
2023/04/25
【知覚の扉を開け!】ジム・モリソンがいた時代のドアーズのおすすめアルバムをまとめてご紹介!
ジム・モリソンが在籍していた時代のドアーズのアルバムをまとめてご紹介します。
ドアーズとは?
ドアーズ(The Doors)は、1965年にボーカルのジム・モリソンとオルガン奏者のレイ・マンザレクを中心に結成されたロック・バンドです。
ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(通称:UCLA)の映画科で学生をしていた時代にこの2人は出会っています。
幼少の頃のジム・モリソンは、転勤の多い父の職業柄、転校ばかりしており学校生活に馴染めずに自然と読書の世界へとのめり込むようになりました。
しかしそれが後にジムの歌詞作りに大いに役立つこととなります。
ジムの歌詞は独特の「陰り」があり、同時代の他のバンドとは一線を画するものでした。
そもそもレイとバンドを結成するに至った経緯も、ジムが書いていた自作の詩”Moonlight Drive”を聴かせたことがきっかけでした。
その歌詞に魅了されたレイは、曲を付け後にドアーズのアルバムに”Moonlight Drive”は収録されることとなります。
この2人に、フラメンコ・ギタリストでもあったロビー・クリーガーと、ジャズ・ドラマーを目指していたジョン・デンズモアが加わり異色のバンド「ドアーズ」が完成します。
このバンドにはベーシストがいませんが、主にベースラインはレイがオルガンのフットペダルでベースパートを担当しています。
オルガン・ジャズでよく採用されている手法ですね。
ただし、後期のアルバムではベーシストが録音に参加していることもあります。
オルガン+ギター+ドラムといったロック・バンドとしては異色の組み合わせも、このバンドが同時代の他のバンドとは一線を画するものでした。
ちなみにバンド名の「ドアーズ」とは、18世紀の詩人ウィリアム・ブレイクの詩の一節から付けられています。
その一節をオルダス・ハクスリーが自身の著書『The Doors of Perception(知覚の扉)』として引用しております。
文学少年だったジムは、この『知覚の扉』からバンド名を付けました。
一見単純そうなバンド名にも深い意味を持たせたところもある意味異色ですね。
今回はそんなドアーズにジム・モリソンが在籍していた時代のおすすめアルバムをご紹介します。
「ジム・モリソンが在籍していた時代」と書きましたのには理由がありまして…
ジム・モリソンは、 1971年に27歳という若さで亡くなっています。
これはジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、そして伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンと同じで「27歳」という年齢に亡くなっています。
このことからエリック・クラプトンは、「自分も27歳までしか生きられないかも?」と当時は心配していたようですが…幸いクラプトンは今も健在です。
しかし残念なことに、彼らよりも若い世代のニルヴァーナのカート・コバーンは、自ら27歳で人生の幕を閉じる選択をしてしまいました…。
そんなカート・コバーンも少なからずドアーズの影響は受けていたようです。
ジム・モリソンが1971年に亡くなった後、なんとバンドは解散せずに存続の道を選びました!
当初はジムの代わりに元フリーでバッド・カンパニーのリードシンガーだったポール・ロジャースを新たに加えようとしますが、連絡が取れずに断念しています。
結局、レイとロビーが交互にボーカルを取ることになります。
そして1971年に『Other Voices 』を、1972年に『Full Circle』をリリースしています。
しかしこの2作品は、やはり売れずに商業的には失敗作となってしまいます。
ジムがいないドアーズなどありえないと気付いた3人は、1972年にバンドを解散させることにしました。
この2作品と、後にジム・モリソンのデモ・テープを元に制作されたラスト・アルバム『An American Prayer』については、今回は省いております。
そういった理由で、「ジム・モリソンが在籍していた時代」としました。
やはり僕自身もジム・モリソンが歌っていないドアーズは好きになれません。
そのため『Other Voices 』と『Full Circle』も一応持ってはいますが、ほとんど聴いていません。
なので、今回は僕が好きなジム・モリソン時代のドアーズのアルバムをまとめてご紹介したいと思います。
オリジナル・アルバムとライブ盤、そしておすすめのベスト・アルバムとボックス・セットをご紹介します。
ジム・モリソンが在籍していた時代のドアーズのおすすめのオリジナル・アルバムをご紹介!
