
2018/10/11
インド音楽とサイケデリックロックが混じったクーラ・シェイカーの1stアルバム『K』を聴こう♪
90年代UKロック界に突如現れた異色のバンド、クーラ・シェイカー
90年代UKロック界に突如としてインド音楽と60年代風サイケデリックロックが混じったバンドが登場しました。
イケメン・フロントマンのボーカル/ギターを担当するクリスピアン・ミルズを中心とする4人組のロックバンドのクーラ・シェイカーです。
クリスピアン・ミルズ以外のメンバーは、キーボードのジェイ・ダーリントン、ベーシストのアロンザ・ベヴァン、ドラムのポール・ウィンターハートです。
基本はクリスピアンを中心とする歌ものギターバンドなのですが、リズム隊の上手さが際立ったバンドだと思います。
特にベーシストのアロンザのテクニックは間違いなく一級品です!
さて、そんなクーラ・シェイカーは90年代にたった2枚のアルバムをリリースしただけであっけなく解散してしまいました。
その後は約10年間ほど各々別の音楽活動を続けていました。
その中でもクリスピアンは、ザ・ジーヴァズというバンドを組んで話題にこそなりましたが売り上げが振るわず2004年には解散してしまいます。
そしてデビュー作のリリースからちょうど10年経った2006年になり再結成して今に至ります。
今回はそのデビュー作である1996年の作品『K』についてご紹介します。
Kula Shaker – 『K』
01.Hey Dude
02.Knight On The Town
03.Temple Of Everlasting Light
04.Govinda
05.Smart Dogs
06.Magic Theatre
07.Into The Deep
08.Sleeping Jiva
09.Tattva
10.Grateful When You’re Dead / Jerry Was There
11.303
12.Start All Over
13.Hollow Man (Parts 1 & 2)
14.Ragey One
デビュー作にして最高傑作!
この作品からクーラ・シェイカーの歴史が始まります。
そしてこの作品が最高峰です!
まずは1曲目の”Hey Dude”のインパクトがデカいです!
アロンザのウネるベースラインにポールの跳ねるドラミング……そしてクリスピアンがギターのネックを徐々にスライドバーで上がっていきます。
上がりきったところでスライドバーを捨て、ワウペダルをONにします。
そして「ワカチョコワカチョコ♪」とパーカッシヴなブラッシングをこれでもか!とかまします。
僕が初めてこの曲を聴いたとき「ワウペダルってかっこいい!」と思ったのは良い思い出です。(笑)
これがきっかけで僕はワウギターを始めました。
そしてワウのブラッシングが終わると、すぐにワウをOFFにして16分のカッティングに移ります。
カッティングの途中でハーモナイズド・チョーキングを1拍辺り1回ずつ=1小節で4回繰り返します。
この派手なイントロからテーマこそ、この”Hey Dude”という曲の一番の魅力です!
あまりにかっこいいイントロが終わるとクリスピアンの怪しい歌が始まります。
イントロを聴いて「ギターがすごい!」と思うも、歌が始まると実は普通に8ビートでコード弾きをしているだけだったりします。(笑)
まぁ歌いながらギターを弾かないといけないので、これは仕方ないことですが……。
クリスピアンの特徴として、この曲のように歌ってない部分ではギターが派手ですが、歌っている最中は拍の頭の部分しかギターを弾いてなかったりします。
それでも「実は大して弾いてないのに、何かかっこいい!」と思わせる曲作りの上手さを感じます。
特に先ほども出てきましたが派手なハーモナイズド・チョーキングをオブリガートで弾いたり、3連のラン奏法でサウンドに厚みを出したりしています。
例えば、”Hey Dude”のギターソロは派手にギターが歪んでいるのでもの凄くかっこよく聞えます。
しかしよ~く聴いてみると……同じ3連のラン奏法のフレーズをオクターブ違いのポジションで弾いてかっこよく聞えるようにしているだけで、実はそんなに難しいことは弾いてなかったりします。
ちょこっとギターが弾ける人なら、すぐにわかると思うのですがギターソロは至ってシンプルなマイナーペンタトニック中心で構成されていたりします。
それを派手に弾くことで「実は大して弾いてないのに、何かかっこいい!」と思わせるテクニックに長けている!と言ったとこです。
って、別に馬鹿にしてるわけじゃなくって、シンプルなアイデアでもかっこよく聴かせれる魅力がありますよ!ってことです。(笑)
もちろんが派手でかっこよく聞えるのは、クリスピアンの巧みなボーカルと上手い具合にフレーズを配置したギターのお陰であることは間違いありません。
本当にかっこいい曲です。
そんなクリスピアンが、「実は大して弾いてないのに、何かかっこいい!」ギターを弾いているバックではアロンザのベースが動きまくってます!
