
2019/05/04
合衆国の敵となったウルヴァリンを止めることが出来るのか?『ウルヴァリン : エネミー・オブ・ステイト』を読もう!
合衆国の敵となったウルヴァリンが襲い掛かる!名作コミック『ウルヴァリン : エネミー・オブ・ステイト』をご紹介します。
– “合衆国の敵” -「その名はウルヴァリン」
アメコミにおいて、味方同士で闘うことはよくあることでもあります。
例えば、2016年に公開された大ヒット映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』においても、アベンジャーズの仲間同士であるキャプテン・アメリカとアイアンマンが闘いを繰り広げています。
しかし『シビル・ウォー』の闘いは考え方の違いによるもので、本当に「憎むべき敵」として闘っていたわけではありませんでした。
もうひとつ、アメコミでよくあるのが敵による洗脳で操られることです。
アメコミでは必ずと言っていいほど、テレパシーを用いた精神攻撃を得意とする敵が出てきます。
そしてヒーロー・チームの誰かが操られて闘わざるを得ないなんてことは、しょっちゅうのように起きています。
X-MENにおいては、サイクロップスの弟であるハボックがその役目です。
「身内が操られて血縁関係の者同士で争う」のは、パターン化されていますが確かに面白みがあります。
何だかんだで説得されるのはわかってはいますが、いつもの如く操られるハボックがここぞとばかりに兄のサイクロップスに本音の不満をぶちまけて闘う物語は面白かったりもします。
毎度毎度のことではありますが、ハボックは敵に洗脳されている時の方が活き活きしてるんじゃないだろうか?と思うぐらいです。(笑)
味方にいるとあまり役に立たないのにね……。(笑)
どちらかというと、心に不満を抱えたB級キャラ(失礼。笑)が操られることの方が多いんじゃないかな?と個人的には感じることがあります。
しかし今回ご紹介する『ウルヴァリン : エネミー・オブ・ステイト』では、いつも他の誰よりも精神面でも肉体面でも強くあるウルヴァリンが操られることになります。
この珍しい(?)設定が本書の読みどころでもあります。
『ウルヴァリン : エネミー・オブ・ステイト』
本書の下となったのは2004年12月~2005年11月にマーク・ミラーが脚本を担当した月刊誌『ウルヴァリン』#20~32の12話分です
それを2013年に日本語コミック化してまとめたのが本書『ウルヴァリン : エネミー・オブ・ステイト』になります。
ウルヴァリンと関係の深いX-MENだけでなくキャプテン・アメリカやファンタスティック・フォー等、数多くのマーベル・コミックの名物キャラクターが登場します。
この時期のX-MENは、2004年に始まった『アストニッシングX-MEN』シリーズの頃になります。
なので、ウルヴァリンも重要なチーム・メンバーだった頃です。
サイクロップスを中心にビーストにエマ・フロストやキティ・プライドがX-MENのチームにいます。
復活したばかりのコロッサスやガンビットも登場します。
しかし彼らだけでは、敵に操られたウルヴァリンを止めることが出来ません!
最終的にはキャプテン・アメリカやアイアンマンまでもが出動しなくてはいけないほど、ウルヴァリンが暴れ出すと手に負えない存在であることが本書から伝わってきます。
読みごたえたっぷりの分厚いコミック!
本書は全部で352ページもある大型コミックになります。
かなり分厚い本ですので、なかなか最後まで読み終えるのには時間が掛かります。
物語の方も、数多くのキャラクターが登場して複雑に絡み合います。
ウルヴァリンも敵になったり味方になったり……と、「今どっちの立場なの?」と、初見では忘れてしまいそうになるぐらいではあります。(笑)
しかしそれぐらいに充実した物語ですので、値段からいうとこのページ数と複雑な内容ならお得な感じもします。
一回だけでなく、何度も何度も繰り返して読むことでより深く楽しめる物語となっております。
ウルヴァリンと日本の関係
さて、本書の物語のそもそもの始まりはウルヴァリンと関係性が深い日本の国から始まります。
かつての知人から助けを求められ日本に向かったウルヴァリンは、不意打ちで忍者部隊の急襲を受けます。
これは悪の組織ハンドが仕掛けた罠でした。
しかし幾度となく闘ってきたハンドの忍者部隊など、ウルヴァリンにとっては赤子の手をひねるも同然の雑魚でしかありません。
あっという間に忍者部隊を殲滅するウルヴァリンでしたが……ありえない一撃を受けてしまいます。
あのウルヴァリン程の強者が、気配も感じぬうちに背後を取られ刀で串刺しにされるのでした。
それは今回の最大の敵ゴーゴンというヴィランでした。
こうしてハンドの手に落ちたウルヴァリンは、洗脳されてX-MENに襲い掛かることになります。
まず標的となったのが、美しき暗殺者エレクトラでした。
本書では後々にウルヴァリンとエレクトラが共闘して活躍しますので、エレクトラ・ファンの方にもおすすめの内容となっております。
洗脳されX-MENやアベンジャーズ達を相手に大暴れしたウルヴァリンでしたが、最終的には正気に戻って再び日本に向かうことになります。
そして最後にはゴーゴンとの一騎打ちが待ち構えています!
