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2017/09/14

PR戦略による巧みな情報戦『戦争広告代理店』を読もう!

PR戦略による巧みな情報戦『戦争広告代理店』のタイトル画像

情報操作とボスニア紛争

 

なぜこの本を読んだのか?

 

もとはと言えば、全く別の本で紹介されていて気になったので購入しました。

 

別の民間軍事会社(傭兵)についての本にこちらの本が紹介されていました、

 

また僕がそういった類の本をよく購入していたため、Amazonのお勧めの本でも度々表示されてはいました。

 

それで気になって買って読んでみました。

 

当たりでした!

 

そもそも昔からノンフィクション系の本が好きでよく読んでいます。

 

脚色はしていてもいいので、全くの創作の話よりもリアリティのある実際に起きた話の方が好きです。

 

また普段自分が生活していて、知る機会のないはずの物語にこそ注目すべき内容が多くあります。

 

自分たちが平和に暮らせているのは、実は周りの国の努力があってこそ!だったりします。

 

まさかこうやって日本で平和な生活が出来ているのは、海外の他の国々は関係なくって自分たちだけのおかげだ!なんて思うほど無知ではいたくありません。

 

また自分たちの国が平和であれば他の国なんて関係ないや~!みたいな考え方は好きではありません。

 

それに一旦、世界に目をやれば「平和な世界」なんてそんな簡単に実現できるものではないなんだな……と感じます。

 

そういったわけで、この本を読みました。

 

その題名は……

 

『戦争広告代理店』

 

です。

 

『戦争広告代理店』の文庫本の画像1枚目

 

2002年発売のボスニア紛争におけるPR情報戦について書かれています。

 

元は著者の高木徹さんによる2000年放送のTV番組『民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕~』から始まっています。

 

この番組製作時の取材を元に執筆されたようです。

 

とても興味深い内容と共に、いかに「PR戦略」における情報操作が効果的であり、また恐ろしいものであるかを知りました。

 

国の善悪の決定は情報操作で決めることができ、国際世論を動かすことをもできる強大な力があります。

 

勉強になります。

 

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物語は……

 

社会主義者であるが資本主義に近い考え方と人柄でユーゴスラビアを治めたチトー大統領亡き後の……

 

混乱したバルカン半島の国々の独立に向けての紛争期の物語です。

 

この本では特に1992年頃から始まったセルビア共和国ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国との争いが焦点となります。

 

『戦争広告代理店』の文庫本の画像2枚目

 

主な登場人物

 

この物語の基本となるのは、4名の実在の人物です。

 

『戦争広告代理店』の文庫本の画像3枚目

 

右上からボスニア・ヘルツェゴビナ共和国の外務大臣であるハリス・シライジッチ(以下シライジッチ)と、アメリカの大手PR企業の凄腕PRマンであるジム・ハーフ国際政治局長(以下ハーフ)の2人によるボスニア・ヘルツェゴビナ組と……

 

その2人とは敵対関係にあるセルビア共和国スロボダン・ミロシェビッチ大統領(以下ミロシェビッチ)と、ユーゴスラビア連邦の首相を務めるミラン・パニッチ首相(以下パニッチ)の全4名です。

 

特にシライジッチと、ハーフの2名の関係が主軸となっています。

 

『戦争広告代理店』の文庫本の画像4枚目

もともとは大学教授で政治家としての経験もなくPRに関しては素人であったが、ハーフの元で多くを学び徐々にメディア慣れしていったシライジッチ外相

 

メディア受けの良い見た目(特に女性受け)と流暢な英語力によってその後の「PR戦略」における勝利をつかむこととなります。

 

『戦争広告代理店』の文庫本の画像5枚目

 

アメリカの大手PR企業の凄腕PRマンであるジム・ハーフ

 

徹底して完璧なプロの仕事ぶりでシライジッチだけでなくボスニア・ヘルツェゴビナ共和国の一国の運命をも変えた国際紛争のエキスパートです。

 