The Doors – 『The Doors』
1967年にリリースされたドアーズの1stアルバムにして永遠の名作『The Doors』です。
アルバム名の邦題は収録曲の”Light My Fire”から取られて『ハートに火をつけて』でした。
まずはドアーズというバンドの「始まりの曲」に相応しい “Break On Through (To the Other Side)”でアルバムは始まります。
この曲はドアーズのデビュー・シングルにも選ばれています。
ジャズ・ドラマーを目指していたジョンによるボサ・ノバ風のドラム・ビートに、ポール・バターフィールドのバージョンの”Shake Your Moneymaker” (エルモア・ジェームズの曲)からインスピレーションを得たギターリフ、そして「向こう側へ突き抜けろ!」と叫ぶジムの文学的な歌詞…デビュー曲にしてすでにドアーズの世界観が完成されています。
この”the other side(向こう側)“というのは、”subconsciousness(サブコンシャスネス)“=「潜在意識」のことで、ダブル・ミーニング(2つ以上の解釈)的に用いられていると考えられます。
まずはバンドがプロとしてデビューすることを「向こう側へ突き抜けろ!」と表現しているのと、他のバンドとは一線を画する新たなロックを創造しようとしていたこともその1つでしょう。
そしてもう1つは、サイケデリック・ロック時代にイケナイお薬を使ってトリップしていたこともその1つです。
歌詞に”She gets high!”=「彼女はハイになった!」とあるのですが、この”high”の部分が不適切として削除されたクリーン・バージョンで当初はリリースされていました。
今の時代となってはこれ以上に過激な歌詞を持った曲はたくさんあるので、「え?その程度で?」と思ってしまいますが、1960年代当時ではこの歌詞でも十分に過激でした!
僕も母親から聞いたことがあるのですが、母が子供だった頃、ビートルズが初来日したのを母の祖父(僕の曾祖父)があのマッシュルーム・カットをTVで見て、「男のくせにあんな長髪!この不良モンが!」と怒ったそうです。
今となっては笑い話ですが、当時としては十分に過激だったのでしょう。
さて、次の”Soul Kitchen”もライブ映えする名曲です。
1965年にジムがベニス・ビーチにあったお気に入りのソウルフードを出すオリビアというレストランについて書いた曲です。
“soul”にはソウルフードだけでなく、ソウル・ミュージックの意味も込められています。
ギターのロビーは、”ゴッドファーザー・オブ・ソウル”ことジェームス・ブラウンの曲からこの曲のギターリフを作ったことを認めており、全体的にファンキーな仕上がりです。
後にジャム・バンドのオン・ザ・スポット・トリオが、インストでこの曲をライブでも取り上げています。
ソウライヴも認めた!現代的オルガントリオ”オン・ザ・スポット・トリオ”おすすめのデビュー作
続く”The Crystal Ship(水晶の舟)“は、ジムが最初の彼女だったメアリーとの別れを歌詞にした切ないバラード曲です。
レイのクラシカルなエレピソロが何とも物悲しいこれまた名曲ですね…。
エアロスミスのジョー・ペリーが2005年リリースしたソロ・アルバム『Joe Perry』でこの曲をカバーしていました。
他にはライブでも定番だったドイツ・オペラの曲『マハゴニー市の興亡』の曲”Alabama Song (Whisky Bar)”や、
ハウリン・ウルフのブルース曲”Back Door Man”(ウィリー・ディクソン作)といった曲も要チェックです!
そして本作には2曲のドアーズを代表する歴史的名曲が収録されています!
それは”Light My Fire”と “The End”の2曲です。
“Light My Fire”の方は、アルバムからの2ndシングルに選ばれて全米チャートのNo.1を獲得した曲です。
後に数多くのカバーを生んだ名曲です。
バッハをモチーフにしたレイによるクラシカルなエレピのイントロ、ジャズ風のドラミング、そしてサイケデリック・ロック時代が到来したことを告げる長い長~いインプロビゼーションのパート…
7分にも及ぶ長尺曲は、インプロビゼーションのパートを全てカットしてシングル盤では3分にまとめられています。
確かに7分はラジオで流すには長すぎますからこれも仕方ないことなのでしょうが、しかしデレク&ザ・ドミノスの”Layla”の最後の長いピアノのパートと同じで、これもあってこその名曲だと言えます!