まるでクリーム時代のエリック・クラプトンが”Crossroads”を演奏しているバックで、ギター顔負けのベースソロを弾いているジャック・ブルースみたいです!
UKロック組は、ギタリスト顔負けのベースを弾く人が多いのでしょうか?負けず嫌いのベーシストの宝庫??(笑)
クリスピアンのギターは……まぁまぁですが、アロンザのベースは本当に上手いです!
ちなみにこの”Hey Dude”は、ライヴの最初に演奏されることが多いです。
ライヴでも1曲目から勢いある曲で始めています。
次の2曲目”Knight On The Town”も派手なギターのイントロで始まるかっこいいロックソングです!
インド風味のサイケデリックバンドと紹介されることが多いバンドですが、ここまでの2曲は全くインドの要素はないです。(笑)
普通にジミ・ヘンドリックスやドアーズなんかから影響を受けたロックバンドって感じです。
クリスピアンのギターもジミヘンを模倣してはいますが、ギターソロは大体パターンが決まっていたりします。
この2曲目も、まずはリズムカッティングで始まって3連のラン奏法のフレーズをオクターブ違いのポジションで弾いてチョーキングでゴマかして終わりです。
ほぼ”Hey Dude”のギターソロと同じパターンです。
また最後のサビ終わりでは、必殺のハーモナイズド・チョーキングでオブリガートを入れます。
これもクリスピアンのよく弾くパターンです。
しかしこの”Knight On The Town”も曲のかっこよさは一級品です!
若い頃にこの演奏を聴いた僕は「ギタープレイはワンパターンでも曲のこんなにもかっこいい曲が演奏できるんだな!」ということを学びました。
頭2曲が異様にかっこいいのがこの『K』の魅力でもあります。
やはり最初の曲が勢いがあってかっこよくないと「このアルバムをまた聴きたい!」とはなりませんからね……。
そして3曲目からようやくインド風味が垣間見えてきます。
“Temple Of Everlasting Light”は、エスニックなアコギのイントロから始まり、インド音楽には欠かせないタブラを叩く音が聴こえてきます。
そしてなんとも魅力的な歌声でクリスピアンが歌い始めます。
ギターはワンパターンですが、歌い方は色々と対応できるんだなって。
コーラス部分ではタブラのリズムが聴こえてきますが、サビ部分では普通の8ビートになります。
これもクーラ・シェイカーのお決まりのパターンですね。(笑)
サビの部分が割と普通のロックだったりします。
続く4曲目の”Govinda”は、曲名からしてインド風味です。
「Govinda(ゴビンダ)」とは、「クリシュナ神の別名のひとつ」とされています。
曲の始まりこそインド音楽のような女性コーラスが登場しますが、曲が始まると普通に8ビートのロックになります。
この辺は、60年代にインド音楽の影響を受けたビートルズやレッド・ツェッペリンのようでもありますね。
あくまで「インド風味」であって、本格的な「インド音楽」を演奏するわけではありません。
ロックのサウンドにインドのスパイスを混ぜてカレーライスが出来上がった!って感じです。
ナンやチャパティーは出てきません。
飲み物もチャイではなくって、普通に氷の入った水なんです。
でも、本格的に「インド音楽」を演奏していたら、多分こんなにも世界的には売れてなかったでしょうからね。
ちなみにこの曲”Govinda”は、クーラ・シェイカーの代表曲の一つで、ライヴでは大体最後らへんに演奏される重要曲となっています。
5曲目の”Smart Dogs”からまた普通のロックに戻ります。
思いっきりジミヘンやクリームから影響を受けたであろうギターリフから曲が始まります。
歌メロもジミヘンやクリームぽかったりします。
90年代のUKロックシーンでは、こういった60年代風のギターリフで曲を始めるバンドって他にいなかったので逆に新鮮でした。
もちろんこの曲でもサビ部分のオブリガートにお得意の3連フレーズが出てきたり、ハーモナイズド・チョーキングが出てくるのもお決まりの曲調です。
しかしこの時代のクーラ・シェイカーには、どの曲にも勢いがありました!