セルビア共和国側のミロシェビッチパニッチには、ハーフのようなプロのPRマンが側についていなかったから国際世論における「悪者」側になったと言えなくもないのでしょう。

 

優秀なプロがいるのと、いないのでは全く違うということがわかります。

 

では、簡単にですが印象に残った章についてまとめてみます。

 

序章「勝利の果実」

 

著者である高木徹さんが、TV番組『民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕~』の制作からこの本を執筆するに至るまでの経緯を紹介しています。

 

印象に残るのが

 


 

人々の血が流された戦いが「実」の戦いとすれば、ここで描かれる戦い(PRによる情報戦)は、「虚」の戦いである。(中略)「虚」の戦いが「実」の戦いの行方に大きな影響を与えることも事実だ。

 


 

第1章「国務省が与えたヒント」

 

ボスニア・ヘルツェゴビナのその後の運命を決定するかのような出来事の始まりが描かれています。

 

1ヵ月前に誕生したばかりのバルカン半島の小国ボスニア・ヘルツェゴビナ……

 

1年前から続いているバルカンでの民族紛争の戦火がこの新しい国にも広がりつつありました……。

 

そしてボスニア・ヘルツェゴビナに住むの300万人あまりの人たちの運命は元大学教授のある人物に掛かっていた……。

 

その人物とは、外務大臣になったばかりのまだまだ経験不足の素人政治家であるシライジッチである。

 

そのシライジッチが初めてニューヨークの「国連本部」に訪れた1992年4月9日からこの物語は始まります。

 

自国の危機的状況を聞き入れてくれるアメリカ人は見つからず、途方に暮れていたシライジッチがいかにしてPRのプロであるハーフに出会ったのか?……この最初の出来事が描かれています。

 

印象に残るのは……

 


 

PR企業のPRは「Public Relations」の略だ。きわめてアメリカ的な概念であるために、未だにこれといった日本語の訳語はない。

 


 

この本を通して語られることになる日本とアメリカでのPR企業の大きな差を表した言葉だと感じます。

 

日本のPR企業は未成熟で、企業間でのPR活動しか行っていませんが、アメリカではメディアや、政界、官界の重要人物に狙いを絞って直接働きかけるような幅広い分野を取り扱っています。

 

第2章~第5章

 

この4つの章では、ハーフのPR戦略としてのプロの手腕が伺えます。

 

いかにして彼がボスニア・ヘルツェゴビナ=被害者に対してセルビア共和国=加害者というイメージを国際世論に印象付けていったのか?

 

そしてズブの素人であったシライジッチをいかにしてメディア受けの良いアイコンへと仕立てていったのか?

 

また最初の失敗はどういった経緯で起きて、どのように改善していったのか?

 

この辺の話は、何もこういった紛争だけに限らず、全てのビジネス活動にも通じる重要な情報戦略であると感じます。

 

マーケティングの視点から見ても学ぶことの多い内容でした。

 

第6章「民族浄化」

 

ネットビジネスなどでも重要であるキーワード作りに共通する話です。

 

ボスニア紛争を語る上で外せない「民族浄化」というキャッチコピーをいかにしてハーフが思い付き、それを効果的に用いたのか?

 

また「民族浄化」という言葉は、英語では

 

「ethnic cleansing(エスニック・クレンジング)」

 

 

「ethnic purifying(エスニック・ピュリファイイング)」

 

のどちらでも表現できるのですが、ハーフ「ethnic cleansing(エスニック・クレンジング)」の方を選びました。

 

その理由とは……?

 

(そういえばX-Menでも「ピュリファイアーズ」という悪の組織がありますね。)

 

キャッチコピーの持つ恐ろしいまでの影響力が知れます。

 

第7章~第8章

 

この2つの章では、アメリカがどのようにしてボスニア・ヘルツェゴビナの側についたのか?

 

PR戦略によってボスニア・ヘルツェゴビナ=被害者に対してセルビア共和国=加害者という印象操作を行っていったのか?