アルバムで聴く際は、ぜひこのインプロビゼーションのパートを全て聴いてみて下さい。
ちなみにこの曲は、ロビーがジミ・ヘンドリックスのカバーで有名な曲”Hey Joe”(一番最初にこの曲を演奏したのはザ・リーヴス)のメロディーラインを拝借して作曲しています。
歌詞もほとんどの部分をロビーが書いており、ローリング・ストーンズの”Play with Fire”からインスピレーションを得ています。
しかしこれだけでは「キャッチーな歌詞の曲」で終わっていたのですが、ここにジムが「退廃の美」とも呼ぶべきダークな歌詞を付け加えています。
それは”our love become a funeral pyre”の部分です。
“funeral pyre”とは、「火葬用の薪の山」のことで「僕たちの愛は火葬場の薪のようになっていく」と刹那的な意味合いを付け加えています。
これこそがまさにジム・モリソンの歌詞の魅力です!
どうしても英語圏ではない僕たち日本人にはパッと曲を聞いただけでは伝わりにくいのは残念なところではありますが、ジム・モリソンの歌詞には「退廃の美」が隠されています。
有名どころで例えるなら、ビートルズの”We Can Work It Out(恋を抱きしめよう)”で、ポールが「僕たちなら上手くいくさ!」とポジティヴに歌っていたら…ジョンが”Life is very short, ant there’s no time for fussing and fighting.”=「人生は短い、イライラして喧嘩している時間なんてないんだよ!」と少しネガティヴに現実を突きつけている感じと似ています。
名曲の歌詞は、こういったダークな要素があると深みが増しますね。
とにかく”Light My Fire”は、キャッチーすぎる歌メロに対して「陰り」のある歌詞に実験的なインプロビゼーションのパートがあるからこそ名曲たりえるのだと思います。
もう1曲の名曲”The End”は、映画『地獄の黙示録』で使用されたことで後年有名になった楽曲です。
11分以上の長尺曲なのですが、ジムによるギリシャ神話よりインスパイアされたあまりに過激な歌詞が物議を読んだ楽曲です。
ロビーの東洋思想が伺えるギターのイントロに、レイの教会音楽の様なオルガンのロングトーン、そして響き渡るジョンのドラム…
やがて楽曲はテンポを上げてクライマックスへと疾走していきます。
この部分はジムが幼少の頃に体験したインディアンのシャーマン達による幻覚からインスピレーションを得たのでしょう。
“Light My Fire”と”The End”という強力な2曲の名曲を含むデビュー・アルバム『The Doors』は、真っ先に聴くべきドアーズのアルバムであり、これが最高傑作です。
The Doors -『Strange Days』
邦題は『まぼろしの世界』と付けられたドアーズの2ndアルバム『Strange Days』です。
1stアルバム『The Doors』から約8ヵ月後にリリースされています。
次のアルバムがリリースされるまでに2~3年待たなければいけない近年の音楽業界と違って60年代の新譜リリースの期間は驚くほど短いですね。
前作よりもサイケデリック色が濃くなっており、中には”Horse Latitudes “のような実験的な楽曲も収録されています。
アルバム・ジャケットのイメージをそのまま楽曲で表したような”Strange Days”や”People Are Strange”といった曲がレコード時代にはA面B面それぞれの1曲目に配置されていました。
この2曲も良いのですが、やはりドアーズが結成されるきっかけともなった “Moonlight Drive”が収録されているのが一番の聴き所です!
