2019/06/13
ジュシュア・レッドマンがサム・ヤエルとブライアン・ブレイドとのオルガン・トリオ編成で制作したおすすめの3作品‼
ジュシュア・レッドマンがサム・ヤエルとブライアン・ブレイドとのオルガン・トリオ編成で制作した3枚のアルバム!
エラスティック・バンドへと発展していく現代風オルガン・トリオ!
このブログでも何度か登場しているジョシュア・レッドマンは、僕のお気に入りのサックス奏者です。
ジョシュア・レッドマンは、オーネット・コールマンやキース・ジャレットのバンドで活躍したデューイ・レッドマンの息子に当たります。
そんなジョシュア・レッドマンを僕が知ったきっかけは、2006年に発売された『ジャズでめぐるニューヨーク』という本を読んでからだったので、90年代からリアルタイムで聴いていたわけではありませんでした。
そもそも90年代にジョシュア・レッドマンが活躍していた当時は僕はまだ中学生~高校生でしたからね。
2006年になって、なぜこの本を読んだのかというと、20代半ばだったこの時期から僕は「30代を迎える前に何としてでもNYへ行って本場のジャズを味わいたい!」と思ったからでした。
子供の頃からアメリカのドラマやアメコミが好きだったのでNYにはずっと憧れていました。
そういった理由もあって『ジャズでめぐるニューヨーク』という本を読んでみることにしました。
結局それから2年後の2008年になってようやくNYにひとり旅することは出来ました。
さて、『ジャズでめぐるニューヨーク』に掲載されていたジョシュア・レッドマンのエラスティック・バンド名義のアルバム『Momentum』を聴いて、すっかりハマっていた僕は、次に2002年の作品『Elastic』を購入しました。
エラスティック・バンドの名前を関したアルバムです。
ちなみに”elastic”とは、「伸び縮みする」の意味の他に「融通の利く」という意味もあります。
おそらくメンバー間で自由に演奏を展開しつつもそれぞれのメンバーが阿吽の呼吸で演奏することなどから付けられた名前でしょうか?
そういったバンド名からもわかる通りに、これらの作品は従来のジャズとは違った「新時代の」感覚を味わうことが出来ます。
『Momentum』の方には、レッチリのフリーやミシェル・ンデゲオチェロ以外にもピーター・バーンシュタインにカート・ローゼンウィンケル、ソウライヴのエリック・クラズノーなど、現代ジャズが好きな人だったら名前を聴いただけでウキウキしてしまいそうになるような豪華なメンバーがゲストで参加していました。
しかしそれよりも3年程前にリリースされていたエラスティック・バンドの前身アルバムと言えそうな『Elastic』という作品はシンプルなオルガン・トリオで制作されていました。
実はヒップホップ好きの僕は、ヒップホップのリズムを大胆に取り入れた『Momentum』が今でも一番好きな作品ではあるのですが、しかしサックスとオルガンとドラムのみでシンプルに演奏された『Elastic』もジョシュアの作品としてその次に好きな作品です。
こちらのオルガン・トリオの編成は、オルガンにサム・ヤエル、ドラムにブライアン・ブレイドが参加しています。
もちろんこの2人も、それぞれがリーダーを張れる名手です。
そんなジョシュア・レッドマン+サム・ヤエル+ブライアン・ブレイドの3人編成で制作した作品は、他にも2作品あります。
今回はそれら3作品のアルバムについてご紹介したいと思います。
Yaya3 – 『Yaya3』
01.Slow Orbit
02.Switchblade
03.The Spirit Lives On
04.One More Once
05.Hometown
06.Aeolio
07.Two Remember, One Forgets
08.The Scribe
09.Confronting Our Fears
アルバムの内容
ジョシュア・レッドマンの『Elastic』リリース前にこの3人で最初に制作したアルバムがこの『Yaya3』です。