 

が知れます。

 

人間というのは情報操作に流されやすいもので、本来ならじっくりと真偽を疑うべきことでも状況に流されて一方の側に味方をするものなんだな……と恐ろしくも感じます。

 

「いじめ」なんかもこういった情報操作が主な原因の場合がありますよね……。

 

例えば学校で人気の生徒が自分勝手な理由で、「こいつキモイ!」と言うと、周りの生徒たちもみんなして、そのキモイと言われた生徒を理由もなく「いじめ」だしてしまいます。

 

そこに「理由」なんてない場合が多くあります。

 

周りの人間は声のデカいものの言うなりになって流されているだけにすぎませんが、一方的に被害者を痛めつけているという罪の重さはその場の全員にあると思います。

 

もちろん自分は巻き込まれたくないからと遠くから傍観して助けなかった人も同罪です。

 

それも「自分さえ良ければいい」という考え方ですよね。

 

さて、この章の最後で著者の高木さんがある予言的な発言をされています。

 


 

日本の外交当局のPRのセンスはきわめて低いレベルにある。(中略)現在の硬直しきった役所の人事制度を根本から変革しないかぎり、二十一世紀の日本の国際的地位が下がる一方になることは、はっきり予見できる。

 


 

この本が出版されてから、15年が経ちます……。

 

上記の内容通りではない!……と果たして今の日本の状況を見て反論できますでしょうか……。

 

僕は未だに何も変わっておらず、高木さんの仰っている通りになっていると残念に感じています……。

 

第9章「逆襲」

 

PR戦で後れを取ったセルビア側のミロシェビッチ大統領ボスニア・ヘルツェゴビナに対抗すべく手を打ちます。

 

まずその手始めとしてユーゴスラビア連邦の首相にアメリカ出身のパニッチ首相を選ぶという驚きの人選をします。

 

しかしこのことが後々になって亀裂を生じることとなります……。
(この部分はなかなか面白いですのでぜひ実際に本で読んでみて下さい。)

 

第10章~第14章

終盤に向けてのこの5つの章は、怒涛の内容となっております!

 

幼い頃に僕もTVのニュース番組で知って意味も分からず印象に残っていた(けどなぜか心のどこかでずっと印象に残っていた……)1992年の第47回国連総会でのユーゴスラビア連邦の追放決議案が採択されるまでの経緯です。

 

当時は僕は小学生でしたが、この事件は覚えていました。

 

当然その時は意味わかってませんでしたが、今回こうやって本を通して読んでみて、「そういうことだったのか!」と納得し勉強になりました。

 

この辺りの章は映画でいう所の最後の30分って感じで面白いですのでぜひ実際に本で読んでみて下さい。

 

終章「決裂」

 

さて、PR戦でのボスニア・ヘルツェゴビナ=被害者セルビア共和国=加害者という印象操作戦にほぼ勝利したボスニア側シライジッチハーフが袂を分かつことになります。

 

その意外な原因が最後に書かれています。

 

まさか!?そんなことで?の理由で……です。

 

ぜひその意外な結末を実際に本で読んでみてください。

 

以上がこの本の読みどころでした。

 

この記事のお勧め商品
著者名
高木徹
本の題名
ドキュメント『戦争広告代理店』
『戦争広告代理店』の文庫本の画像6枚目

 


 

 

最後に解説より抜粋

 

本の最後に池内恵さんによる解説が載せられているのですが気になった部分を引用させて頂きます。

 


 

『戦争広告代理店』は、日本人が目をそむけてきた国際社会での過酷な現実を、冷静で率直な、無邪気なとすら評したくなるような爽快な文体で描いた。日本が否応なく国際的なPR合戦に巻き込まれ、判断と行動を迫られるに至ったとき、この本は幾たびも思い返されることになるだろう。

 


 

常に問題が起きてから後手に回る解決能力の低さ、またすぐにばれる嘘を平気でつく隠ぺい体質……日本の政治家やメディアのみならず企業、個人でもこういったことは多くあり、つくづく「情報」の取り扱いのヘタさを痛感します……。

 

学ぶことの多い本だと感じました。

 

ぜひ読んでみて下さい!

 

 

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