2022/12/28
ホイットニー・ヒューストンの半生を描いた伝記映画『I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を観に行きました。
希代の歌姫ホイットニー・ヒューストンの半生を描いた伝記映画『I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
没後10年を迎えて語られるホイットニー・ヒューストンの波瀾万丈な人生!
昨日はホイットニー・ヒューストンの最新映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を観てきました。
昨年は年末にコルトレーンの映画を観ましたが、今年の年末はホイットニーの映画を観ました。
この映画は、ホイットニーの波瀾万丈な人生について描いた映画です。
ホイットニー役を演じる主演女優はスター・ウォーズのエピソード9(スカイウォーカーの夜明け)でファーストオーダー第77中隊所属のストームトルーパーだった黒人女性ジャナを演じたナオミ・アッキーです。
さすがにホイットニーの圧倒的歌唱力をナオミ・アッキーが真似ることまでは出来ず歌の部分は口パクしているみたいです。
それは仕方ないことですが、ただもう一点どうしても真似できてない部分がありました。
それはスタイルの良さです。
ホイットニーは元ファッションモデルってだけあってスタイル抜群でしたからね!
ナオミさんはホイットニー役をやるんだからもうちょっとシェイプアップしないと…とは思いました。
しかしこの映画を観る前はQueenの映画『ボヘミアン・ラプソディ』の女性バージョンとして二匹目のドジョウを狙った映画かと思いましたが(同性愛の内容を扱っているという意味合いでも…)、僕としてはこちらの映画の方が面白かったです。
なぜなら「人間の歌声」の持つ絶大な力を改めて再認識できたからです。
たとえ凡曲であったとしても歌い手の腕次第で名曲に変化する⁉
特に印象に残ったのが”How Will I Know”を録音するところです。
ホイットニーは自分で曲を書くよりもソングライターに提供された曲を歌うタイプのシンガーです。
「シンガーソングライター」というよりも「生粋のシンガー」と言えます。
最初にホイットニーがこの曲の仮歌(他のシンガーが歌ったもの)が入ったデモ音源を聞かされた時は凡曲だったのにそれを圧倒的歌唱力で名曲に変えてしまう…!
何の変哲もない凡曲でも才能ある歌手が歌うことで名曲に変わっちゃうってとこです。
それこそまさに「曲の良さは演者の腕で決まる!」ということですね。
ちなみに”How Will I Know”はホイットニーにとって5作目のシングル曲となりました。
デビューアルバムの『Whitney Houston(そよ風の贈りもの)』にも収録されています。
この曲のMVでは映画内ではホイットニーは派手なメイクにかわいらしい髪型に大きなリボンをしていて、当時のアメリカの一般人が望む「キャンディガール(誰しもが理想とする可愛らしくって魅力的な女性)」を演じています。
それを当時のホイットニーのパートナーだった女性ロビンが茶化すシーンなども映画にありました。
こういった同性愛の内容もこの映画ではちゃんと扱っています。
ちなみにその後ホイットニーは90年代に流行ったニュー・ジャック・スウィングの申し子ボビー・ブラウンと結婚をしています。
その辺りの内容もこの映画で扱われています。
ホイットニーの「歌」だけでなくそういったプライベートも赤裸々に語られているのがこの映画の面白いところです。
ブラックミュージックとポップスの狭間に…
ホイットニーとボビー・ブラウンの出会いの一つとして新たな音楽性の探求もこの映画内で語られていました。
ホイットニーは1985年に1stアルバム『Whitney Houston(そよ風の贈りもの)』でデビューを果たし、その2年後の1987年に2ndアルバム『Whitney(ホイットニーII~すてきなSomebody)』をリリースしました。
もちろんその圧倒的歌唱力で歌われるキャッチーなダンスナンバーやしっとりとしたバラードが聴き手に受け全米No.1を含む大ヒットを飛ばしホイットニーは瞬く間にスターへとのし上がりました。
しかしその反面で一部の界隈から「なぜ黒人なのにブラックミュージックを歌わないのか?なぜ白人みたいなポップスを歌ってるんだ?」みたいな批判に晒されました。
その2作品をリリースした頃にホイットニーは自身の音楽性に悩みベイビーフェイスやL.A.リードにルーサー・バンドロス等をプロデューサーに迎え、より黒人音楽に近づいたニュー・ジャック・スウィング風の3rdアルバム『I’m Your Baby Tonight』をリリースしています。
もちろんこのアルバムのクオリティーは高く大ヒットしたのですが、音楽性に迷いがあったのと誰かしらの頼れるパートナーとしてロビンではなくボビー・ブラウンを選んだことで一時の安心を手に入れたかったのでしょう。
しかし音楽にとって大切なのは「ジャンル」ではなく「曲」そのものです。
映画『ボディーガード』に出演することでアーティストとしてステップアップ
ホイットニーを主演にした恋愛映画『ボディーガード』は1992年に公開されました。
映画『ボディーガード』のことはこの映画でも触れられています。
ホイットニーの相手役だったケビン・コスナーの姿も映画『ボディーガード』から引用されていました。
もちろん『ボディーガード』と言えばホイットニーが熱唱する主題歌の”I Will Always Love You”が有名ですね。
