠く離れたイギリスのロック・ミュージシャンの方が先に正当に評価するようになりました。
その原因のひとつは、まだ人種差別が酷かったアメリカでは白人はカントリーのような自分たちの音楽の方を重要視していたからでしょう。
そういった人種に対する偏見がアメリカよりも薄かったイギリスの若手ミュージシャン達は、すんなりと「ブルース」を聴くようになったようです。
そして「ブルース」から影響を受けたエリック・クラプトンやジョン・レノンにミック・ジャガーやジミー・ペイジなどが「ブルース」の要素を持ったロック・バンドを結成して60年代に大きなムーヴメントを作り出します!
そのムーヴメントがアメリカに逆輸入される形で入ってきます。
クラプトンやミック・ジャガーなんかよりも少し年下の世代のエアロスミスのメンバー達は、自国のブルース・ミュージシャンを聴いて育ったというよりも、むしろクリームやローリング・ストーンズにヤードバーズなんかから「ブルース」を間接的に教わった形になります。
特にスティーヴンとジョー・ペリーは、ヤードバーズや、初期のブルース・ロック・バンドだった頃のフリート・ウッドマックに、ヴァン・モリソンがボーカルを務めたアイルランドのロック・バンドのゼム、そして英国のガレージ・ロック・バンドのプリティ・シングスなどから大きな影響を受けているようです。
なので、本作『Honkin’ On Bobo』収録のブルース曲にしても、クラプトンの『From the Cradle』のように本格的な黒人ブルースを演奏したというよりも……フリート・ウッドマックやプリティ・シングスから学んだブルース・ロックを演奏したといった感触です。
このことからエアロスミスの演奏するブルースは、「英国白人ミュージシャンのフィルターを通したブルース」だと言えます。
ただ、だからと言って「非ブルース的で良くない作品」かと言えば、そんなことはありません。
そういった良い意味での「にわか」さが、エアロスミスらしくって僕は好きです♪
クラプトンの『From the Cradle』は、クラプトンのブルースに対する熱い想いが伝わってくる力作でしたが、想いが重すぎて気軽に聴くのにあまり向いていない気がします⁉
しかしこのエアロスミスの『Honkin’ On Bobo』は、相変わらずのゴージャスで派手なアレンジに、エアロスミスらしい「気軽さ」が合わさっているので、とても聴きやすい作品に仕上がっています。
「ブルース・アルバムか~…なんか渋い曲ばかり収録されていそうだなぁ~。」と、もしかしたら普段あまりブルースを聴かない方なら思うかもしれません⁉
でも、エアロスミスの演奏するブルースは、底抜けに明るいのでそんな心配はありません!
普段通りに気軽に聴ける雰囲気の良さがこの『Honkin’ On Bobo』には存在しています。
なので、朝の通勤時なんかに『Honkin’ On Bobo』を聴いて「やる気」を出すのにも使えます!
それでは、そんな聴きやすいエアロスミス初のブルース・アルバム『Honkin’ On Bobo』をご紹介したいと思います。
HOHNER(ホーナー)のミニ・ハーモニカがオマケで付いた完全生産限定盤♪
さて、いつものアルバムご紹介に進む前に『Honkin’ On Bobo』が発売された当時に完全生産限定盤といて発売されたバージョンをご紹介します。
こちらの完全生産限定盤には、DVDサイズの縦長の箱に通常盤と同じCDが封入されています。
そして本バージョンの目玉はなんといってもスティーヴンが使っているハーモニカを模した『Honkin’ On Bobo』のアルバム・ジャケットと同じデザインのミニ・ハーモニカがオマケで封入されていることです!
ドイツの楽器メーカーのHOHNER(ホーナー)社製のミニ・ハーモニカです。
なんと、このミニ・ハーモニカは実際に演奏することも出来るみたいです!
