
2019/04/18
チャーリー・ハンターと2人のレゲェ・ギタリストによる異色作『Innovation!』を聴こう♪
変則8弦ギターの使い手チャーリー・ハンターが2人のレゲェ・ギタリストと共作した異色作『Innovation!』をご紹介!
ソウル・シンジケートのアール・チナ・スミスとレゲェ界を代表するジャズ・ギタリストのアーネスト・ラングリンとの共演作!
以前2枚のロック調のアルバムをご紹介していた変則8弦ギタリストのチャーリー・ハンターです。(※最近は7弦のギターも使っているようです。)
ロックな気分のチャーリー・ハンターの2作品『Copperopolis』と『Mistico』を聴こう♪
チャーリー・ハンターは、通常の6弦のギターではなく特殊な8弦ギターを使用して、ベースラインを弾きながら同時にギター演奏もする達人です。
いわば、ロバート・ジョンソンがやっていたことを更に進化させて一人二役で演奏できるミュージシャンです。
特殊な8弦ギターの構造は、5本のギター弦はそのまま(A→D→G→B→E)というレギュラー・チューニングで使用していて、残りの3本はベースの2~4弦の(E→A→D)を搭載しています。
この8弦ギターに、ギター・アンプとベース・アンプを繋いで、ギター・パートとベース・パートを同時に弾きこなします。
なので、チャーリー・ハンターがバンドにいればベーシストが不要となります。
また本来この8弦ギターを使用し始めた理由にギター1本で「オルガンのような厚みのあるサウンド」を表現するためだと言われています。
そのためギターの音色もクリーン・トーンで演奏することはほぼなく、基本的にマイク・スターンやジョン・スコフィールドのようにコーラス・エフェクターを深く掛けてエコーのようなサウンドでギター・パートを弾いています。
そのためすぐに「これは、チャーリー・ハンターのギターだな!」と気づけるぐらい特徴的です。
またベースも同時に演奏しているためなのか、ギター・カッティングのリズムの取り方も特徴的なのですぐにわかります。
そのチャーリー・ハンターが、本作ではレゲェ界で長年活躍してきた2人のギタリストと共演しています。
1人は、僕も大好きなレゲェ・バンドのソウル・シンジケートのギタリストだったアール・チナ・スミスです。
ソウル・シンジケート時代のアール・チナ・スミスは、エレキ・ギターを弾いていたのですが、2000年代頃からアコースティック・ギターを多く弾くようになりました。
本作でも全編アコースティック・ギターで参加しています。
しかしそれが良い味を出していて、とても効果的なサウンドに仕上がっています。
本作にはリズム隊に、パーカッション奏者のマノロ・バドレーナとドラム奏者のショーン・ペルトンが参加しています。
そのショーン・ペルトンがドラムだけでなくデジタルの打ち込みを担当しています。
デジタルな打ち込みとオーガニックなアコギの音が混じって、「革新的だけど温もりのあるサウンド」が出来上がっています。
また全曲に参加しているわけではないようですが、所々で聴けるジャズ・ギターを弾いているのは、レゲェ界随一の腕前を持つアーネスト・ラングリンです。
チャーリー・ハンターとアール・チナ・スミスにアーネスト・ラングリンという3人のギタリストが融合して、デジタル・オーガニックなクラブ・ジャズが出来上がったのがこの『Innovation!』になります。
ちなみにチャーリー・ハンターは、90年代にボブ・マーリーの”Lively Up Yourself “をカヴァーしていたのでもともとレゲェは好きだったんだと思います。
それでは作品のご紹介をしたいと思います。
Charlie Hunter, Chinna Smith, Ernest Ranglin – 『Innovation!』
01.Long Bay
02.What I Am
03.Mestre`Tata
04.I’ve Got The Handle
05.One Foundation
06.Fade Away
07.Passion Dance
08.Rivers Of Babylon
09.Island In the Sun
10.Long Bay [Extended Version]
Personnel:
Charlie Hunter – 8-strings Guitar
Earl ‘China’ Smith – Acoustic Guitar
Ernest Ranglin – Electric Guitar
Shawn Pelton – Drums, Loops
Manolo Barden – Percussion
アルバムの内容
チャーリー・ハンターと2人のレゲェ・ギタリストによる異色作『Innovation!』は、2006年にリリースされています。
さっそく打ち込みのデジタル音から始まる1曲目”Long Bay”は、チャーリー・ハンターとチナ・スミスの共作です。
コーラス・エフェクターを使用してオルガンのような厚みのあるコード弾きをするチャーリー・ハンターのバッキングとチナ・スミスのアコギのサウンドが絡み合います。
テーマとなるメロディーも2人がパートごとに交代で弾いています。
ギター・ソロは、チナ・スミス→チャーリー・ハンターの順番で弾いています。
クラブ・ジャズ系のグルーヴィーな楽曲ですが、オーガニックなトーンのアコギやコーラスが深く掛かったギターのトーンによって一風変わったサウンドに仕上がっています。
2曲目”What I Am”は、意外な選曲⁉
エディ・ブリケル&ニュー・ボヘミアンズが1988年に発表したキャッチーな楽曲のカヴァーです。
実はこの曲、元スパイス・ガールズのエマ・バントンがイギリスのバンド、ティン・ティン・アウトと共演してカヴァーしたこともある楽曲です。
意外な選曲ですが、まるでチャーリー・ハンターとチナ・スミスがこの作品のために書いたオリジナル曲のように完全に自分たちのモノにして演奏しています。
もちろん本作にはボーカリストは参加していませんので、歌メロの部分はチナ・スミスのアコギで弾いています。
ギター・ソロは、チャーリー・ハンター→チナ・スミスの順番で弾いています。
特にチナ・スミスのハーモニーに沿ったメロディアスなソロは必聴です♪
当時初めてこの演奏を聴いた時は、チナ・スミスってこんなにギター上手かったっけ?(失礼!笑)と思いました。
3曲目”Mestre’ Tata”は、チャーリー・ハンターのオリジナル曲で、2003年にリリースされた『Right Now Move』に収録されていた曲です。
この曲は、チャーリー・ハンターがマイク・クラークのバンドに客演した際にも演奏されていたので、お気に入りなんでしょうかね?