ロビーによるスライドギターの幻想的な音色が「月光のドライヴ」という曲名を見事に音で表現しています。
ロビーは、ブルースではお馴染みのスライドギターを度々弾くことがあります。
これはギターの指板を握る左手の指にスライドバーをはめて演奏する伝統的な奏法の1つです。
古くはロバート・ジョンソンやエルモア・ジェームズも得意としたミシシッピ・デルタ・ブルースから受け継がれてきた奏法です。
また本作にはライブでも定番だったシングル・カットされたブルース曲の”Love Me Two Times”も収録されています。
ロビーだけでなくジムもブルースを歌うのが好きでした。
そのためドアーズには度々ブルースな曲が登場します。
この曲は後にドアーズのトリビュート・アルバムでエアロスミスが取り上げていました。
そのカバー・バージョンに満足したのか?エアロスミスは、後にMTVアンプラグドに出演した際にもこの曲をアコースティック・バージョンで披露していました。
そして本作にもアルバムの最後に11分にも及ぶ長尺曲”When the Music’s Over”が収録されています。
ただしこちらは”The End”ほど歌詞は過激ではありません。
演奏は十分に過激な箇所がありますが…。
1stアルバム程のインパクトこそありませんが、本作もドアーズを代表する名盤の1つです。
しかし逆を言うと、ドアーズはスタート・ダッシュし過ぎたバンドだと言えるのかもしれません⁉
この2作と比べると、後のアルバムはどうしてもパワーダウンした感が否めないです…。
まずは1stアルバムとこの2ndアルバム『Strange Days』を続けて聴くことをおすすめします!
The Doors -『Waiting for the Sun』
邦題は『太陽を待ちながら』と付けられた1968年リリースの3rdアルバム『Waiting for the Sun』です。
僕は1曲目の”Hello, I Love You”がどうしても好きになれません…。
しかしこの曲は全米No.1を記録しています!
キンクスの”All Day and All of the Night”に似ておりレイ・デイヴィスに盗作疑惑を向けられましたが、ロビーは否定しています。
ただしドラムのパターンはクリームの曲”Sunshine of Your Love”でジンジャー・ベイカーが叩いていたビートからインスピレーションを得たとは認めています。
…と、ここまでは巷の音楽雑誌で散々書かれていたことでしょうが…僕はこの曲はどうしても好きになれないです。
でもこの曲がヒットしたのは、まぁ頷けます。
歌メロがキャッチーですからね。
むしろこのアルバムの聴き所は、ライブでも定番だった”The Unknown Soldier”と”Five to One”の2曲だと思います。
ベトナム戦争を報道するアメリカのメディアを皮肉った”The Unknown Soldier”は、ライブでは中間の銃声の部分でロビーがギターをライフルに見立てジムを撃つというパフォーマンスがされています。
“Five to One”は、ジョンのドラミングがヘヴィー・メタルという音楽ジャンルが生まれるきっかけとなった「オリジン」だと見なされている曲です。
この2曲が本作では突出して出来の良い楽曲です。
他は…そこまで印象に残らない楽曲が多いですね。
ジャケット内側に印刷されていた”The Celebration of the Lizard”の詩は、本作制作時には曲として完成できずに、結局完成版はスタジオ・アルバムには収録されることがありませんでした。
その一部が “Not to Touch the Earth”として本作に収録されています。
後にライブ・アルバムで”The Celebration of the Lizard”の完成版は登場しますが、もしこの曲が完成していたとしたら本作の評価も変わっていたのかも知れません⁉
少なくとも僕は、”The Celebration of the Lizard”が”The End”や”When the Music’s Over”のようにアルバムの最後に収録されていたら好きなアルバムになっていたでしょう。
その場合、”Hello, I Love You”を省いて”Five to One”を1曲目にしてね。
“Hello, I Love You”は、人気集めのシングルだけにしてアルバム未収録でも良かったんじゃないか?と僕は思います。
The Doors -『The Soft Parade』
1969年にリリースされた4作目『The Soft Parade』は、これまで以上にポップになったアルバムです。
ゴージャスなホーン隊が加わった1曲目 “Tell All the People”を聞いた瞬間に「聴くのをやめようかな?」と思っちゃいます。
「これってドアーズでやる必要あるのかな?」と否定的な意見も言いたくなります。
これまでのドアーズの魅力が失われたアルバムです。
ジャケットもメンバーの写真が引きで撮られており、なんだかドアーズが過去のバンドになっていくような暗示に思えます。
とは言ったものの、僕は”Touch Me”は好きです♪
先の”Hello, I Love You”はポップすぎて好きではなかったのですが、”Touch Me”はファンキーなギター・カッティングがあるので好きなんです。
ロビーのスパニッシュ風味とキャッチーな曲作りが上手い方向に作用した楽曲だと思いますが…本作はロビー色が強すぎます!