僕はブルース・ハープの演奏が出来ないので、購入してから一度も中身を出したことがありません。
でも気になる方は、今でもこの完全生産限定盤は購入できるようですので、ぜひチェックしてみて下さい♪
Aerosmith – 『Honkin’ On Bobo』
01.Road Runner
02.Shame, Shame, Shame
03.Eyesight To The Blind
04.Baby, Please Don’t Go
05.Never Loved A Girl
06.Back Back Train
07.You Gotta Move
08.The Grind
09.I’m Ready
10.Temperature
11.Stop Messin’ Around
12.Jesus Is On The Main Line
– Japanese Bonus Track –
13.Jaded
アルバムのデザイン
アルバムのジャケットは、表面はスティーヴンの使っているハーモニカを模したものです。
艶めかしい口紅が付いているところがエアロスミスらしくて良いですね♪
そのジャケットの裏側もセクシーな女性のジーンズにスティーヴンのハーモニカが刺さったエアロスミスらしいジャケです。
このデザインは、ジェームス・コットンの1976年のライヴ盤『Live & On The Move』に似ていますね。
ライナー・ノーツには、エアロスミスの各メンバーの写真が掲載されています。
それではアルバムの中身もご紹介していきたいと思います。
アルバムの内容
まず1曲目にスティーヴンの”Ladies and gentlemen step right up. Let’s go see the elephant!(紳士淑女の諸君、集まるんだ!どうなるか、見せてやるぜ!)”というMCから始まるのはボ・ディドリーの名曲”Road Runner”です。
“see the elephant”というのは、スラング的な言い方で、「(様々な人生経験を通して)世の中を知る」の意味になります。
19世紀末にイギリスからアメリカに象が贈られるのですが、当時のアメリカ人のほとんどは「象」を見たことがありませんでした。
ほぼ空想上の生き物だと考えられていた「象」という動物を見ているということから、「人生経験が豊か」だという意味合いが出来ました。
おそらくスティーヴンがここで言いたいのは、「これからエアロスミス流のブルースを初めて聴くみんな、さぁどんな感じか聴いてみてくれよな!」と言ったことでしょうか。
ちなみにこの表現に色が付いちゃうと…
“see pink elephant”で「酒に酔う」や「幻覚を見る」の意味になります。
“see white elephant”だと「無用の長物」という意味になります。
ピンクの象なんてありえないようなサイケデリックな物が見えたとしたら、それはきっと幻覚でしょうからね。
逆に白い象というのは、その象を飼育するのに莫大なお金が掛かると考えられています。
そんな経費の掛かるもの…ない方が良いですからね。
と、色々と「象」を使った言い回しで面白い表現があったりします。
さて、今回ご紹介したいのは「象」の話じゃなくって…本題に戻りますと…
1曲目の”Road Runner”は、”House Of The Rising Sun(朝日のあたる家)“で有名な英国のロック・バンドのアニマルズがカヴァーした曲です。
その影響も多少あるとは思いますが、多分スティーヴンは前々からインタビューなどでプリティ・シングスからの影響を公言していたのでそちらの影響の方が大きいんじゃないかな?と感じます。
本作のバージョンも、本家のボ・ディドリーやアニマルズというよりもプリティ・シングスに近いアレンジでカヴァーしているからです。
ちなみにプリティ・シングスのバージョンは、1965年の1stアルバム『The Pretty Things』の1曲目に収録されていました。
エアロスミスのブルース・アルバムの始まりは、いかにもエアロスミスらしい【英国ブルース・ロックのフィルターを通したブルース曲】から始まりました!
しかし1曲目からエンジンは全開です!
各楽器陣のちょっとしたソロパートも含みながら、スティーヴンのパワフルなボーカルが炸裂します!
スティーヴンの”Guitar Soloooo!”という号令と共に、ジョーのギターソロが始まります!
深めのリヴァーヴとディレイ混じりの音が反響するようなサウンドで、シンプルなチョーキング連発フレーズを弾き始めます!
しかし「ギターソロ!」と紹介されておきながら、大したフレーズは弾かないっていう。
でもこれぐらいシンプルな方がエアロスミスらしくって良いのかもしれません♪
ちなみに本作のジョーとブラッドの2本のギターの聴き比べ方は…
右チャンネルから聴こえてくる派手目のギターがジョーです。
逆に左チャンネルの方で、少し地味だけれどもしっかりとリズムキープをして弾いている方がブラッドです。
どうしてもライヴなんかで豪快にギターソロを弾いている派手な見た目でジョーばかり目立ちますが、タイム感はブラッドの方が上です。
ジョーは、勢いあまってちょくちょくハシります。
本作収録曲の”You Gotta Move”でも聴けるのですが、ブラッドと比べてジョーの弾くリズムギターは少し雑なんです。
またチョーキングに関しても、しっかりと持ち上がるブラッドに対して、ジョーのチョーキングはあいまいな音程にしか持ち上がりません。
単純なギター・テクニックに関しては、ジョー自身も『ジョー・ペリー自伝~エアロスミスと俺の人生~』の自伝で認めていたようにブラッドの方が上です。
しかしブラッドのギターソロは、型にハマっているというか、ちょっと面白みに欠けるんです。
それに対してジョーの方は、リズム感が甘いこともありますが、フレージングが奇抜だったり、酔っ払って弾いているかのような急下降するスリリングなフレージングだったり、聴いていて「おっ!今のは面白いな~♪」と感じる部分があります。
なので、この2人のコンビネーションってすごく上手くいっていると思います。
派手だけどリズムが甘いジョーがメインでソロパートを弾き、しっかり弾くけどありきたりなギターソロになりがちなブラッドがリズムギターでバンドを支える…みたいな感じですね。
たまに”Last Child”等の曲でブラッドがソロを弾いている時なんかに、ジョーのリズムギターがすごくイマイチなことがあったりするのもエアロスミスのライヴを聴く面白みでもあります。
「おっ!ブラッドってこんなにしっかりとギターソロ弾けたんだ!」と感じつつも「なんか面白みに欠けるよね…そろそろジョーと交代した方がいいかも?」ってなるのも面白いところです。
長くなりましたが、次の2曲目”Shame, Shame, Shame”へ行きましょう!