もはや「ホイットニー・ヒューストンといえばこの曲!」と言える名曲です。
しかしこの曲のオリジナルはホイットニーが書いた曲とかではなくカバー曲になります カントリー・ポップの歌姫ドリー・パートンが1973年に書いた曲で、もとはゆったりとしたカントリー・ソングでした。
この曲をホイットニーに歌って欲しいとリクエストしたのはケビン・コスナーでした。
白人であるケビン・コスナーがカントリー・ミュージックを好んで聞いているのは当たり前のことで驚きはありませんが、当時の黒人音楽ファンであればほとんどの人がカントリー・ミュージックよりもR&Bの方が好きだったことでしょう。
しかしこの曲のことを知らされたホイットニーはこの曲を歌うことにしました。
そしてその結果、世界中で大ヒットしたということは音楽好きであれば誰しもが知ることでしょう。
ホイットニーの音楽性に対する批判は色々と会ったことでh層が、しかし一番大事なことは「ホイットニーの歌声」なのですからね。
だからホイットニーはスーパーボウルの国歌斉唱をカジュアルな格好で歌いました。
人を感動させるのに派手なドレスや高価な宝石など必要ありません。
大事なのは音楽のジャンルや見た目ではなく「ホイットニーの歌声」だからです。
そこが一番大事だと感じさせられた映画でした。
アメリカン・ミュージック・アワードでの伝説のステージ
1994年にホイットニーはアメリカン・ミュージック・アワードのステージで、ジョージ・ガーシュインが作曲したオペラ『ポーギーとベス』の中の1曲” I Loves You, Porgyとジェニファー・ホリデーが歌ったブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガール』の曲”And I Am Telling You I’m Not Going”、そして映画『ボディーガード』からの1曲”I Have Nothing”をメドレーで披露しました。
その名演はこの映画でも「ホイットニーの人生に於いて最も輝かしいハイライト」として扱われています。
映画のオープニングはこの時のステージに上がるホイットニー(演じるのはナオミ・アッキー)の後ろ姿から始まります。
そして映画の最後のシーンもこのメドレーのシーンです。
その間で2012年の亡くなる直前のホイットニーがクライヴ・デイヴィスが主催するパーティーに出席するためにホテルに泊まった時のシーンが挿入されています。
宿泊先のホテルのバーで1杯飲もうとしたらバーテンダーからサインを求められます。
快くサインをしてあげると、そのバーテンは1994年のアメリカン・ミュージック・アワードを会場で観たと告げます。
「あれはもう18年も前の話。もうあの頃の様な声は出せないわ。」と答えるホイットニー…
その時ホテルにいた他の客がパーティーに出席する他のアーティストを見かけてこう叫びます。
「アリシア・キーズだ!」
時代は変わり音楽シーンを代表する歌姫はホイットニーからアリシア・キーズへと変わっていました。
しかしそのバーテンは、自分の中ではホイットニーこそがNo.1のシンガーであることをホイットニーを前に話します。
この映画を観た僕も同じ思いです。
僕もアリシア・キーズの歌声は大好きですが、ホイットニーを超えるほどではありません。
ホイットニーほど人の心の奥深くに何かを訴えかけるような歌声は他にありません。
ちなみにそんな僕が一番好きなホイットニーの曲は映画『ボディーガード』に使われた”Run To You”です。
心に訴えかける”You”
“I Will Always Love You”をステージで歌う際にサビの部分のの”You”を会場の客席を指さして何度か歌うのはホイットニーの定番のパフォーマンスです。
“You”にはご存じの通り「あなた」だけでなく「あなたたち」という複数形の意味があります。
ホイットニーの歌う”You”という単語は、特定の誰かに向けたラヴソングのようでいて、聴いてくれている世界中全てのファンに向けて”You”と語りかけているかのようです。
僕が”Run To You”を好きな理由もそこです。
この曲の”I wanna run to you oooh~♪”とサビで歌われる時のあの美しい歌声…
ホイットニーの歌う意”You”という単語には人の心に訴えかける「魂」が込められています。
亡くなった今でもホイットニーは我々ファンの元に向かって走ってきてくれていることでしょう。
年末に観た最高の映画
今年も年末に映画館に足を運びました。
昨年のジョン・コルトレーンも良かったのですが、僕としてはこの映画の方が面白かったです。
映画のタイトルに使われたホイットニーの7枚目のシングル曲”I Wanna Dance with Somebody (Who Loves Me)”
ホイットニーはその圧倒的才能がゆえ誰と一緒にいても満たされず心の中の「孤独」と常に闘っていたことでしょう。
その「孤独」を埋めるために「自分を愛してくれる人々と純粋にダンスを楽しみたかった」のだと思います。
何も考えずに…自由に。
今年の年末は本当に良い映画を観れました!
しかし「歌」の持つ力は絶大だなって改めて感じました。
どう頑張っても「楽器」では絶対に「人間の声」には勝てないですね…。
いつかマライアの映画も作って欲しいです。
“The Voice”よ…永遠に。
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