この最終決戦が本書の最大の山場であります!
強敵ゴーゴンを相手に劣勢に追いやられていたウルヴァリンが、頭を使い勝利します。
このアイデアがなかなか面白かったので、ぜひ続きはコミックで読んでみて下さい。
歴戦の経験を活かしたさすがの闘いっぷりです!
囚人番号『ゼロ』
『ウルヴァリン : エネミー・オブ・ステイト』には、オマケで【囚人番号『ゼロ』】という作品も収録されています。
第二次世界大戦時代の1942年のポーランドのソビボル収容所での出来事が物語の舞台となります。
そこは、ナチス・ドイツがユダヤ人を収監して強制労働をさせている悲惨な場所です。
雪の降る寒い収容所にラインハルト・ハイドリヒ大将の命令で、バウマン少佐がこの収容所に配属されることになりました。
そこに収監された者たちは、ナチス・ドイツによって人間扱いされていないユダヤ人ばかりでした。
彼らが生きるか死ぬかは、バウマン少佐の気分次第でした。
気に入らない者や逆らうものがいれば、すぐに銃殺というやりたい放題の環境です。
多くのユダヤ人収監者たちは死の恐怖に怯え、逆らう者は一人としていませんでした……「ある男」を除いて。
その中に、雪の降る寒い冬なのにタンクトップ一枚の薄着の収監者が一人混じっていました。
多くのユダヤ人たちが死の恐怖から必死で働いているのに、その男だけはボサっと突っ立てるだけで働こうとしません。
それを見かねた兵士がその男を怒鳴っていると、バウマン少佐が「膝を撃て!」と命令します。
しかし膝を撃ち抜かれても悲鳴をあげることもありません。
寒さのせいで頭が狂ったのだろうと、もう片方の膝も撃ち抜くように命令を下します。
両方の膝を銃で撃ち抜かれても超え一つ上げないその男に「よし頭を撃ち抜け!」と最後の審判が下されることになりました。
多くの看守や囚人が見守る中、見せしめのためその男はボロ雑巾の如く始末されてしまいました。
一言もしゃべらない不気味な奴を始末して一件落着した少佐は、焼却炉でその男の死体を燃やすように命令します。
その夜、自室の窓の外から視線を感じたバウマン少佐が外に出てみると……昼に殺したはずのその男が突っ立ていました!
もう一度中で頭を撃ち抜いて一安心する少佐……しかし次の日、他の囚人たちに交じってその男が突っ立ていました。
何度も何度も……姿を現す度に銃で頭を撃ち抜いても次の日には、その男は広場に生きて姿を現します。
次第に頭がおかしくなっていく少佐は自室の部屋にその男を連れ込んで、椅子に縛り付け何度も何度も割れたワイングラスの先端で切りつけます。
しかし悲鳴一つ上げず不気味に笑うその男……ついにはその男を床に倒した勢いで部屋の物が倒れてしまい火が付いてしまいます。
バウマン少佐はこの火事で亡くなってしまうのですが……その男は次の日もまたその次の日も他の囚人たちと同じように広場に姿を現します。
何も知らないままバウマン少佐の後任の責任者がソビボル収容所に送られることになりました。
囚人だと思っていたその不死の男は、いつものように広場に立っています。
真実は真逆でした。
そう、真の囚人はその男の呪いから逃れることの出来ないナチス・ドイツの兵隊たちの方でした……。
最後の最後にサイコ・スリラーのような読み応えのある作品【囚人番号『ゼロ』】も収録されています。
以上、【合衆国の敵となったウルヴァリンを止めることが出来るのか?『ウルヴァリン : エネミー・オブ・ステイト』を読もう!】でした。
オマケの【囚人番号『ゼロ』】も含めて読みごたえたっぷりの352ページです。
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