アルコールや薬物の中毒でスランプ期にあったジムの代わりをロビーが務めるしかなかったのでしょうが、初期の名盤2作と比べるとかなりのパワーダウンを感じます。
アルバム最後の長尺曲”The Soft Parade”にしても、”The End”や”When the Music’s Over”と比べると印象は薄いです。
ドアーズを知る上で真っ先に聴くべきアルバムではありません。
なんならスタジオ盤では一番最後に聴いた方が良いと思います。
The Doors -『Morrison Hotel』
1970年にリリースされた5作目『Morrison Hotel』です。
後にラッパーのジェイ・Zがサンプリングした名曲”Roadhouse Blues”で始まる最もブルース色が濃いアルバムです。
このアルバムが制作されたのは、ジム・モリソンがステージ上で局部を晒して逮捕されるといったマイアミ事件以後、ステージから遠ざかっていた時期でした。
ただしこの「局部を晒した」というのは、ヴァル・キルマーがジム・モリソン役を演じた映画『ドアーズ』では実際にあった行為のように描かれていましたが、本当のところはそんなことをしたのかはっきりとはわかっていません。
この映画は大いに脚色もされているので、全部が全部を信じてはいけません。
それよりもジム・モリソンの恋人だったパメラ・カーソン役を演じたメグ・ライアンが飛びっきりかわいかったな~と言った軽い気持ちで観ましょう。
ただこの映画でヴァル・キルマー演じるジム・モリソンが、事件後にこのアルバムを制作する際にバンドのメンバーに「ブルースをやろう!」と心機一転するのはちょっぴり感動的でした。
またドアーズというバンドを復活させるには、ルーツに戻ってブルースを演奏するのが一番だという結論に至ったのでしょうか。
しかしその選択は間違っていませんでした!
何がやりたかったのかよくわからなかった前作『The Soft Parade』と比べると、本作はロックしています!
前々作『Waiting for the Sun』のアルバム・タイトルに付けられていながら未収録に終わった重厚なロック曲”Waiting for the Sun”も収録されています。
“You Make Me Real”や “Peace Frog”といった軽快なブルース・ロック曲の出来も良く、このアルバムはブルース好きの僕のハートに火を付けてくれました!
最初に聴くべきアルバムではありませんが、聴いて損はない好盤です!
そしてジム・モリソン時代のドアーズは、次のアルバムで最後の輝きを見せることになります!
The Doors -『L.A. Woman』
1971年にリリースされた6作目のアルバム『L.A. Woman』は、ジム・モリソンの生前最後のスタジオ盤です。
そして1stアルバムの頃のインスピレーションが戻ってきたかのような名曲”Riders on the Storm”を含む名作です!
この”Riders on the Storm”は、後に様々なカバー・バージョンが登場しました。
特にジミー・ヘリングが所属するジャム・バンドのワイドスプレッド・パニックがカバーしたバージョンがおすすめです!
この曲の歌詞は、ヒッチハイカーを装って車に乗り込み運転者を殺害していた実在の犯罪者ビリー・コックを題材にして作られた1953年の映画『ザ・ヒッチ・ハイカー』からインスピレーションを得てジムが書いています。
その歌詞の内容を踏まえて制作されたであろう不穏なバックの演奏も素晴らしいの一言です!