6曲目の”Magic Theatre”は、7曲目の”Into The Deep”への繋ぎです。
その”Into The Deep”もビートルズのホワイトアルバムとかに入ってそうなサイケロック調の曲です。
どこか浮遊感のある不思議でポップな歌メロが聴いていて心地よいです♪
8曲目”Sleeping Jiva”でインド風味のご登場です。
シタールの音色が鳴り響きます。
この曲も9曲目の重要曲”Tattva”への繋ぎです。
“Tattva”もクーラ・シェイカーを代表する曲の一つです。
“Govinda”と同じようなインド風味のロックソングです。
ちなみに「Tattva(タットワ)」とは、サンスクリット語で「真理」を表します。
この曲では、ギターソロ中にちょっとだけスライドギターが登場します。
ほんのちょっとですが……。
10曲目”Grateful When You’re Dead / Jerry Was There”は、”Hey Dude”と同じぐらいかっこいいロック曲です。
ギターのイントロが、どことなくジミヘンの”Purple Haze”を意識しているようでもあります。
この曲でもワウの「ワカチョコワカチョコ♪」が聴こえますが、あくまでオブリガートんぽ部分だけで、実は歌っている時はギターを弾いていなかったりします!
そこはリズム隊の上手さでゴマかせるんです。(笑)
このバンドは、ベースがすごく上手いのでギターが鳴っていない部分でもスカスカにならずに聴けせることが出来ています。
アロンザ様様ですね!(笑)
ギターソロは、いつもの”Hey Dude”方式です。
今回はハーモナイズド・チョーキングをオクターブ違いで弾いたりしています。
実際は本当にシンプルなことしか弾いていないのですが、すごく派手なので「めちゃくちゃかっこいいギター弾いてる!」と勘違いしてしまいます。(笑)
本当に簡単なことしか弾いてはいません。
でもかっこいいのは事実ですね!(笑)
この曲もライヴの定番曲です。
“Grateful When You’re Dead”が終わると”Jerry Was There”というミドルテンポの曲にメドレーで移ります。
これはライヴでも同じようにメドレーで演奏されています。
11曲目の”303″ではイントロからワウギターのリフが鳴り響きます!
この感じ……もうまるままジミヘンです!(笑)
ジミヘンの『Axis: Bold As Love』に入っていてもおかしくないような曲調です!
この辺で「あれ?インド風味は?」と思い出してしまいます。(笑)
通常はサイケデリック色の濃いロックバンドなんですね。
デビュー前にクリスピアンが10週間のインド旅行を経験したことで、インド文化にハマりバンドにインド風味を付け加えました。
しかしたった10週間で深いインド思想を身に着けるなんて無理にもほどがあります。
なので付け焼き刃の知識でなんとかインド風味の曲が数曲存在している程度なんです。
というわけで、この次の12曲目”Start All Over”も良曲ですが、普通のサイケデリック調のロックバラードです。
13曲目の”Hollow Man (Parts 1 & 2)”は、まるでビートルズの『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』とかに収録されていそうなインストで始まります。
その後クリスピアンがアコギを弾いて歌い始めます。
どことなく2ndアルバムに収録されることになるシングル曲にもなった”Shower Your Love”を彷彿させます。
この曲が発展して”Shower Your Love”が出来上がったのかな?
そして14曲目のサイケデリックで壮大な曲調の”Ragey One”でデビュー作『K』は締め括られます。
以上、なんだかんだとクリスピアンのギターについてや、付け焼刃のインド風味について少し辛辣な意見を書いてはいますが……僕はクーラ・シェイカーの作品でこの『K』が一番好きです!
デビュー作にして最高傑作だと思っています。
当時のUKロックシーンにおいても、このアルバム以上にかっこいい作品は僕の中では存在しません!
“Hey Dude”や”Grateful When You’re Dead”を初めて聴いたときの衝撃は今でも覚えています。
この2曲がきっかけで僕はワウギターに魅力を感じました。
実際は少ししかワウを弾いてないけど……。(笑)
でもあのパーカッシヴなブラッシングの音に魅かれたんです。
というわけで、あれから20年以上経ちましたが、これを機にまたクーラ・シェイカーの『K』の良さを多くの人に知ってもらいたいと思います。
今を生きる若い人たちにもぜひこんなかっこいいバンドのデビュー作があったんだよ!って聴いてもらいたいと思います。
おすすめです!
他に関連するお勧め記事