この曲は、スマイリー・ルイスが1956年に発表したジャンプ・ナンバーです。
イントロを弾くのはジョーで、リズムギターで楽曲を支えているのがブラッドです。
またギターソロ部分で、ジョーの特徴でもある急降下するスリリングなフレーズも聴けます!
この曲では、連続で弦をプリングしながら急下降するフレーズを弾いています。
更に曲の終盤で「ギュワイン♪ギュワイン♪」とグリッサンドを入れているのもジョーです。
こういった派手な演奏こそがジョーの魅力だと言えます♪
ちなみに以前このブログでもご紹介していた【ギター・マガジン2004年5月号】にこの曲のギター・スコアが掲載されていますので、要チェックです!
次の3曲目”Eyesight To The Blind”は、ハーモニカ奏者のサニー・ボーイ・ウィリアムソン二世(ライス・ミラーの方)が1951年に発表した曲です。
B.B.キングのカヴァーでも有名な曲です。
ロック界では、ザ・フーにエリック・クラプトンやマイク・ブルームフィールドにグレイトフル・デッドなど数多くのミュージシャンがカヴァーしています。
ジョーのチョーキング連発のイントロに乗せてスティーヴンの”Well, well, well, well!”のセリフと共に始まります。
ブラッドは小さめの音量でアコースティック・ギターのバッキングを弾いています。
個人的にはこのエアロスミスの「聴きやすい」アレンジが好きだったりもします。
エアロスミスって、こういった難しいこと抜きにした「わかりやすさ」が良いんですよね♪
スティーヴンのハーモニカ・ソロも聴ける楽曲です♪
4曲目”Baby, Please Don’t Go”は、ビッグ・ジョー・ウィリアムスが1935年に発表した曲です。
マディ・ウォーターズを始めビッグ・ビル・ブルーンジーにライトニン・ホプキンスやジョン・リー・フッカーなど数多くのブルースマンが取り上げた曲です。
しかしエアロスミスは、おそらくアイルランドのロック・バンドのゼムがカヴァーしていたブリティッシュ・ロック・バージョンを参考にしたんじゃないかな~?と予想します。
というのも、曲のアレンジもそうですが、ヴァン・モリソン風のスティーヴンの歌い方にジョーの激しくグリッサンドするギターのフレーズや、ブルースっぽくないロックなリズムなど、ゼムっぽさが表れているからです。
ちなみに”Baby, Please Don’t Go”は、本作からのリード・トラックとなり、MVも制作されています。
『Honkin’ On Bobo』のツアー以降は、本作からの曲で唯一”Baby, Please Don’t Go”だけが長らくセットリストに居座り続けていました。(最近はもう演奏していないようですが…。)
深めのリヴァーヴとディレイをかけた派手なジョーのギターも聴きどころです♪
5曲目”Never Loved A Girl”は、そもそもブルースの曲ではありません。
アレサ・フランクリンが1967年歌った”I Never Loved a Man (The Way I Love You)”が原曲のソウル曲です。
ブルース・アルバムなのに、普通にR&Bの曲もやっちゃうっていう…。
クラプトンなら絶対にありえませんが、エアロスミスだからこそ、こういった「にわか」なところが逆に魅力的だったりします。
おそらくテレキャスターを使ったと思われるジョーのギターのイントロから始まります。
スティーヴンがアレサ・フランクリンを好きだったから選んだのかな?と言った感じではありますが、他の楽曲と比べるとやはり「なんでカヴァーした?他にもやるべきブルース曲はあるでしょ!」と言いたくなる仕上がりです。
ちなみにホーン隊には、オーティス・レディングやサム&デイヴのバックも務めたメンフィス・ホーンズが参加しています。
まぁ前の曲のかっこいいけど激しかった”Baby, Please Don’t Go”と、次の曲の渋い”Back Back Train”の間にある箸休めということで…。
6曲目の”Back Back Train”は、ジョーが歌う「ジョー・ペリー・コーナー」ですが、本作のジョーの歌う曲は見逃せません!