この曲だけでなく、本作制作後にL.A.を去り恋人のパメラと共にパリに移住することになるジムがその別れを歌詞に込めた”L.A. Woman”も名曲です。
この曲の歌詞は1963年に出版されたジョン・レチーの小節『City of Night』からもインスピレーションを受けています。
歌詞に”City of Night”という言葉が度々出てくるのは、その小節からの引用です。
他にもドアーズのブルース好きがにじみ出た”Been Down So Long”や、ジョン・リー・フッカーのカバー曲”Crawling King Snake”も聴き所です。
“The Changeling”でロビーが珍しくワウギターを弾いていたり、セッション・ミュージシャンのジェリー・シェフがベースで参加していたりとこれまでのアルバムとは違った部分も見受けられます。
本作収録の”Love Her Madly”は、全米チャートの11位を記録しておりヒットもしています。
1stと2nd以降のアルバムでは本作が最も出来が良いのですが…しかしこのアルバムを最後にオリジナルのドアーズに終止符が打たれたのはとても残念なことです。
“Riders on the Storm”や”L.A. Woman”が、ジム・モリソンの最後の輝きになろうとは…。
以上がジム・モリソン時代のドアーズのスタジオ盤でした。
次はおすすめのライブ盤をご紹介します。
ジム・モリソンが在籍していた時代のドアーズのおすすめのライブ・アルバムをご紹介!
The Doors – 『Absolutely Live』
まずはジム・モリソン存命時に公式リリースされたライブ盤の『Absolutely Live』です。
オリジナルのLP盤では下のようなジャケットでした。
CDでリイシューされた際にジャケット写真が変更されています。
本作の音源は、1969年~1970年に行われたライブから収録されています。
ハウス・アナウンスの後、ボ・ディドリーの”Who Do You Love?”のカバーから始まるのですが、ロビーのスライドギターが暴れ回ってます!
その次に”Alabama Song (Whiskey Bar)”から始まるメドレーが収録されています。
“Alabama Song (Whiskey Bar)”からジムの雄叫びが響くハウリン・ウルフのカバー曲”Back Door Man”に続き、オリジナル・アルバムでは未収録だった”Love Hides”と名曲”Five to One”の4曲がメドレーで演奏されています。
また”Who Do You Love?”や”Back Door Man”以外にもブルースの曲のカバーがあります。
それはウィリー・ディクソン作でマディ・ウォーターズが歌った”Close to You”のカバーです。
ドアーズはブルースも得意なバンドでした。
更にスタジオ盤には未収録だったブルース・ロック曲の”Build Me a Woman”とバラード曲の”Universal Mind”といったレア曲も収録されています。
“Light My Fire”は収録されてはいませんが、代わりに”Break On Through (To the Other Side) No. 2″といった別アレンジの名曲が収録されています。
そして”The End”の代わりに16分ちかくある “When the Music’s Over”や、ドアーズの作品としては初めて形となった大作”Celebration of the Lizard”が登場します。
この曲は、
●Lions in the Street
●Wake Up
●A Little Game
●The Hill Dwellers
●Not to Touch the Earth
●Names of the Kingdom
●The Palace of Exile
という7つのパートで構成されています。
その中の”Not to Touch the Earth”のみ3rdアルバム『Waiting for the Sun』にスタジオ録音版が収録されていました。
CD化の際は、これら7つのパートがトラック分けされています。
またCD盤には、”Dead Cats, Dead Rats”が追加収録されています。
そしてアルバムはファンキーな”Soul Kitchen”で幕を閉じます。
その後にリリースされた他のライブ盤と比べると、そこまで勢いのあるライブ盤ではないのですが、ドアーズの貴重なライブ音源が初めて世に出た記念碑的なアルバムです。
The Doors – 『Alive, She Cried』
1983年になってリリースされた公式ライブ盤の2作目『Alive, She Cried』です。
1968年~1970年の間に録音されたライブ音源で構成されています。
本作は、ヴァン・モリソンが所属していたバンド、ゼム(Them)の代表曲”Gloria”のカバーで始まります。
そして2曲目には今度はドアーズ自身の代表曲”Light My Fire”が収録されています。
10分近くに及ぶ”Light My Fire”は、特にレイのインプロヴィゼーションが凄まじく、オルガンが火を噴く勢いです!