元はと言えば、サム・ヤエルが中心となったグループで、当初はジョシュア・レッドマンの代わりにピーター・バーンシュタインが予定されていました。
しかしピーター・バーンシュタインが参加できなくなったことで、ジョシュア・レッドマンが参加することに至ったようです。
ピーター・バーンシュタインは、ブライアン・ブレイドと共にジョシュアの1996年の作品『Freedom in the Groove』にも参加していたので、そういった繋がりもあるのでしょう。
90年代のジョシュア・レッドマンのおすすめアルバム3選‼
さて、このオルガン・トリオの1作目はコラボレーション・プロジェクト『Yaya3』名義でリリースされています。
「ヤヤ・スリー」と読みたくなるところですが、実際には「ヤヤ・キューブド」と読みます。
“yaya”というのは、サム・ヤエルのファミリーネーム”Yahel”からとられたニックネームのことです。
そういったプロジェクト名からしてもサム・ヤエルが中心のオルガン・トリオと言えるバンドなのですが、しかしヤエルが一人でオルガンを弾きまくるアルバムか?と言われると…そうではありません。
基本はリード楽器のジョシュアが楽曲のテーマを吹き、ソロもいつもの如くバリバリと吹いています。
なので、オルガン好きの方だけでなくジョシュアのような現代的なサックス奏者が好きな方にもおすすめ出来るアルバムです。
ヤエルはあくまでもブライアンと共に楽興の骨子を固める役目に徹しています。(もちろんオルガン・ソロも弾いていますが、控えめです。)
ギターがいない分、ヤエルがオルガンでハーモニーを奏でなくてはいけません。
また通常のオルガン・トリオだと当たり前のことなのですが、ベーシストがいない分をオルガンのフットペダルを用いてベースラインを弾かなくてはいけません。
といったわけで、オルガンが暴れまわるだけでは音楽が成り立たなくなってしまうので、そこら辺はあくまでもドラムとのアンサンブルを大事にしている感じがします。
それでもオルガンがソロを弾く際には、可能な範囲内で過激に暴れていたりもしますが。
ただ収録曲の方は、全9曲中5曲がヤエルの作曲となっているので、プロジェクトの発起人の責任を果たしているかのようでもありますね。
2曲目の”Switchblade”と7曲目の”Two Remember, One Forgets”の2曲がジョシュアの作曲です。
3曲目の”The Spirit Lives On”と9曲目の”Confronting Our Fears”の2曲がブライアンの作曲です。
どの曲も従来のジャズとは違ったリズム感の『コンテンポラリー・ジャズ』ばかりが収録されています。
個人的にはジョシュアの作曲した過激な”Switchblade”が一番のお気に入り曲です♪
次点でブライアンの作曲した”The Spirit Lives On”です。
1分54秒辺りからジョシュアの吹くメロディーがどこか民族音楽的な音階で徐々に盛り上がっていく感覚が堪らなく好きです♪
しかし、もしこの作品がジョシュアではなく当初の予定通りにピーター・バーンシュタインが参加してい制作されていたとしたら、どのような作品に仕上がっていたのか?気になることもあります。
オルガンとギターの相性って抜群ですからね!
しかもピーター・バーンシュタインは、Dr.ロニー・スミスのバンドにも参加していたように、オルガン・トリオ編成が得意なジャズ・ギタリストでもあります。
Joshua Redman – 『Elastic』
01.Molten Soul
02.Jazz Crimes
03.The Long Way Home
04.Oumou
05.Still Pushin’ That Rock
06.Can A Good Thing Last Forever?
07.Boogielastic
08.Unknowing
09.News From The Front
10.Letting Go
11.The Birthday Song (Intro.)
