2019/04/25
リロードされた驚くべきX-MEN 2冊の『アストニッシングX-MEN』を読もう!
新時代のX-MENの始まりを告げる2冊の名作『アストニッシングX-MEN : ギフテッド』と『アストニッシングX-MEN : デンジャラス』のご紹介します。
大人も楽しめるドラマ重視のアメコミが誕生!
それまでアメコミと言えば「子供の読み物」というイメージが強かった従来のコミック誌が、21世紀に入って新たな改革が行われました。
2001年のコミック誌の改革により、よりドラマ性を重視したシビアな内容が濃くなり、大人が読んでも楽しめる作風のものが多く出版されるようになります。
それはX-MENシリーズにも影響を及ぼし、それまで以上にキャラクターの心情が深く描かれるようになっていきます。
このドラマ性を重視したリアリティのある作風に、更にそれまでのX-MEN本来の姿への原点回帰を足した”X-MENリロード”キャンペーンが2004年頃に始まります。
その中心となったのが今回ご紹介する『アストニッシングX-MEN』シリーズです。
「異常な」から「驚くべき」への変化
さて、それまでのX-MENのタイトルには、”uncanny”という形容詞が付けられていました。
“Uncanny X-MEN”と書いて日本語では『アンキャニィX-MEN』と読みます。
“uncanny”とは、助動詞の”can”「~できる」の語尾に”~ny”を付けて形容詞化した”canny”「抜け目のない」の頭に否定を表す”un~”を付けた言葉です。
“uncanny”の意味は、「〔気味が悪いほど〕異様な」という意味です。
これは能力を持たない人間にとって、特殊能力を持ったミュータントは「〔気味が悪いほど〕異様な」姿に見えたからでしょう。
しかし”uncanny”には、別の意味もあります。
それは「〔超自然的なほど〕感覚が鋭い、洞察力が優れた」という意味も持っています。
ミュータント側から考えた場合は、こちらの意味の方が適切だと思います。
人間もしくはミュータント、どちらの立場から考えても異なる意味合いを持つような素晴らしいタイトルだと思います。
しかし2004年に始まった”X-MENリロード”キャンペーンの作品からは、”astonishing”という形容詞が付けられるようになりました。
“astonishing”は、動詞の”astonish”「びっくりさせる」に”~ing”を付けて形容詞化した単語です。
「驚くべき、びっくりさせるような」という意味があります。
何かそれまでの人間の立場からもミュータントの立場からも受け取れた”uncanny”に対して、”astonishing”の方はよりミュータント側から人間を「びっくりさせるような」能動的な意味合いを感じたりします。
そのタイトルにあっているかのように、本作のX-MENは積極的に「自分達は人間を攻撃する敵ではなく、逆に守ってあげるヒーローなんだ!」と主張するように行動を起こします。
人間達からの差別と闘うには、被害者ぶるよりも逆に自分達から行動を起こして「認めてもらう」ことにシフトしたかのようです。
これはどこか現実社会でも言えそうですよね。
自分から行動を起こさずに「私は被害者……もっと気持ちを察してよ!」と言うだけでは何も変わりません。
むしろ逆にそういう人の方が傲慢だとも考えられます。
他人を変えようとせずに、自分から変わるべきだと思います。
人から認められたければ、自分から「驚くべき」ようなことをしないといけません。
そういったわけで、この時期のX-MEN達もヒーローとしての自覚を持って行動を起こします。
今回はそんな新時代のX-MENを象徴する名作となった2004年の『アストニッシングX-MEN』シリーズをご紹介したいと思います。
2冊の名作『アストニッシングX-MEN : ギフテッド』と『アストニッシングX-MEN : デンジャラス』の日本語版コミック
本国アメリカでは2004年に始まった『アストニッシングX-MEN』シリーズは、2010年になってようやく邦訳コミック化されました。