以前このブログでもご紹介していたミシシッピ・フレッド・マクダウエルの1966年の作品『Amazing Grace』に収録されていた渋い曲です!
【悪魔のビートが炸裂⁉】ミシシッピ・フレッド・マクダウエル1960年代のおすすめの3選!
ゴスペルとブルース…「聖と俗」が混じった渋いブルースです。
曲が始まると、ジョーのスライドギターとスティーヴンのハーモニカが怪しい雰囲気を醸し出します!
まるでミシシッピにある泥沼(マディ・ウォーター)にハマって抜け出せなくなるかのような怪しさです!
ジョーのボーカルだけでなく、女性シンガーのトレーシー・ボーナムがゲストで参加してコーラスを付け加えています。
皮肉にも、スティーヴンの歌う曲ではなく、このジョーが歌う”Back Back Train”が本作収録曲で「一番ブルース」している!っていう。
そんなところまでエアロスミスらしいです。
7曲目の”You Gotta Move”は、ローリング・ストーンズもカヴァーした楽曲で、先ほどと同じくミシシッピ・フレッド・マクダウエルの曲です。
本作ではエアロスミス流のアレンジが施されています。
それは斬新なボ・ディドリー風のジャングル・ビートのアレンジです!
何故か当時の来日公演などのライヴではこの曲は演奏されませんでしたが、ジャングル・ビートの斬新なアレンジはエアロスミスらしくってすごく良かったのにな~もったいない…といった感じです。
ジョーの2回登場するスライドギターのソロもかっこいいです♪
曲が進んで、2分48秒辺り一旦ブレイクを入れて、そこからブラッドのリードギターに交代します。
そして3分47秒辺りからジョーのリズムギターが加わります。
曲の前後半で、ジョーとブラッドがリードギターを交代します。
前半はブラッドが「ジャッジャッジャ♪ジャァ~~ジャ♪」という具合に跳ねて弾いていたビートが、ジョーに代わると「ジャッジャ♪ジャージャ♪」とのっぺりしたリズムに変わっています。
ジョーのリズムギターは、ちょくちょくイマイチなんですよね。
そして曲の終盤、4分29秒から始まる豪快なギターソロはブラッドによるものです!
4分53秒で聴けるような、しっかりと1音以上持ち上がったチョーキングがブラッドの特徴です。
これがジョーだと、フニャッとしているんです。
プレイスタイルが似ているようで実はこういった違いがある…エアロスミスの2人のギタリストの聴き比べでした。
ちなみに2005年にこの時期のツアーを収録したドキュメンタリー風のライヴ映像作品『ユー・ガッタ・ムーヴ』も発売されています。
このDVDのアルバム・タイトルにも”You Gotta Move”が使われているのに、この曲は収録されていないっていう。
“Never Loved A Girl”を収録するぐらいなら”You Gotta Move”をやって欲しかったな~と思います。
更にこのDVDには、特典映像で『Honkin’ On Bobo』制作時のスタジオ・メイキング映像も収録されています。
これがすごく面白いので要チェックですよ♪
次の8曲目”The Grind”は、本作唯一のエアロスミスのオリジナル曲です。
作曲者クレジットにはスティーヴンとジョーの他に共作者のマーティ・フレデリクセンしか記載されていませんが、確かスティーヴンの自伝か何かのインタビューでブラッドの力を借りて書いた曲だったとかなんとか…。
そのためかブラッドの弾くリズムギターが「ジャッカ♪ジャッカ♪ジャッカ♪ジャッカ♪」と目立つ曲調です。
ポップになりすぎた2000年代のエアロスミスにしては、渋めのブルース・ロック曲です。
ちなみにこの曲でピアノを弾いているのは、スティーヴン自身です。
次の9曲目”I’m Ready”は、ウィリー・ディクソンが書いた1954年の曲です。
マディ・ウォーターズの看板曲としても有名な曲です。
ジョーの弾くスライドギターのフィードバック音から始まります。
不穏な雰囲気のブラッドのワウを使ったリズムギターも最高です♪
スティーヴンも1987年の『Permanent Vacation』に収録されていた”Hangman Jury”の時のように怪しい雰囲気で歌います♪
スティーヴンのハーモニカソロを挟んで、最後にブラッドのワウが微妙にかかった状態のギターソロで締められます。
ジョーは、スライドギターでかなり自由にバッキングを弾いています。
10曲目”Temperature”は、ブルース・ハープのアンプリファイド奏法を有名にしたリトル・ウォルターの曲です。
なんとこの曲のピアノには、チャック・ベリーのサイドマンで有名なジョニー・ジョンソンが参加しています!