オリジナル録音ではゆったりとしたテンポで演奏されていましたが、本作ではだいぶテンポ・アップして演奏されています。
テーマを弾いているのは、アーネスト・ラングリンです。
チャーリー・ハンターとチナ・スミスはバッキングに回っています。
テーマが終わると、相変わらずのアーネスト・ラングリンの弾きまくりギター・ソロが登場します!
このギター・ソロは、ジャズ・ギター好きも必聴です♪
さすがにアーネスト・ラングリンはこの中でもずば抜けて上手いですね!
ほぼアーネスト・ラングリンによる独断場で3曲目が終わり、4曲目に移ります。
ここに来てようやくレゲェ曲の登場です!
レゲェ・バンドのヘプトーンズが1976年にリリースした”I’ve Got the Handle”です。
このゆったりとした曲を、打ち込みの音を交えつつもチナ・スミスのアコギを中心に穏やかに演奏しています。
やはりチナ・スミスにレゲェ曲を演奏させると絶品ですね♪
ギター・ソロは、チナ・スミス→チャーリー・ハンターの順番で弾いています。
5曲目”One Foundation”は、レゲェの神様ボブ・マーリーが歌った曲ですが、書いたのはザ・ウェイラーズでボブ・マーリーと共に活動していたピーター・トッシュです。
ゆったりとしたレゲェ曲だった原曲と違って、本作ではチャーリー・ハンターのコーラスが深く掛かったギターがグルーヴィーなクラブ・ジャズ風にアレンジして演奏しています。
テーマからソロまで全てチャーリー・ハンターが弾いており、チナ・スミスはバッキングに徹しています。
次の6曲目”Fade Away”は、ソウル・シンジケート時代にチナ・スミスが書いた楽曲です。
ソウル・シンジケートのデビュー・アルバム『Harvest Uptown』の3曲目に収録されていたマイナー調の渋い楽曲です。
テーマ部分はチナ・スミスのアコギが担当していますが、チャーリー・ハンターもジョンスコ風のトリッキーなギター・ソロを弾いています。
7曲目”Passion Dance”は、ジャズ・ファンにはお馴染みのマッコイ・タイナーの楽曲です。
勢いのあったマッコイのバージョンとは異なって、だいぶテンポを落としてゆったりとレゲェ・アレンジで演奏しています。
オリジナルではジョー・ヘンダーソンがテーマをチャーリー・ハンターがコーラスが深く掛かったギターで演奏しています。
ギター・ソロは、アーネスト・ラングリンが弾いています。
8曲目”Rivers of Babylon”は、ジャマイカのロックステディ・グループのメロディアンズが1970年に歌った曲です。
本作では歌声もダブ・ミックスの素材として使われています。
こういったダブ・アレンジはチナ・スミスのお得意分野ですね。
テーマ・メロディーやギター・ソロを弾くのはチナ・スミスのアコギです。
ギター・ソロと言っても、歌メロを発展させた程度のものではあります。
チャーリー・ハンターは、大人締めにリフを弾くのみです。
本編最後の9曲目”Island In the Sun”は、ハリー・ベラフォンテが1957年に歌ったトロピカルな曲です。
この曲を聴く全ての人を幸せな気分にしてくれるような朗らかなメロディー・ラインを持つ名曲です。
歌メロ部分をアーネスト・ラングリンが卓越したギター・テクニックで弾きあげます。
ギター・ソロは、アーネスト・ラングリン→チャーリー・ハンター→再びアーネスト・ラングリンと繋がります。
最後のテーマ部分ではオクターヴ奏法も用いてアーネスト・ラングリンが曲を締めくくります。
10曲目にはボーナス・トラックとして1曲目の”Long Bay”の1分ほど長くなったロング・バージョンが収録されています。
この全10曲が、3人のギターの名手が共演した異色作でした。
以上、【チャーリー・ハンターと2人のレゲェ・ギタリストによる異色作『Innovation!』を聴こう♪】でした。
ちなみに僕の持っているアルバムは、上記のように白いジャケットで『Innovation!(革新)』というタイトルですが…
実はこの作品は2005年に『Earth Tones』というタイトルで別のジャケットで発売されています。
この『Earth Tones』の方は、最後のボーナス・トラックの”Long Bay [Extended Version]”が収録されていなおのですが、1曲目と同じ曲なのでそこまで変わらないです。
なので、どちらでもお好きな方で購入すると良いと思います。
チャーリー・ハンターだけでなく、アール・チナ・スミスやアーネスト・ラングリンのようなレゲェ系ギタリスト好きにもおすすめのアルバムですよ♪
それにアーネスト・ラングリンのギター・プレイは、ウェス・モンゴメリーのようなジャズに根差していますので、ジャズ・ギター好きの人にもおすすめのアルバムです。
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