どちらのコミックもライターに『バフィー 〜恋する十字架〜』を手掛けたジョス・ウェドンが担当しています。
監督業や脚本家としても活動するジョス・ウェドンの監修の下、本作はまるでドラマを見ているかのようなキャラクターの深い心情が描かれています。
そんなジョスとタッグを組んで絵を描くのはジョン・カサディです。
ジョン・カサディは、これ以外にもキャプテン・アメリカやアメコミ版のスター・ウォーズなどの作品も描いています。
これまでの派手なX-MENの絵に比べると、落ち着いていて地味な感じを受けるのですが……そのおかげでシビアな内容に適した絵になっているのも事実です。
それでは順番にご紹介していきたいと思います。
『アストニッシングX-MEN : ギフテッド』
タイトルにある”gifted”とは、「天賦の才能がある」の意味です。
“gift”には、「プレゼント」以外にも「〔神から与えられた〕才能」の意味があります。
今回の物語は、ミュータント能力を無くすことのできる新薬”キュア”が問題となって事件が起こります。
実写版映画『X-MEN ファイナルディシジョン』でも登場したドクター・ラオが開発した薬です。
本作は『X-MEN ファイナルディシジョン』とは全く別の物語なのですが、本作の方が『X-MEN ファイナルディシジョン』の制作に影響を与えています。
またこの時期は、サイクロップスの妻であったジーン・グレイが戦死して間もない頃でした。(別冊解説にマグニートーとの闘いによって戦士とありますが、マグニートーに化けたゾーンというミュータントとの闘い”Planet X”事件で戦死しています。)
ジーン亡き後、悲しみに暮れるウルヴァリンをよそに、当のサイクロップスは、すぐに浮気相手でも会ったエマ(元ホワイト・クィーン)とくっつきます。
このことを作中でもウルヴァリンが避難するシーンがあるのですが……これには深い理由があっての事でした。
詳しくはコミックを読んで確認してみて下さい。
ちなみにそれまでの大人数のX-チームではなく、この時期のX-MENは5人と必要最低限のメンバーで行動しています。
といっても、初代X-MENも5人でしたから、この人数制限も原点回帰のひとつと言えそうですね。(すぐに1人増えますが……。)
しかし5人といっても強力なミュータントばかりです!
●サイクロップス
●ウルヴァリン
●ビースト
●エマ
●キティ(シャドウキャット)
リーダーで遠隔攻撃の出来るサイクロップス、テレパシーやサイキック能力だけでなく身体をダイアモンドにして防御できるエマ、どんな傷も瞬時に回復する特攻隊調のウルヴァリン、天才的頭脳を持ちながらも獣のような攻撃力と瞬発力を持つビースト、透過能力を持ちどんな場所にも入り込むことの出来るキティ……もしここにストームでもいたとしたら最強のチームが出来上がりますね!(笑)
オリジナルメンバーのサイクロップスとビースト以外の3人も1980年にまでに登場している古参キャラクターばかりになります。
あえて新時代のX-MENを始めるにあたって、古いキャラクターばかりで新チームを作ったのが興味深い点です。
しかも面白いのが、1980年に新キャラクターとして初登場間もない子供だったキティは、さっそくホワイト・クィーン時代のエマに襲撃された過去を持ちます。
その時にホワイト・クィーンが所属するヘルファイアー・クラブに潜入して囚われの身に合ったX-MENを救出したのが子供時代のキティでした。
なので、所々でサイクロップスには頼りつつも、その恋人のエマの事を疑っているキティが面白かったりもします。
エマが調子に乗るとキティが嫌味を言うシーンはなかなか笑えます。(笑)
しかしそう言いつつも、ピンチの時にはお互いが協力し合う仲間同士ではあります。
まるで「嫁姑」のような「心からは憎んではいないけれども、素直にはなれない」といった感じです。(笑)
もちろん新薬”キュア”を巡って強敵ブレイク・ワールドのオルドとの闘いが繰り広げられます。
その闘いの最中に……ある人物が生きていたことが判明します!