リトル・ウォルターの曲ということもあってか、2人のギタリストはバッキングに徹してスティーヴンのハーモニカ・ソロのみです。
11曲目”Stop Messin’ Around”は、またしても「ジョー・ペリー・コーナー」です!
しかも本作が発売されるよりも10年以上も前からライヴで演奏していたフリート・ウッドマックの1968年の曲です。
この曲とジミヘンの”Red House”が、当時のエアロスミスのライヴでの「ジョー・ペリー・コーナー」の定番でした。
この2曲のどちらかが「ジョー・ペリー・コーナー」としてアルバムに収録されるのかも⁉︎ということは、なんとなく発売前から予想していました。
そしてついに満を持して”Stop Messin’ Around”のスタジオ・バージョンがついに発表されました!
もちろん長年ライヴで温めてきた楽曲なので、出来も最高です!
曲が始まると、ジョーのギターのイントロに合わせてスティーヴンのハーモニカもユニゾンでテーマを吹き始めます。
ぶっきらぼうだけど、ロックな佇まいで歌うジョーのボーカルは、この曲にピッタリの雰囲気です!
最初にギターソロを弾くのはジョーです。
大き目のオーバードライヴ・サウンドで豪快にギターソロを弾きます!
ジョーのソロの後に一旦歌を挟み、次にギターソロを弾くのはブラッドです。
ブラッドのギターソロの前にジョーが”Come on Brad, let’s go!(さぁブラッド、思いっきりギターソロを弾いてくれ!)“と促します!
まるでライヴ演奏を聴いているような感じですね♪
少し薄めのワウがかかったようなサウンドですね。
ブラッドが2周ギターソロを弾き終わると、スティーヴンのハーモニカ・ソロが始まります。
ハーモニカを吹きつつスキャットも挟むスティーヴンのテクニックに脱帽です!
ハーモニカ・ソロが1周過ぎた頃にジョーが、”Come on Steven, one more time!(いいぞ、スティーヴン!もう1周吹いてくれ!)“と声を掛けます。
ジョーに促され、スティーヴンも2周ハーモニカ・ソロを吹きます。
再び歌を挟み、最後はジョーが豪快なロック調のギター・ソロを弾いて締めくくります!
本作の「ジョー・ペリー・コーナー」の2曲は気合の入り方が違います!
本編最後の12曲目”Jesus Is On The Main Line”は、またしてもミシシッピ・フレッド・マクダウエルの1966年の作品『Amazing Grace』からの選曲です。
確かジョーが、本作を制作前にこのアルバムをよく聴いていたらしいです。
この曲でアコースティック・ギターを弾いているのはベースのトム・ハミルトンです。
ジョーはリゾネーター・ギターを使ってスライドギターを弾いています。
スティーヴンのボーカル以外にもトムやジョーイに、スティーヴンの娘の三女にあたるチェルシー・タイラーなんかがコーラスを歌っています。
ブルース・アルバムの最後の締めに打ってつけの曲ですね♪
…と、本編はここで終了なのですが日本盤のアルバムにはボーナス・トラックとして前作『Just Push Play』収録の全米No.7を記録した大ヒット曲”Jaded”が収録されています。
当時この曲が日本のコカ・コーラのCMに起用されていたからなんですが、こういうのを「蛇足」っていうんですよね。
せっかく”Jesus Is On The Main Line”で綺麗に終わっていたのに…といった感じです。
なので、アルバムの中身の方は輸入盤の方が綺麗に終わります。
以上、【エアロスミス初のブルース・アルバム『Honkin’ On Bobo』を聴こう♪】でした。
アメリカを代表するロック・バンドのエアロスミスが、最もアメリカらしい音楽ジャンルの「ブルース」をカヴァーしたのに、なぜか英国のフィルターを通して出来上がったブルース・ロック・アルバムです。
皮肉にも英国人のエリック・クラプトンの方が本格的なブルース・アルバムを制作していました。
まじめだけども気難しそうな英国人が本格的なブルース・アルバムを作り…
いい加減そうだけれどもフレンドリーな米国人が誰しもが聴きやすい様なブルース・アルバムを作った…という、なんとなくステレオ・タイプな国民性が表れたような両者のブルース・アルバムだとも感じます。
どちらかって言うと、僕はこのエアロスミス流の「楽しいブルース・アルバム」の方が好きです♪
楽しく聴けるのであれば「にわか」でもいいんですよ♪
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