
2018/01/16
メルヴィン・スパークスの幻のレア・グルーヴ作品『I’m Funky Now』をご紹介!
Melvin Sparks – 『I’m Funky Now』
01.I’m Funky Now
02.Disco Booty
03.Make It Good
04.Love Tones
05.The Truth Hurts
06.You’re Gonna Make It
07.I’m Gonna Funk You Up
昨年末に発売されていたジャズ・ファンク系ギタリストのメルヴィン・スパークスの初CD化作品の『I’m Funky Now』を購入しました。
どうやらこのアルバムは、メルヴィンにとって5枚目のリーダー作となった1975年の『Melvin Sparks ’75』に続く6枚目のアルバムとして制作されていたようですが陽の目を浴びずに今までずっと眠っていた幻のアルバムのようです。
一応当時はアセテート盤まで作られていたようですが、リリースされずに眠っていた作品のようです。
それもそのはず?
このアルバム……すごく中途半端な作品に感じます。
メルヴィンにしては珍しく1曲目からファズを使ってギターの音を歪ませています。
メルヴィン・スパークスのイメージと言えば、やはりクリーントーンのフルアコでベンソン風のギターソロを弾きまくるようなギタリストですが、このアルバムの冒頭の”I’m Funky Now”では、歪んだギターでリフを弾くだけでそもそもギターソロ自体出てきません……。
レア・グルーヴ系のベースがブリブリいうファンク曲としては、かなりのかっこよさですが「この曲……本当にメルヴィン・スパークスは参加してるの?」という感じで全く存在感を感じません……。
また唯一「メルヴィン・スパークス作」とライナーノーツに記載されている2曲目の”Disco Booty”も、このアルバムがリリースされる予定だった1976年の流行に合わせてディスコ・ミュージック的な曲名になっていますが、ディスコ・ファンクって程でもない中途半端なノリなんで普通のレア・グルーヴ系の曲に感じます。
この曲ではワウも使ったギターソロが少しだけ登場しますが、これも「本当にメルヴィン・スパークスが弾いてるの?」という感じで、いつもの「らしさ」が全く感じられません。
続く3曲目の”Make It Good”も冒頭から歪ませたギターの音で始まるのですが、「この曲の展開……何度か聴いたことがあるぞ?」って感じのコード進行です。
これはメルヴィン・ファンならお馴染みのコード進行なんですね。
元はと言えば、1971年の『Spark Plug』の3曲目に収録されていた”Conjunction Mars”という曲です。
またこのコード進行は、メルヴィンの生前最後のアルバムで2006年にリリースされた『Groove On Up』の2曲目収録の”Cranberry Sunshine”という曲でも使われています。
晩年のメルヴィンは、この曲をライヴでよく演奏していました。どうやらメルヴィンはこのコード進行がお気に入りだったんでしょう。
ちなみに今回のアルバム収録のこの”Make It Good”でもギターソロは弾いていますが、ジャズと言うよりもロックに近いフレージングで弾いていて、これまたメルヴィンらしくない演奏です……。
4曲目のバラードではメルヴィンのギターソロはありません。
5曲目では最初の方はホーン隊の演奏が中心で進んで行き、エレピのソロがあってからようやく3分40秒を過ぎたあたりからメルヴィンのギターソロが始まりますが、このソロでもギターを歪ませてロック的なフレージングで弾いています。
全く「らしさ」のないギターソロです。
まるで「他の誰か」が弾いているよう……。
6曲目で少し「らしさ」のあるクリーントーンのギターが登場します。
がほとんどリフを弾く程度でソロも控えめ……。
いつものクロマチックラインを弾きまくりではなく、まるでエリック・ゲイルのようなスライド後にビブラートを少し掛けたフレージング……。
最後の7曲目ではメルヴィンがファットバックな声で歌も披露しています。
そして最後にこれまたエフェクティヴなギターの音でロック的フレーズを軽く弾いてアルバムは終わります。
結局、全7曲を通していつものメルヴィン・スパークス「らしさ」のあるギタープレイは全く聴けませんでした。
一応、ファンキーな曲が並んでいるので「レア・グルーヴ」系のちょっとB級感覚なファンク・アルバムとしてなら楽しめます。
しかし一級品のジャズ・ファンク・アルバムとしては失格です。
だからと言ってこの時代の流行に合わせたディスコ音楽としても違うし、ファンク・ロックには程遠い脆弱感……。
これは未発表になりますわ……。
と、全曲通して聴いて納得するアルバムでした。(笑)
ただB級レア・グルーヴ好きの方にはお勧めです。(ちなみに僕もB級レア・グルーヴとしてならこのアルバム好きです。)
ジャズ・ファンク・ギタリストとしてのメルヴィンの魅力が感じられないアルバムってだけで、特にダメな曲が収録されているわけではないです。
ただ「このアルバムってメルヴィン・スパークス名義で作る必要あったのかな?」という疑問が沸いてきます。
まぁ、だから今の今まで未発表だったんだろう!……と、再度納得するアルバムでした。(笑)
メルヴィン・スパークスのアルバムは全て持っておきたい!っていう人とかB級レア・グルーヴ系がお好きな方にはお勧めです♪
フルアコのクリーントーンでギターソロ弾きまくり!のジャズ・ファンク・アルバムではないので、そこはご注意を!
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