ロビーはギターソロにビートルズの”Eleanor Rigby”を混ぜて遊び心満載で弾いています。
また本作はハウリン・ウルフのカバー曲”Little Red Rooster”(これまたウィリー・ディクソン作)や、ドアーズのオリジナル曲”Love Me Two Times”といったブルース曲も聴き所です。
そしてアルバム最後にはドアーズ結成のきかっけとなった曲”Moonlight Drive”が収録されています。
The Doors – 『Live at the Hollywood Bowl』
1968年7月5日のハリウッドボウルでのライブを収録したライブ盤『Live at the Hollywood Bowl』です。
1987年に下のジャケットでリリースされた際は、LP盤が6曲でCD盤が7曲収録された不完全なものでした。
それが2012年に『Live at the Bowl ’68』というアルバム名でライノ・レコードから完全盤がリリースされました。
本作は映像作品も有名で、僕が大学生の頃に初めて観たドアーズのライブ映像がこの作品でした。
VHSの時代です!
黒人の真似をして白人がおどけて踊ったというミンストレルのショーから着想を得たジム・モリソンのステージ・パフォーマンスが観れると楽しみにしていたのですが…本作のパフォーマンスは大人しくって落胆したのを思い出します。
その後、イギー・ポップを始めエアロスミスのスティーヴン・タイラーにも影響を与えたと当時の音楽雑誌に散々書かれていた伝説のジム・モリソンはここにはいませんでした。
全体を通して「大人しいドアーズ」で残念な気持ちになったのを懐かしく思い出します。
僕は本作の後で『Absolutely Live』や『Alive, She Cried』を聴いたのですが、先にその2作品を聴くことをおすすめします。
The Doors – 『In Concert』
『Absolutely Live』と『Alive, She Cried』を合わせて、更に追加曲を収録して1991年にリリースされた『In Concert』です。
追加収録されたのは、”Dead Cats, Dead Rats”、 “Roadhouse Blues”、 “The Unknown Soldier”、”The End”です。
現段階では『Absolutely Live』と『Alive, She Cried』を別々で購入するよりも安価だったりするので、こちらで聴く方がお得かも知れません!?
時期によっては値段が変わるかも知れないので、そこはご注意を!
The Doors – 『Live In Vancouver 1970』
1970年にカナダのバンクーバーで行われたライブ盤なのですが、本作にはドアーズのメンバーが敬愛するブルース界のレジェンド、アルバート・キングと共演した曲がいくつか収録されています。
それは”Little Red Rooster”と “Money”と”Rock Me”の3曲です。
音質はブート・レベルですが、アルバート・キングと共演した貴重な音源が聴けると言うことで…。
The Doors – 『Bright Midnight: Live in America』
2000年代に入ってからドアーズのライブ音源を数多くリリースしているブライト・ミッドナイトというレーベルからリリースされたライブ盤『Bright Midnight: Live in America』です。
僕は本作がリリースされた当時リアルタイムでタワレコで見かけて購入しました。
購入する決め手となったのは、 “The Crystal Ship”と”Touch Me”のライブ・バージョンが収録されていたからでした。
それだけの理由で購入しましたが、悪くないライブ盤です。
特に”Roadhouse Blues”でのロビーの凶悪なギターソロや、ジョン・コルトレーンの演奏で有名な”My Favorite Things”のテーマを挟んだ”Light My Fire”のギターソロ、そして”Break On Through (To the Other Side)”のレイのオルガン捌きは素晴らしかったです。
ただ収録曲によっては音質がブートレベルの曲もあり、決して音質は良好とは言えません…。
The Doors – 『Live in Hollywood: Highlights from the
1969年7月21日に行われたハリウッドにあるアクエリアス・シアターで行われたライブを収録した『Live in Hollywood: Highlights from the Aquarius Theater Performances』です。
レア曲”Universal Mind”はここにも収録されています。
“Five to One”でロビーのギターソロに火が付きます!
こちらも悪くないライブ盤です!
ドアーズのおすすめのベスト盤とボックス・セット
The Doors – 『The Best of the Doors』
2000年にリリースされたドアーズのベスト盤『The Best of the Doors』で、僕が人生で初めて購入したドアーズのアルバムがこちらになります。
当時の僕は、”Riders on the Storm”のミックス音源が4曲収録されたCD2枚組の限定盤で購入しました。
ディスク-1がベスト盤でディスク-2がそのリミックス曲を収録していました。
ベスト盤の方は、”Riders on the Storm”からゆったりと始まる選曲が好きで何度も何度も繰り返して聴きました。
目玉音源は、の1970年にNYのマディソン・スクエア・ガーデンで収録された”Roadhouse Blues”のライブ音源です。
この”Roadhouse Blues”は、ライブ・バージョンの中では最高のものです!