12.The Birthday Song
アルバムの内容
先ほどの『Yaya3』と同じく2002年に同じオルタナ・トリオでリリースされた『Elastic』です。
今回はジョシュアのリーダー作名義でリリースされています。
『Yaya3』が発展してエラスティック・バンドが誕生した瞬間です。
サム・ヤエルの書いた4曲目”Oumou”以外は全てジョシュアの作曲です。
しかしはっきり言ってヤエルよりもジョシュアの方が作曲の才能は上だと感じます。
ぼんやりとした楽曲が多かった『Yaya3』よりも遥かにこの『Elastic』の方が印象に残る楽曲が多く収録されています。
2曲目の”Jazz Crimes”や3曲目の”The Long Way Home”、5曲目の”Still Pushin’ That Rock”に12曲目の”The Birthday Song, Pt. 2″なんかはエラスティック・バンド名義でライヴ演奏されていた曲です。
YouTubeとかでも観れるのですが、当時のライヴにはノーマン・ブラウンがギターで参加していたりもしました。
またシンプルだった『Yaya3』との違いとして、本作ではジョシュアが積極的にエレクトリック・サックスを使用しています。
例えば7曲目”Boogielastic”や9曲目の”News From The Front”なんかでは、オクターヴァーのようなエフェクターを繋ぎ倍音を奏でています。
あの倍音の音色はサックスの奏法によるものではなく、エフェクターで作った音です。
ライヴ映像でもこういったエフェクターの使用が確認できます。
オクターヴァーのみならず、ボリューム・ペダルも使用して、まるでギタリストのようにサックスの音色をエフェクターで変幻自在に操っていました。
そんなジョシュアに感化されてか?『Yaya3』ではオルガンだけを弾いていたヤエルも、本作ではエレピも導入して革新的なフレーズを連発しくれています!
楽曲の質のみならず、そういった実験的な姿勢も楽しめる作品です♪
しかしこの後に更に発展したエラスティック・バンド名義で制作される『Momentum』と比べると、まだ「大人し目」の実験だと感じられます。
それでも従来のジャズ作品と比べると、本作は革新的な作品だと言えます。
目立った駄曲もなく、「ストレート・アヘッドなジャズ以外『ジャズ』じゃない!」なんていう偏見を持った方でなければ、きっと好きになってもらえるアルバムだと思います。
まぁ僕としてはそういった偏見を持った方にもぜひ本作のような作品も『ジャズ』として聴いていただきたいな~と思います。
『ジャズ』って、他のジャンルの音楽を飲み込んで常に進化できる音楽だと思います。
偏見を持たず、広い心を以てしてあらゆるジャンルを飲み込んだ『ジャズ』も楽しみましょう♪
Sam Yahel Trio – 『Truth And Beauty』
01.Truth And Beauty
02.Man O’War
03.Check Up
04.Bend The Leaves
05.Saba
06.Night Game
07.Child Watching
08.A Paz
09.Festinhas
アルバムの内容
『Yaya3』から約4年の時を経て2006年にサム・ヤエル・トリオ名義でリリースされた『Truth And Beauty』です。
もちろんジョシュア・レッドマンとブライアン・ブレイドが参加しています。
『Yaya3』と『Elastic』が3人のオリジナル曲で固められていたのに対して本作は3曲のカヴァー曲が収録されています。
オーネット・コールマンがオリジナルの”Check Up”、ポール・サイモンの1975年のアルバム『Still Crazy After All These Years(時の流れに)』に収録されていた”Night Game”、ジルベルト・ジルとジョアン・ドナートが書いた曲”A Paz”の3曲です。
その他の6曲は全てサム・ヤエルの作曲です。
どちらかというと、ジョシュア・レッドマン名義の『Elastic』よりもヤエルが中心だった『Yaya3』に近い雰囲気が感じられるアルバムですが、以前にもましてブライアン・ブレイドのドラミングが細かくなっています!
4曲目5曲目のオルガンやサックス・ソロのバックでのドラムの暴れっぷりは必聴です♪
どうしてもサム・ヤエル名義だと地味なアルバム扱いになってしまいそうなのですが……ジョシュアの名作『Elastic』に負けず劣らず!な作品ですので、ぜひジョシュア・レッドマンのファンの人にももっと聴いて欲しい作品です。
以上、【ジュシュア・レッドマンがサム・ヤエルとブライアン・ブレイドとのオルガン・トリオ編成で制作したおすすめの3作品‼】のご紹介でした。
3作品のどれもが、それぞれがリーダーを務めることが出来、作曲能力もある3人の名手が自分たちの持てる力を発揮して制作したコンテンポラリー・ジャズの名作です。
従来にオルガン・ジャズとは違った『新時代のオルガン・ジャズ』をぜひ聴いてみてください♪
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