2023/01/27
メキシコの「誘拐ビジネス」の闇に迫った衝撃作『母の聖戦』を観に行きました。
実話をベースにした衝撃作『母の聖戦』
メキシコの暗部に迫ったドキュメンタリータッチの傑作!
昨日は最近気になっていた映画『母の聖戦』を観てきました。
昨年末にホイットニー・ヒューストンの半生を描いた伝記映画『I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を観て以来の映画館での鑑賞となりました。
ホイットニー・ヒューストンの半生を描いた伝記映画『I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を観に行きました。
といっても年こそまたいでますが1ヵ月後なので期間にしたらすぐなのですがね…。
映画『母の聖戦』のおおまかなストーリー
今回観たこの映画『母の聖戦』は、メキシコのギャングに娘を誘拐された母シエロが犯人を追い詰めていくという物語です。
何の変哲もない一般市民のシエロがただただ娘を取り戻したいという想いだけを胸にあらゆる手段を使って犯人を捜しまわります。
しかしその裏では町全体を牛耳っている巨大な犯罪組織の影が…。
そして衝撃の結末が待ち構えています!
全ての登場人物に「意味」がある⁉
本編には、母シエロとその娘ラウラ以外にも別居中の元旦那グスタボや娘の彼氏のリサンドロ等様々な登場人物が出てきます。
この家族以外にも娘を誘拐してすぐにシエロに身代金を要求するギャング風の青年プーマや、町の物知り爺さん的存在のキケ、そして町に赴任してきたばかりの警備軍を率いるラマルケ中尉等のキャラクターも登場します。
何気ない登場人物でも「どこかで繋がっている」のと「台詞で詳しくは語ってはいないけれど、この人物も怪しい⁉」と思わせる伏線のようなものが物語中にクモの糸のように張られていました。
この中で娘を誘拐した真犯人は一体誰だったのか?といったサスペンス的な要素もこの映画には含まれていました。
急に訪れるラストシーン
この映画は約2時間20分とそこそこ長い上映時間なのですが、ラストシーンは突然訪れます。
シエロは最終的に最初に身代金を要求してきたプーマを追い詰めるのですが、彼は最後まで「本当のこと」を話しません。
おそらく予備知識なくこの映画を観たら突然訪れるラストシーンを見て「え?これで終わり?」となることでしょう。
僕も一瞬そう感じました。
しかしこの作品が実在した女性ミリアム・ロドリゲスの実話をベースに作られたことを知っていたらなんとなく見方も変わります。
ミリアム・ロドリゲスは、メキシコの犯罪組織に娘カレンを誘拐された実在していた女性です。
彼女は自力で10人にも及ぶ犯人を逮捕に追いやりました。
しかし実在していたと過去形になっているのは、残念ながら彼女は2017年の「母の日」に複数の襲撃犯に数回にわたって銃で撃たれ亡くなりました。
なんともむごい事件です…。
「事実は小説よりも奇なり」とはまさにこのことで、この映画『母の聖戦』に出てくるような身代金目当ての「誘拐ビジネス」を行う犯罪組織は現実に存在しているということです。
しかしこういった内容を知らずに映画のラストシーンを観たのなら「これで終わり?最後どうなったの?」と感じられると思います。
最後のシーンで主人公シエロが見せた微笑みは…
娘を思い遣る母の「天使の微笑み」なのか?
それとも自分(シエロ)の最期を悟った「死神の微笑み」なのか?
このラストシーンはどちらとも取れる上手い作りになっていました。
ラストシーンが終わった後のエンドロールでシエロのモデルとなった実在の女性にこの映画を捧げるとテロップが出てきます。
僕はこのテロップで気付きました。
僕自身は過去にもこういったメキシコの闇に迫った映画を観たり本を読んだりしたことはあるのですが、何年か前にミリアム・ロドリゲスの事件の内容を読んだ事がありました。
そのため僕自身はシエロの身に良からぬことが起きたのでは?と感じました。
このラストシーンの前日にシエロはプーマを追い詰めていたのですが、彼から「身の安全を考えた方がいい」といった風に警告を受けていましたからね。
現実のミリアム・ロドリゲスの事件では悲惨な最期を迎えたからです。
しかしこの映画では、「1%でも希望がある限り娘の無事を信じ続ける母の想い」が伝わってきました。
あの「微笑み」の表情には「希望」も感じられました。
台詞がなくっても表情だけで色々と考察できるような素晴らしい演出と演技ですね。
ちなみに劇中に一切劇伴が流れないので、それが余計に緊張感を増してくれています。
本来なら人の気持ちを揺さぶる「音楽」を使うことは映画に取って常套手段なのですが、あえて「音楽の効果」を使わないことで逆にフィクションぽくないリアリティを感じさせてくれています。
こういった部分もドキュメンタリータッチで上手い演出です。
邦題では「母の物語」だが現代では「市民」がテーマの映画
ちなみにこの映画の原題は『La Civil(市民)』です。
邦題が「母の聖戦」なのでどうしても僕ら日本人がこの映画を観ると「娘を助けるために命を懸ける母の物語」に感じてしまいますね。
しかもシエロの元旦那のグスタボがこれまた絵に描いたようなダメ男なのもそう感じさせる一因です。
しかし原題にある通りこの物語は「市民」がテーマだと思います。
そう感じさせるのが登場人物のひとりキケという老人です。
キケは「この町のことなら何でも知ってる」「町の住人は全員顔見知り」といった物知り老人です。
最初の方で何気なく登場したこの老人がキーパーソンでもあります。
メキシコのこういった犯罪組織は「町の住人」を上手く支配して犯罪行為を行っています。
日本では信じられないようなことではありますが、メキシコ以外でも海外の国では「町ぐるみ」で犯罪組織に加担しているような場所は数多く存在しています。
僕自身も海外旅行が好きで若い頃にはちょくちょく旅行したり、また英語翻訳の勉強をしていた頃に外国人の友達や同じく海外旅行好きの日本人の友達等からも色々と海外の情報を聞いたことがあります。
海外ではどの町も「足を踏み入れてはいけない場所」があるとかないとか…。
まるで都市伝説のようなお話ですが、それも全く嘘ではないのかな?と思います。
20年ほど前に同じ学校で知り合った中国人の女性友達がいたのですが、彼女がこう言っていたのを今でも鮮明に覚えています。
「日本では女の子が夜9時以降に1人でコンビニに行っているのを見かけて信じられないと思ったよ。私の国ではありえない!すぐに襲われる!」と言っていました。
日本も必ずしも夜間の女性一人の外出は絶対に安全といったわけではありませんが、しかし他の海外の国から比べると襲われる可能性はかなり低いはずです。
こういった過去の僕自身の見聞きした体験や、こういった映画を観た時に「日本は安全な国で良かった…」とつくづく感じます。
『母の聖戦』もとい『La Civil(市民)』をご興味がありましたらぜひ観てみて下さい!
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