といっても、次巻『アストニッシングX-MEN : デンジャラス』の表紙に答えが出ているので、ここでもすぐに発表したいと思います。
それはキティと恋仲にあったコロッサスでした!
このコロッサスとキティの再開のシーンがとても印象的です。
“キュア”を保管している研究所の地下で敵に追われ逃げるキティ……
絶体絶命のピンチのに、背後の扉が開き……そこに現れたのがコロッサスでした。
ミュータントのみが感染する致死のウィルス『レガシー・ウィルス』が原因で死んだものだと考えられていたコロッサスは、その研究所内に閉じ込められたまま生きていました。
敵の撃つビームを身体を透過して避けるキティ……その身体をすり抜けてコロッサスが敵に襲い掛かります。
コロッサスが通り抜けた自分の身体に胸に手を当てて驚いた表情のキティ……なんとも悲しい再開となりました。
ちなみに復活したコロッサスは、さっそく大活躍します。
ウルヴァリンの「いつものアレ…行ってみるか。」の合図と共にコロッサスの怪力でウルヴァリンを敵目掛けて投げ飛ばす『ファストボール・スペシャル』で今回の闘いが締めくくられます。
こうして無事コロッサスが復活したX-MENでしたが……新薬”キュア”との間の問題はまだまだ続きます。
『アストニッシングX-MEN : デンジャラス』
『アストニッシングX-MEN : ギフテッド』の続きとなる『アストニッシングX-MEN : デンジャラス』です。
さっそく表紙と裏表紙にコロッサスが写ってますね。(笑)
怪力キャラが足りてなかった新X-MENもコロッサスの復活で解決しました。(笑)
復活してさっそく大忙しのコロッサスは、本作でも大活躍します!
僕の勝手なイメージかもしれませんが……日本の漫画だとこういった巨体怪力キャラは噛ませ役であまり見せ場がないような気がします⁉
しかしアメコミ系だと、このコロッサス以外にもハルクやファンタスティック・フォーのザ・シングのような筋肉ムキムキ・キャラが結構活躍するように思います。
そこはやはりマッチョ好きのアメリカンならではな感じなのでしょうか⁉
ちなみに本作では、ウルヴァリンではなく恋人のキティを『ファストボール・スペシャル』で敵に投げつけたりします。(笑)
さて、本作『アストニッシングX-MEN : デンジャラス』は、そのタイトル通りにデンジャーという敵と闘います。
これはX-MEN達がトレーニングに使っていたデンジャー・ルームが具現化した敵になります。
しかもその原因がプロフェッサーXだったりもします。
以前このブログでもご紹介していた『X-MEN : デッドリージェネシス』でもそうなのですが、理想家のプロフェッサーXは、自分の理想のためなら割と手段を選んでいないような気がしなくもないです……。
今回はデンジャー・ルームが人型ロボットに変化した強敵デンジャーとの闘いが繰り広げられます。
ほぼ最強クラスの能力を持つ強敵なのですが……先のネタバレをするとX-MENの仲間になります。
後にアベンジャーズとの闘いに負けて、ミュータント刑務所に閉じ込められたサイクロップスを救い出すのはマグニートーとデンジャー達でした。
また『ユートピア』を巡る物語でも、ローグとガンビットと共にデンジャーが行動しています。
しかもデンジャーとガンビットはその後も『All-New X-Factor』で同じチームに所属していたりもします。
何だかんだでその後もX-チームの重要なキャラになるデンジャーの初登場回がこの『アストニッシングX-MEN : デンジャラス』になります。
以上、【リロードされた驚くべきX-MEN 2冊の『アストニッシングX-MEN』を読もう!】のご紹介でした。
よりドラマ性を重視した『アストニッシングX-MEN』シリーズのこの2冊をぜひアメコミ好きの方は読んでみてはいかがでしょうか。
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