1997年にリリースされたボックス・セットにも収録されていたのでこれが初出ではないのですが、僕はこのベスト盤で初めて聴いて、そのあまりのかっこよさに衝撃を受けました!
イントロでジムが「ウォオオオーーーーーッペェェイッッ!!」と叫ぶ瞬間がたまらなくかっこいいです!
ドアーズのベスト盤が欲しいのなら、これをおすすめします!
The Doors – 『The Doors: Box Set』
1997年にCD4枚組でリリースされたドアーズにとって初めてのボックス・セットです。
ディスク-1は、『Without a Safety Net』というライブ音源やデモ音源などのレア・トラックで構成されています。
ティスク-2は、『The Best of the Doors』に収録されていた”Roadhouse Blues”の最高のライブ・バージョンから始まる1970年NYマディソン・スクエア・ガーデンのライブが10曲収録されています。
ここには”Celebration of the Lizard”も収録されており、いい感じに酒焼けでしゃがれたジムのボーカルがかっこいいライブ音源です。
ディスク-3は、『The Future Ain’t What It Used to Be』というライブ音源やデモ音源などのレア・トラックで構成されています。
そしてディスク-4が、ジム以外の3人が選んだバンド・チョイスのお気に入り曲が収録されています。
何と言っても目玉は、ティスク-2の『Live in New York』ですね!
ちなみにCD2枚ずつでわけられた『Box Set Vol.1』と『Box Set Vol.2』というのも存在しています。
更に2000年にボックス・セットの4枚のCDから15曲をチョイスした『Essential Rarities』というCD1枚で購入しやすいベスト盤もリリースされています。
もちろんこの『Essential Rarities』にも”Roadhouse Blues”の最高のライブ・バージョンは収録されています。
ちなみに『Essential Rarities』と『The Best of the Doors』の”Roadhouse Blues”は、いきなり曲が始まりますが、『The Doors: Box Set』のディスク-2に収録されているバージョンはイントロ前にジムのMC付きです。
どのバージョンで購入するかは、みなさんのお好みで…。
The Doors – 『The Doors: Box Set』
ドアーズの全6作品のスタジオ・アルバムに『Essential Rarities』がオマケで付属したCD7枚組のボックス・セットです。
僕はこのボックス・セットでドアーズのスタジオ・アルバムを全て揃えました。
手っ取り早くドアーズのスタジオ・アルバムを揃えたいといった方におすすめです。
どうしてもドアーズ作品を全て聴きたいといった方には、いきなりこのボックス・セットから購入するのもありだと思います。
以上、【ジム・モリソンがいた時代のドアーズのおすすめアルバムをまとめてご紹介!】でした。
残念ながら2013年にレイ・マンザレクが亡くなってしまいましたが、ロビー・クリーガーとジョン・デンスモアは、このブログを書いている時点では今も健在です。
このブログ記事から多くの人にドアーズのことを知って頂ければ…と思います。
「今回ドアーズを初めて知ったよ」といった方や、「ドアーズの存在は知っていたけれどもどの作品から聞いたらいいのか迷っていた」といったドアーズ初心者さんの入門編になれたら幸いです。
ぜひこのブログ記事をブックマークやお気に入り登録、またはSNSでリンクを投稿して頂ければ嬉しいです。
他に関連するお勧め記事
ドアーズのおすすめアルバムを5作品選んでランキング形式でご紹介!
ローウェル・ジョージがいた時代のリトル・フィートのおすすめアルバムをまとめてご紹介!
レッド・ツェッペリンのおすすめアルバムを5作品選んでランキング形式でご紹介!
ローウェル・ジョージがいた時代のリトル・フィートのおすすめアルバムをまとめてご紹介!
天使のファルセットと悪魔のシャウトを併せ持った不世出の天才シンガーソングライター ジェフ・バックリィのおすすめアルバムをまとめてご紹介!
※このブログに掲載しているイラストや写真、テキスト等の無断引用・無断借用・無断転載・無断使用は固くお断りしております。ご利用はご遠慮ください。